不登校

【あと少しなのに!】高校生の不登校対応を解説【親の鉄則あります】

不登校になった高校生の子どもに親としてどう対応したら良いのだろう…。高校卒業まであと少しなのに、今辞めてしまったら将来仕事して食べていけるのか心配…。 通信制の高校もあるみたいだけど、転校した方がいいのか今の高校で再登校を目指した方がいいのか、どうしたらいいの…。

こういった疑問にお答えします。

 

本記事の内容

  1. 高校生の不登校にできる親御さんの対応【恨まれないために】
  2. 高校生が不登校になる根本的な理由
  3. 不登校で通信制高校への転校するのはありか?
  4. もし万が一、高校を卒業できなかったら?【その後の選択肢とは】

 

私は児童精神科や学校で不登校のお子さん・親御さんのカウンセリングをしていた臨床心理士です。

高校生になって不登校になった場合「ここまで来たんだからあと少し頑張って欲しい」「親の接し方がいけなかったの?」と感じてしまう方が多いと感じます。

この記事を読むだけで何とかなるかはわかりませんが参考になればと思います。

 

高校生の不登校にできる親御さんの対応【恨まれないために】

以下の4点を解説します。

1つ1つは短く書いていますので時間はかかりません。

  1. 登校渋りなら「環境調整+計画的に休む」で卒業を目指す
  2. 不登校であることを認め、安心して休ませる
  3. 第三者に相談する、カウンセリングを受けてみる
  4. 留年が迫ってきたら本人の気持ちを聞いて意思決定する

どうして行けなくなってしまうのか、その理由を先に知ってから対応方法を知りたい方は次の章を先に読んでみてください。

 

対応1:登校渋りなら「環境調整+計画的に休む」で卒業を目指す

完全不登校ではなく登校渋りの段階であれば、まずは「環境調整」をしましょう。

なぜなら、環境調整で登校が継続できるのであれば、それにこしたことはないからです。

 

具体例

  • 部活がしんどいなら辞めるか休部する
  • 特定の教科の勉強が厳しいなら教員に相談してフォローしてもらう
  • いじめやいじり等の友人関係でトラブルがあるなら教員が介入する など

本人に聞いたうえで、学校に行きたくない明確な理由が語られるのであればできる範囲でフォローしてあげてください。

一方で、高校生にもなると義務教育でないため、どうしても本人の主体性にゆだねられる割合が大きくなり、教員の先生の力ではどうにもならないことも増えます。

また、理由はわからないけどお腹痛いとか、起きられないとか、そういったケースも少なくありません。

その場合「毎日登校する」という目標は一旦捨てて「卒業のために休める日にちを計算し、ぎりぎりの出席日数で卒業する」という選択肢もあります。

卒業までの出席日数はシビアにカウントする必要があるため、教員の先生と密にコミュニケーションを取りつつ「休めるところは積極的に休もう」というスタンスで何とか卒業を目指すわけです。

しかし、どうしても行けずに完全不登校(1ヵ月くらいが目安)になった場合、無理をして行くことにメリットはないので、次の対応に進んだ方がよいでしょう。

 

対応2:不登校であることを認め、安心して休ませる

結論、休み休み学校に行くのが難しければ、すぱっと休ませた方がよいです。

なぜなら、行かせようとする周りの対処行動自体がお子さんの元気を奪い、不登校を維持する悪循環になるからです。

 

そして、ただ休ませるのではなく、安心して休ませることが大切です

このタイミングでは登校刺激はストップですし、結果として登校刺激と同じ意味になる「規則正しい生活リズム」や「日中のゲームやスマホ禁止」などのルールも課さなくてよいと思います。

「休ませちゃっていいの!?」「不登校になったら取返しつかなくない?」と思われた方もいるかもしれません。

私の支援経験から言いますとこの休む期間こそが大切です。

なぜなら、お子さん自身が「これからどう生きるか」を考え、自分で人生を決めるきっかけになるからです。

 

対応3:第三者に相談する、カウンセリングを受けてみる

休んでいる間にカウンセリングを受けることで、再登校に繋がったり本人の内面が成長したりする場合があります。

なぜなら、高校生は小中学校生徒より理解力や抽象的な思考力が高く、会話によって思考、気持ち、価値観などが変化する可能性があるからです。

具体例としてよいインタビュー記事がありましたのでリンク貼っておきます。

>>「この先、どうなっていくんだろう?」高1で不登校になった僕はカウンセラーに会いに行った(外部サイト)

本人のカウンセリングに意味はないという方もいますがカウンセリングをしていた身として感じるのは意味はあります、ということです。

 

対応4:留年が迫ってきたら本人の気持ちを聞いて意思決定する

高校生の場合、単位が取れないと退学というリミットがある点が小中学校と大きく異なる点です。

留年が迫ってくると先生からそのことが伝えられ、本人は否応なしに行くか、留年するか、辞めるか、通信制高校などの別の学校に転校するか、選択を迫られます。

 

ここで大切なのは判断材料は提供しつつ本人に判断をゆだねることです。

なぜなら、親の主導で決めると、後々悪化したときに「お前(親)があの時ああ言ったからこうなったんだ!」と言われる可能性があるからです。意思決定の主体は本人です。

ただし、もし再登校・転校・退学したらどんなことが起きるかや、メリット・デメリットという客観的な情報を親が伝える必要はあるでしょう。

本人が意思決定するにも材料がなければ難しく、それをお子さんが自分で集めることはかなり難しいからです。

留年が迫ってきたら適切な情報を伝えて相談にはのりつつ、本人の気持ちを尊重して意思決定をするのがよいと思っています。

ここまで親御さんがとれるとよい対応について解説しました。

次の章では高校生のお子さんが不登校になる理由、それも根本的な理由を解説していきます。

 

高校生が不登校になる根本的な理由

私の考える、高校生のお子さんが不登校になる理由は以下です。

「本人の能力(キャパ)」と「環境が求める能力」のバランスが取れていないこと、によって生じる精神的な負担から自分を守るため。

なぜこう考えるかという理由は以下です。

 

  • 小学生のように「分離不安」ではさすがに説明できない。
  • 小学校・中学校に行けていたのであれば、一定の「学力」や「社会性」はあるはず。
  • それでも休んでしまうのであれば、高校に進学したことで、環境が求めるレベルが本人の能力を上回ってしまったと考えるのが妥当。
  • 積み重なってきた負荷に対する本人の頑張りに限界がきたともいえる。

 

具体的に本人の能力(キャパ)で関係してくるのは発達の2側面です。

これは滝川一廣先生の著書である「子どものための精神医学」から引用していきます。

 

本人の能力1:認識の発達
世の中で共有されている「意味」や「約束」といった概念理解の発達であり、ようするに「知的な発達」のことです。主に学力に影響します。

知能検査をとることで、「軽度の知的障害」や「発達障害の特性」が判明することがあります。

小学校や中学校では先生が寛容だったり、勉強のサポートが充実していることで見えにくかった、ないしは問題にならなかった可能性があります。

 

本人の能力2:関係性の力
まわりの人たちと対人関係的・社会的にかかわっていく力の発達であり、要するに「社会性の発達」のことです。

社会性でわかりづらければ、厳密には違いますが、コミュニケーション能力だと思ってもよいと思います。

コミュニケーションが独特な方は小中学校では周りのお子さんが寛容で個性として認めてくれていたけど高校に入ったらKYと呼ばれて疎外されるようになった、というケースがこちらに当てはまります。

認識の発達、関係の発達のどちらにせよ、本人の能力(キャパ)以上のものを求められて精神的に限界がきたことで、自分を守るために学校を休んだと考えるのが妥当だと私は思います。

これは、大人の方が会社で自分の能力以上の仕事を押し付けらたり、ハラスメントなどの対人的な傷つきで適応障害になるのと似ています。

 

内因性の病気が疑われるときは精神科に受診しましょう

もう1つだけ補足させてください。それはお子さんが内因性の精神疾患が疑われる場合です。

内因性の疾患というのは「生まれ持った病気へのなりやすさ」が主な原因となる疾患のことです。糖尿病とかも遺伝がありますが、それと同じイメージです。

高校生というのは「統合失調症」という病気の好発年齢(症状が現れやすい年齢)で知られています。

元々のなりやすさのうえにストレスがかかることで病気として発症するケースがありますので、疑われるときは迷わず精神科を受診してください。

精神科受診を拒否する場合は入り口は内科でも良いですし、「眠れないことは不登校に関わらずつらいから病院行ってみよう」などと統合失調症の症状には言及せずに促すとうまくいくことが多いです。

 

統合失調症の症状の一例

陽性症状(ないものが「ある」状態になる)

  • 妄想:「テレビで自分のことが話題になっている」「ずっと監視されている」など、実際にはないことを強く確信する。
  • 幻覚:周りに誰もいないのに命令する声や悪口が聞こえる(幻聴が多い)
  • 思考障害:思考が混乱し、考え方に一貫性がなくなる。会話に脈絡がなくなり、何を話しているのかわからなくなることもある。

 

陰性症状(あるものが「ない」状態になる)

  • 感情の平板化(感情鈍麻):喜怒哀楽の表現が乏しくなり、他者の感情表現に共感することも少なくなる。
  • 思考の貧困:会話で比喩などの抽象的な言い回しが使えなかったり、理解できなかったりする。
  • 意欲の欠如:自発的に何かを行おうとする意欲がなくなってしまう。また、いったん始めた行動を続けるのが難しくなる。
  • 自閉(社会的引きこもり):自分の世界に閉じこもり、他者とのコミュニケーションをとらなくなる。

※大塚製薬のHPより引用(https://www.smilenavigator.jp/tougou/)

では次に、高校生の不登校対応で選択肢となる「通信制高校」について私の意見をお伝えします。

 

不登校で通信制高校への転校するのはありか?

高校生の不登校が通信制に転校するのは、私は「あり」だと思います。

なぜなら、上記しましたが、高校生の不登校は「自分の能力(キャパ)」と「環境が求める能力」のバランスがとれなくなった結果生じるケースが多く、環境が求めるレベルを本人に合わせるのに通信制高校への転校は効果的に働くことが多いからです。

 

例えば、高校入試を頑張ってレベルの高い高校に入ったのは良かったけど、入学してからの燃え尽きや学力レベルの高さについて行けないとか、高校が思ったよりやんちゃなお子さんが多く、対人関係が怖い等の場合、(通信に限らず)転校することでお子さんの不安を軽くできます。

親御さんの中には「通信制高校卒業は将来に響くのでは?」「本人の挫折感を強めてしまうのでは?」「全日制を卒業しないのは単純にもったいない気がする」と思われた方もいると思います。

確かに親御さんのそういう考えは一理ありますし、もし仮に私の子どもが高校生で不登校になったらそう感じると思います。

ですが私のカウンセラーとしての経験上、こういった親御さんの考えこそが、お子さんのエネルギー回復を妨げることが多いです。

お子さんが残りのエネルギーを振り絞って登校し、大学や専門学校に進学してから不登校になる方が将来に響くのではないでしょうか。

 

お子さんの意見をよく聞いて相談の上で決定する必要はありますが、高校生の不登校が通信制に転校するのは、私は「あり」だと思います。

試しにどんな学校があるか調べたい方は大手サイトを参考にしてみてください。
>>ズバット通信制高校比較(外部サイト)

 

もし万が一、高校を卒業できなかったら?【その後の選択肢とは】

以前別の記事で書いた内容なのですが、高校を卒業できなくても日本は福祉が充実しているため、生きていく方法はいくらでもあります。

以下が一例です。

  • 正社員で仕事をする
  • アルバイトでも仕事をする
  • 内職でも仕事はできる
  • どうしても働くのはまだ無理という場合は、適応障害の診断をもらって就労移行支援を利用する
  • 23歳の時点で専門学校や大学に行っててもその後に希望がもてるからOK
  • 障害年金や生活保護を受給することもできる

こちらの記事も参考にしてみてください。

 

本記事のまとめ

ここまで長文を読んでいただきありがとうございました。おさらいです。

①高校生の不登校にできる親御さんの対応【恨まれないために】

  1. 登校渋りなら「環境調整+計画的に休む」で卒業を目指す
  2. 不登校であることを認め、安心して休ませる
  3. 第三者に相談する、カウンセリングを受けてみる
  4. 留年が迫ってきたら本人の気持ちを聞いて意思決定する

②高校生が不登校になる根本的な理由

「本人の能力(キャパ)」と「環境が求める能力」のバランスが取れていないこと、によって生じる精神的な負担から自分を守るため。

③不登校で通信制高校への転校するのはありか?

お子さんの意見をよく聞いて相談の上で決定する必要はありますが、高校生の不登校が通信制に転校するのは、私は「あり」だと思います。

④もし万が一高校を卒業できなかったら?【その後の選択肢とは】

高校を卒業できなくても日本は福祉が充実しているため、生きていく方法はいくらでもあります。

本記事内のリンク

通信制高校の情報(資料)を取っておきたい場合は以下のサイトがお勧めです。理由は掲載されている高校の数が多いのと、0円かつ1分で資料請求できるからです。


>>ズバット通信制高校比較(外部サイト)

 

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  • この記事を書いた人

モトセ

臨床心理士です。最近は不登校支援に力を入れています。お気に入りやtwitterフォローお待ちしています。 noteでは不登校のお子さんに対する具体的な関り方をプログラム形式で書いています➝noteはこちら

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