こういった疑問にお答えします。
本記事の内容
- 小学校高学年の子どもが不登校になる理由3選
- 小学校高学年の不登校に対する親の対応ポイント
- 【悲報】中学校に上がる前に親が覚悟しなければならない事実
私は現在、児童精神科で不登校のお子さんのカウンセリングや心理検査を行っている臨床心理士です。
小学生でかつ高学年のお子さんの場合、低学年のお子さんよりは気持ちをことばにできることもありますが、「なんで行けないのかな?」→「わかんない」なんてことは日常茶飯事。日々試行錯誤する毎日です。
実は統計的に見ても、小学校では高学年に上がるにつれて不登校の人数は増えることがわかっています。
小学生における不登校の人数(令和2年度)
- 小1:3,395
- 小2:5,335
- 小3:8,028
- 小4:11,108
- 小5:15,603
- 小6:19,881
※文部科学省「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」より
お子さんの「行きたくない」に不安や苛立ちを感じる親御さんもいるかもしれませんが、高学年であっても、不登校支援の本質はあまり変わりません。記事の途中途中で大切なこと、お話ししますんで、コーヒーでも飲みながら気軽に読んでみてください。
じゃあまず深呼吸~
「すーーーーーーはーーーーーー」
レッツ、心理教育っ!
小学校高学年の子どもが不登校になる理由3選
まず最初に、小学校高学年のお子さんならではの、学校が嫌になる理由3つをお伝えします。
- 小4ビハインド(9歳の壁)
- 「他者から見た自分」を意識できるようになり、恥や劣等感が高まりやすい
- 中学校生活への不安
理由1:小4ビハインド(9歳の壁)
小4ビハインド(9歳または10歳の壁とも言われる)とは、小4にかけて学習の内容が難しくなることで、お子さんがそれについていけなくなる現象のことです。
具体例
算数:足し算・引き算などの単純な計算から、図形や小数、分数など、抽象的な思考が必要になる。
>> 9歳の壁、小4の壁とは?乗り越えるための保護者のサポートや対処法を紹介(外部サイト)
勉強が苦手なお子さんが学習につまづくことで「自分は劣っている」という「気後れ」の心理が刺激され、学校が嫌になる場合があります。
また、勉強の他にも生徒同士のコミュニケーションがより複雑になっていくことも壁になることがあります。
「いじり」といった冗談めかした相手への言及も増えてきますが、ASD(自閉症スペクトラム)の特性があるお子さんなどは、言葉を額面通りに受け取ってしまい、空気が読めないと言われる場面も増えるようです。
「でも、勉強できなくても学校行けてるお子さんもいますよね?」と感じた方もいるかもしれません。それはその通りです。勉強ができる・できないは、不登校を決定づける要因ではありません。
次に説明する心理的な要因の方が、強く不登校に影響すると私は思います。
理由2:「他者から見た自分」を意識できるようになり、恥や劣等感が高まりやすい
小学校も高学年になると、多くのお子さんが「心の理論」を通過し、自分目線だけではなく、お友だちなどの他者から自分がどう見られているか、を意識できるようになります。
これがなぜ不登校のリスクになるか?
他の人に「この子こんなこともわからないの、恥ずかしい」と思われてるんじゃないか、という「気後れ」が強まるからです。
「他者より自分は劣っている」という「気後れ」の思考が生じると、自分が変な行動や態度をしていか気にするため、自分に対してより注意が向きやすくなります。
こういった自意識過剰モードが続くことで、心のエネルギーがガシガシ減って疲れていき、学校にいる余力が尽きてしまうのです。
「うちの子はそんな自意識過剰になるほど大人には見えないけど」とう親御さんもいるかもしれません。実際「気後れ」は思春期に最もよく見られる不登校心理であり、小学校高学年あたりではまだ「分離不安」などの小学生特有の心理と混ざっていることもあるとは思います。
とはいえ、「他者から見た自分」を意識できるようになると、恥や劣等感といったネガティブな自意識が刺激され、学校にいるのが嫌になるお子さんがいるのは確かです。
理由3:中学校生活への不安
小6の途中から不登校になる場合、中学校への不安が要因になっている場合があります。
本人はたぶん意識していないんですけど、これまで無理してきたことがたたって息切れになったことに加え、「中学になったらもっと大変になる」という漠然としたイメージによって、学校から足が遠退いていくことがあるようです。
以上3つの理由をお伝えしました。次の章では、小学生高学年の不登校対応で親御さんが抑えておけるとよいポイントをお伝えしていきます。
小学校高学年の不登校に対する親の対応ポイント
高学年のお子さんは低学年のお子さんよりはまだ気持ちを言語化できる可能性はありますし、低学年の間にできたお友だち関係が強力なリソースになることがあります。
というわけで、以下の3点を解説しますね。
- 基本はセオリー通り、3つの安心感を意識しましょう
- 低学年よりは言葉がわかるので、質問力で勝負!
- 学校に行けなくても、横のつながりを大切に
ポイント1:基本はセオリー通りに【3つの安心感】を意識しましょう
高学年だから特別どうこうする前に、不登校支援の基本を意識して関わるとよいと思います。
不登校対応で獲得したい3つの安心感
- 自分に対する安心感(自己肯定感、心のエネルギーをためる、脱自意識過剰)
- 親に対する安心感(親子の信頼関係を築くための関わり方、ほめ方(コンプリメント))
- 環境に対する安心感(段階的な支援、本人に合った再登校の場所探し)
1と2を得るための方法は親御さんの肯定的なことばがけにつきます。具体的には【脱毒親】不登校を解決する親の神対応とやみ対応【正しいほめ方・認め方】を参考にしてみてください。
より本質的な不登校支援の内容については以下のページを見てください。
ポイント2:低学年よりは言葉がわかるので、質問力で勝負!
高学年のお子さんは低学年のお子さんよりはまだ「気持ちの言語化」ができる年齢ですから、本人のニーズを聞き出すことで支援につなげていける可能性があります。
私がカウンセリングでよく使う質問例
- 何が学校に行くのを嫌にしている?
- 今の学校に行きたくない度を100点として、○○がなくなったら何点に下がる?
○○には「クラスの授業」など、嫌だと思われることを色々当てはめる。 - もしかして、友だちに何か言われた?(子どもは友だちへの罪悪感や言われた内容を知られることへの恥ずかしさから言語化に抵抗がある場合があるので、「わかっても何もしないよ」と前置きするのも良い)
- 「俺もX年生の時に~~って言われたことがあったんだけど」と返報性を利用する。
「質問して嫌なことがわかっても、どうにもできないこともありますよね?」と思われた方もいるかと思います。確かにすでに起きた出来事は消せないし、出来事への不安も簡単にはなくなりません。
ここでめちゃくちゃ大切なことを言います。
実際に環境調整するよりも、お子さんが本音を言って親御さんがそれを「そうだったんだね。大変だったね」と受け止めることこそが、今後の人生に影響するレベルで大切なことです。お子さんはそうやって「守られている」と感じ、親を信頼できるようになるからです。
信頼関係を築いたうえで本人のエネルギーがたまれば、「このままじゃいけない。親に迷惑かけちゃいけない」と思って自然と動き出すことが多いです。
余談ですが、不登校のお子さんが学校に復帰した後に、「行っていなかったときの自分に何か声をかけるとしたら何て言う?」と聞くと、ほぼ必ず「親を大切にしてほしい」と答えるんですよ、お母さん!
信頼関係はお子さんの安心感の源泉です。
ポイント3:学校に行けなくても、横のつながりを大切に
これも私が経験上思うことですが、不登校でも、放課後に遊ぶお友だちがいるお子さんは自己肯定感の面でも、社会性の面でもぼっちの子よりは伸びが良いです。
当たり前ですが、社会性は対人関係の中で育つので、他者との接点はあるに越したことはありません。
高学年のお子さんの場合、低学年のときにできたお友だち関係がすでにできている場合があります。TVゲームでもスポーツでも何をとおしてでも良いので、そのつながりを大切にしましょう。
お子さんが「学校に行ってないから遊べない」とか弱気なこと言ってきたら、「もしあなたの友達が不登校になったら同じように思う?」と聞いてあげてください。この時期は他者視点をとる質問はけっこう効きます。
だれも友だちがいないときは?
お子さんの自閉特性が強くて対人関係自体をどうでもいいと思っているか、社会性に乏しすぎて同年代の間で関係性を築くのが難しいかどっちかだと思います。
その場合はカウンセリングなどで本人に合わせてくれる大人と1対1から関係を始めるのが良いと思います。そこで慣れて自信がつくことで、適応指導教室に行ける場合もあります。
また、今は現実に友だちがいなくても、ネットゲームでどこかのだれかとつながっている場合もあります。危険なことに巻き込まれるリスクがなければ、ネット上のつながりでもないより全然ましです。普通に私よりたくさん友だちがいる不登校のお子さんいますからね。
結論、学校に行けなくても、横のつながりを大切にしてあげてください。
以上3点のポイントを紹介しました。最後に、中学校に進学するタイミングで再登校するかもと思っている親御さんに、希望を打ち砕くようでもうしわけないですが、現実をお伝えして終わりたいと思います。
【悲報】中学校に上がる前に親が覚悟しなければならない事実
私の経験上、「中学校に上がるタイミングで登校できるかも」という期待は、残念ながらほぼかないません。
なぜなら、中学校は小学校と同じメンバーであり、環境にリセットがかからないからです。勉強も難しくなりますし、他の学校からくる生徒もいますから、学校の不安要素は増えても、減ることはありません。
ただし、全員が全員引き続き不登校というわけでもありません。
部活で好きなことができることがモチベーションになる、友だちが行こうと誘ってくれたなど、好転する場合もありますので、まずは3つの安心を積み重ね、期待せずに準備をしておきましょう。
本記事のまとめです
①小学校高学年の子どもが不登校になる理由3選
- 小4ビハインド(9歳の壁)
- 「他者から見た自分」を意識できるようになり、恥や劣等感が高まりやすい
- 中学校生活への不安
②小学校高学年の不登校に対する親の対応ポイント
- 基本はセオリー通り、3つの安心感を意識しましょう
- 低学年よりは言葉がわかるので、質問力で勝負!
- 学校に行けなくても、横のつながりを大切に
③【悲報】中学校に上がる前に親が覚悟しなければならない事実
中学校は小学校と同じメンバーであり、環境にリセットがかからない等の理由から、中学校進学のタイミングで不登校が解決することはほぼありません。
今回は小学生高学年の不登校の特徴や対応方法について書いてみました。学年や年齢関係なく、いっちばん大切なことは【重要】不登校支援の結論をお話しします【後悔しない基本の知識】に書いていますので参考にしてみてください。
他にも不登校の記事がありますので、気軽に読んでみてください。