子どもの問題行動

【脱死ね・殺す】暴言を吐く子どもの心理と親の対応5ステップ

最近子どもが暴言を吐くようになってしまったけど、なんでなんだろう…。

「死ね」「殺す」は絶対に言ってほしくないけど、私が怒りちらしても意味ないし…。

暴言を吐くときの子どもの心理って何なの? 

どうやって対応するのが正しいの…。

こういった疑問にお答えします。

 

本記事の内容

  1. 「死ね」「殺す」という暴言を吐く子どもの心理5つ
  2. 子どもが暴言を吐いたときの親の絶妙な対応5ステップ
  3. あなたは自信あり? 効果的な「ほめ方」のコツ

私は児童精神科でカウンセリングや心理検査を行っていた臨床心理士です。

お子さんが「死ね」や「殺す」という物騒な言葉を使っていると、親御さんとしては「ドキッ」としますよね。

ましてやそれが家ではなく外でだったらなおさら。

この記事を読むことで、暴言を吐く子どもの気持ち(心理)を推測でき、自信をもって落ち着いて対応するコツがわかります。

 

「死ね」「殺す」という暴言を吐く子どもの心理5つ

小学生か中学生かによっても変わると思いますが、概ね以下のどれかに当てはまると思います(心理よりも対応方法が知りたい方は次の章から読んでみてください)。

  1. 誰かがやっていたことを真似している(友だち、親、テレビ・漫画・ゲームなど)
  2. 新しく知った言葉をつかってみたい
  3. 自分を大きく見せようとしている
  4. 親への反抗のツールとしてつかっている
  5. 怒りの表現の1つとして使っている

1つずつ解説していきます。1つ1つは長くないのですぐに読めます。

 

心理1:誰かが言っていたことを真似している(友だち、親、テレビ・漫画・ゲームなど)

お子さんは「死ね」「殺す」といった言葉を知らなければ使うことはできません。お子さんはどこかで見聞きしたのです。

あんなにブレイクした鬼滅の刃の作中にも、こういった物騒なワードや描写はめちゃくちゃでてきます。

もはやこういった言葉の学習は避けて通れないので、使い方(リテラシー)を高めるしかないと思います。

親御さんも自分が使っていてお子さんが真似しているケースもありますので、注意してみてください。

心理2:新しく知った言葉をつかってみたい

新しく知った言葉を使ってみたくなるのが子どもの心理です。面白がって、好奇心で使っているとも言えます。

この時点ではまだどういう時に使ってよくて、どういう時に使っていけないかを理解できていません。

例えば「ドラゴンボールごっこ」しているときに「死ねー」とベジータの真似をするのはまぁ許容できますが、友だちと喧嘩した時に「死ね」と言うのは相手を傷つけるため、許さない方がよいでしょう。

逆に言えば、そうやって使っていくことで、「この場面ではこの言葉は言ってはいけないんだな」という言葉の使い方を学んでいくとも言えます。

 

心理3:自分を大きく見せようとしている

自分を大きく見せて相手より優位に立とうとするのは本能的な行動です。

チンピラの恫喝と同じような感じですし、「死ね」「殺す」に限らずちょっと難しそうな言葉をつかうことで自分を大きく見せることはあります。

雰囲気としては「中2病」に近いかもしれません。

 

心理4:親への反抗のツールとしてつかっている

中学生や高校生など、思春期のお子さんであれば「親に反抗する意思表示」として「死ね」「殺す」といった暴言を吐く場合があります。

この場合、本当に死んでほしい、殺したいわけではもちろんありません。

不満の表現方法の1つとして多くは衝動的に口にしています。

言った方は罪悪感を感じている場合がほとんどですから、悪循環を防ぐためにも、親側が感情的に叱る必要はありません。ドン!と構えましょう。

 

心理5:怒りの表現の1つとして使っている

本人の中で怒りの表現方法の1つになっているかもしれません。

その場合、背景にあるのは「悲しみ」や「悔しさ」です。

理解されないこと、わかってもらえないこと、自分の思い通りにならないことなど、様々な悲しみがあると捉えてみましょう。

 

子どもが暴言を吐いたときの親の絶妙な対応5ステップ

以下の5ステップを紹介いたします。

  • ステップ1:悪循環の把握と「叱る三原則」を思い出す
  • ステップ2:言葉の内容だけに反応せず、状況を踏まえてルールを線引きする
  • ステップ3:イエローカードとレッドカードを使い分ける
  • ステップ4:「叱る」を実践
  • ステップ5:やっていないときに「いいね」を忘れない

1つずつ解説していきます。こちらもそれぞれは短いのですぐに読めます。

 

ステップ1:悪循環の把握と「叱る三原則」を思い出す

結論、多くの親御さんは以下のような循環にはまっています。

親御さんはお子さんのためを思って絶対にそんな汚い暴言を吐いて欲しくないと思っているからこそ、感情的に怒るのではないでしょうか。

もしくは、他者から「親はどんな教育をしているんだ」と思われたくないという不安から感情的に怒ってしまうのかもしれません。

「子どもに言い続ければ伝わる」と思われた親御さんもいるかもしれません。

そうかもしれませんが、言い続けるのはシンプルに疲れませんか?

もう少し楽に状況が変わるなら、その方法を試してみたいと思いませんか?

まずは、自分の対処行動が悪循環を作っていることを客観的に把握することが大切です。上記の図のように紙に書いてみるとすぐできます。

 

そして、野口芳宏先生の唱える「叱る三原則」を暗記しておきましょう。

叱る三原則とは

1.命に関わる危ないことをしたとき
2.人の不幸の上に、自分の幸せを築こうとしたとき
3.3回注意されても、直そうとしないとき

引用元:『子どもの心をつかむ!指導技術 「ほめる」ポイント「叱る」ルール「認める」心得』

次のステップでも使うので覚えておいてください!

 

ステップ2:内容だけに反応せず、状況を踏まえてルールを線引きする

「死ね」「殺す」といった言葉の内容だけで叱るのではなく、どういう状況で「死ね」「殺す」という言葉を使ったらいけないのだよと内容と状況の両方を踏まえて、ルールを線引きして伝えてる必要があります。

なぜなら、叱る三原則に当てはまらないときに叱っていては、口うるさい過干渉な親になってしまい、お子さんの無用な反発を招いてしまうからです。

具体例:まぁ許容(セーフゾーン)

  • 遊びの中で使っている(鬼滅の刃ごっこなど)
  • 家の中でゲームに向かって独り言のように言っている

具体例:ダメ絶対(アウトゾーン)

  • 家の外で暴言を吐いたとき
  • 遊びではないのに人に向かって暴言を吐いたとき(人の不幸(傷つき)の上に、自分の幸せ(すっきり感)を築こうとしたとき)

事前にお子さんにルールを伝えておけるとよいでしょう。

 

ステップ3:イエローカードとレッドカードを使い分ける

叱る三原則の③に、「3回注意されても、直そうとしないときは叱る」とありますが、3回の注意がイエローカードであり、叱ることがレッドカードです。

具体的な注意の仕方としては、「ルール違反だよね」と目を見てさらっと伝えればよいかと思います。

レッドカードの場合は、次の「正しい叱り方」を実践しましょう。

 

ステップ4:「叱る」を実践

お母さんやお父さんのキャラ(おっとり優しい、いつも割とガミガミ言っている等)もあるので正しい間違っているはないかもしれませんが、一般的に正しい(と言われている)やり方を紹介します。

  1. 行動の指摘:例(無表情で目を見て)「ダメって言ってたよね?」
  2. 言い分の受容:例「どうしてそうした?って聞かれても答えられないかもしれないって、私もわかってて聞くんだけど、何を考えてそう言ったのかな?」
  3. 適切な行動を教える:「次はこうしようね」
  4. 終戦宣言:ニコッと笑って「さ!ごはん食べよ」

①行動の指摘

当たり前ですが、まずは行動を指摘します。

ここで親が感情をあらわにする必要はないですが、普段から冷静な親御さんであれば、あえて感情的になることで、「ただごとではない」雰囲気を出すこともできます。

セオリーとしては、何考えているかわからないのが一番怖いので、無表情が良いかと思います。

②言い分の受容

受容を挟む理由は、③の適切な行動を教えるが入りやすくするためです。

子ども目線として、「こっちの言い分も聞いてくれないのに指導されてもやりたくないわ!」となるかもしれないですよね。

なので、お子さんがどんな言い分を答えても、「そっか」「そう考えていたのね」くらいで特段反応しなくていいと思います。大抵は言い訳なので。

一旦子どもの意見を聞いて、こちらの言うことを理解してもらう土台を作ることが目的です。

③適切な行動を教える

お子さんの聞く準備をととのえたら、「次同じ状況になったときに、具体的に何をすればいいか」を伝えます。

なぜなら、そもそも叱る理由は「子どもを伸ばすため」ですよね。ここで言う伸ばすとは、「具体的にどうすれば良いかを理由とともに理解できるようになること」です。

例えば、理由を諭すときは、「殺す」って言われたら、言われた相手は恐怖を感じるかもしれないよね、などです。そして、今度同じ状況になったらどうするかを伝えましょう。

例えば、お子さんがイライラした結果「もう死んじゃえ!」などと言ったのであれば、イライラした時の対処方法を一緒に考える(アンガーマネジメント)ことが適切な行動につながるかもしれません。
気持ちを抑えるスキルとしては以下のツイートを参考にしてみてください。

シンプルに「死ねじゃなくて、むかつく!と言おうね」「本当に言いたいことがあるならそれを言葉にしてね」でも良いかもしれません。

非言語メッセージもとても大切です。つまり、いつ、どんな場所で、親がどういう態度で伝えるかです。適当にそっぽを向いて、さらっと言ってしまっては、「聞かなくてもいい」というメッセージになってしまいます。

④終戦宣言

叱った後は「さ!ご飯食べよ」などと、できればニコッと笑顔で伝えて「叱るのはここまでです」というメッセージを伝えましょう。

叱られるとお子さんは高い緊張状態になります。そのままの精神状態だと、落ち着いて「あーやっぱいけなかったなぁ」と振り返ることはできないからです。

「次はできるよ」「がんばるべ」などといった励ましも、こういった下地作りがあってこそ入ります。

 

ステップ5:やっていないときに「いいね」を忘れない

めちゃくちゃ大切なことを言います。

本記事にたどり着いた方は、お子さんが「死ね」「殺す」という時の心理や対応を探していた方が多いと思いますが、断言します、事後対応より、事前対応で先手を取る方が大切です

具体的には、イライラしても「死ね」「殺す」などの暴言を吐かなかったとき、もしくは、ただ叫ぶだけで済んだときなど「ちょっとマシだった時」に、「言わなかったね」とほめることです。

このやっていないときに「いいね」という「ほめ」があることで、お子さんは「まぁ頑張るかー」と思えるようになります。

「子どもの心をつかむ!指導技術」の著者である南惠介先生も以下のように言っています。

「怒る」は、怒ることそのものがゴール
「叱る」は、後で「ほめること」がゴール

引用元:『子どもの心をつかむ!指導技術 「ほめる」ポイント「叱る」ルール「認める」心得』

めちゃくちゃいい言葉ですよね。私が言ったことにしたい(笑)

後でほめるがないと、叱る意味はないです。これはペアレントトレーニングの「無視」も同じです。

無視だけしてもうまくいかないです。それより前に「ましなときに、ほめる(肯定的な注目)」があることで、お子さんは頑張ろう!(もしくは「まぁ聞いてやるか」)と思えるのです。

 

本記事のまとめ

①「死ね」「殺す」という暴言を吐く子どもの心理5つ

  1. 誰かがやっていたことを真似している(友だち、親、テレビ・漫画・ゲーム)
  2. 新しく知った言葉をつかってみたい
  3. 自分を大きく見せようとしている
  4. 親への反抗のツールとしてつかっている
  5. 怒りの表現の1つとして使っている


②子どもが暴言を吐いたときの親の絶妙な対応方法

  • ステップ1:悪循環の把握と「叱る三原則」を思い出す
  • ステップ2:内容だけに反応せず、状況を踏まえてルールを線引きする
  • ステップ3:イエローカードとレッドカードを使い分ける
  • ステップ4:「叱る」を実践
  • ステップ5:やっていないときに「いいね」を忘れない

 

この記事で参考にした南惠介先生の書籍は以下です。

叱ることを劇薬と捉えて使用に慎重になっているところにめちゃくちゃ誠実さを感じます。

ここまで読んでいただきありがとうございました。お気に入り登録やtwitterフォローもお待ちしています。

  • この記事を書いた人

モトセ

臨床心理士です。最近は不登校支援に力を入れています。お気に入りやtwitterフォローお待ちしています。 noteでは不登校のお子さんに対する具体的な関り方をプログラム形式で書いています➝noteはこちら

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