子どもの問題行動

【事例でわかる】子どもの盗み癖の原因と治し方【心理学的に解説】

子どもの盗み癖の原因や治し方がわからない…。何回か親の財布からお金をとったので叱ったけど、今後万引きに発展してしまったらどうしよう…。なぜ盗むのか子どもの気持ちもわからないし、病院に行けば治るものなの?

こういった疑問にお答えします。

本記事の内容

  1. 子どもの盗み癖の原因と治し方を心理学的に解説
  2. 子どもの盗み癖は病院に行けば治るのか?
  3. 解決事例からわかる、盗み癖が治った親子の共通点
  4. 盗み癖に関する本の紹介【鉄板本あります】

 

記事の信頼性
私は児童精神科でお子さんのカウンセリングや心理検査を行っていた臨床心理士・公認心理師です。

盗み癖のある小学生や中学生の検査やカウンセリングも担当したことがあります。

お子さんが家でお金をとる、親御さんからするとそれだけでも衝撃ですよね。

特にこれまで良い子で何も問題がなければなおさらです。

友だちのものを盗んだり万引きがあったりしたら保護者として謝罪する必要があり、親御さんにも心理的なダメージは大きい。

叱ったとしても可能性を0にすることはできず、「またやらないかしら…」と不安が続く方も多いかと思います。

この記事を読むことで、盗み癖がある子どもの気持ちを推測でき、落ち着いて今後のことを考えることができるようになります。

 

子どもの盗み癖の原因と治し方を心理学的に解説

子どもの盗み癖の原因と治し方

この記事では「学習心理学」を参考に、盗み癖について解説していきます。

 

子どもの盗み癖の原因・心理(なぜ盗むのか)

子どもの盗み癖の原因を始めて盗む「初発」とその後の「癖になる」に分けて原因を考えてみます。

  1. 初発:何らかの理由で盗んだ
  2. 癖になる:盗んだ結果、快感情が高まり、不快感が低下した(盗むという行動が強化された)

 

初発の盗みが生じる原因・心理(と思われるもの)

  • 他の子が羨ましかった
  • 先輩や友だちに「盗ってこい」と脅されてやった
  • きょうだいばかり可愛がられて悲しかった(自分を見て欲しかった)
  • 欲しい気持ちを抑えられなかった
  • バレても大したことはないと思っていた
  • 盗むことのスリルが快感だった
  • 真面目過ぎる自分のイメージを変えたかった
  • 塾や習い事が厳しく精神的に追い詰められていたけど言葉では言えず、悪いことをすれば自分の辛さに気づいてもらえると思った
  • 親が自分のために謝っているところを見たかった
  • 親を困らせたかった

上記を要約すると、お子さんから見て「これくらいのこと」と盗みの罪を甘く認識している場合、かつあげなど外的な要因による場合、心理的な満たされなさがある場合、無理をしている良い子が親や教師に本当の自分に気づいて欲しい場合、親の気を引きたい場合など様々あると言えます。

いずれの場合にせよ、盗むことで、脳内で快感情を高め、不快感を低下させる現象が起こります。

2回目以降は初発の理由とは別に、盗みで得られた快感を再び得る(不快感を減らす)こと自体が目的になり、癖となり続いていくと捉えることができます。

 

窃盗は子どものSOS信号の場合もあります。

親から見ると「わかりづらいから言葉にしてくれよ」と思うかもしれませんが、子どもにとってはSOSを出したことがほんの少しの安心感(快感情)となり、癖になることもあるのです。

ではどうやったらお子さんの盗み癖を止めることができるのでしょうか。次に具体的な対応方法を紹介します。

 

子どもの盗み癖の治し方

結論、盗みが起きない環境調整と事後対応の2つが重要です。

 

盗みが起きない環境調整

事前対応として「物理的に盗めない環境」や「盗もうと思う必要がない環境」を作ることが大切です。

具体例

  • 親の財布から金を盗む場合、財布を子どもが手に取れる場所に置かない
  • 「かつあげ」が原因であれば教師や警察が介入して自分の子どもを守り、徹底的に味方になる
  • 真面目で勉強を頑張っているけど本当は苦しい場合は「十分頑張ったから、ちょっと休憩しよう」などと伝える
  • 子どもとの時間が取れていないと感じるのであれば、一緒に出かけたり、ゲームしたり、スキンシップをとったり、親子で共行動をする時間をとる
  • 親が子どもに怒りまくっていると感じるのであれば、ペアレントトレーニングを学び怒ることが少ない育児を目指す(特にADHD児の場合に有効)

環境づくりは親子関係を見直し、お子さんの生活全般のストレスを軽減すること言うこともできます。

そういった意味でも、事前対応はとても重要です。

 

子どもの盗みが起きた後の事後対応

様々な解決事例を見てわかる結論は以下です。

窃盗は「本当に自分の人生に影響がある」「この人のためには止めないといけない」とお子さん自身が実感できたときに止められるケースが多い。

 

なぜなら、親や大人がいくら叱ったり諭しても、お子さん本人が「止めないといけない」と感じられない限り、行動変容につながらないからです。

 

事後対応の具体例

  • 普段温厚な親がマジギレして叱る
  • 普段怒りまくっている親が「盗みをさせてしまってごめんね」と謝り、親子関係を見直す
  • 罰としてペナルティを設ける(旅行の中止など)
  • 子どもの負担になっている家庭内のルールを見直す
  • 警察に通報し、叱ってもらう(事前に親と警察が打ち合わせをしたうえで)
  • 病院に連れていく。もう1回やったら入院などと言う

家庭の状況や親子関係、お子さんの年齢や理解力によっても異なりますので、保護者の方だけで悩まず、教員や教育支援センターの相談員など第3者の力を借りることも大切です。

効果的な叱り方や叱る基準は以下の記事で書いております。

子どもの盗み癖は病院に行けば治るのか?

お子さんが以後絶対に盗まないことは証明できないので確約はできませんが、治まったケースは何度も見ました。

理由は以下の3点です。

  1. お子さんの能力的な特性を把握でき、適切な配慮につながる
  2. お子さんの気持ちを理解でき、親子のコミュニケーションが改善する
  3. 「病院につれてこられたこと」が子どもにとって大きな意味になる

 

①お子さんの能力的な特性を把握でき、配慮につながる

発達障害の特性や軽度知的障害がわかることで家庭と学校で配慮方法がわかり、本人の生活全般のストレスを減らすことができるかもしれません。

「これまで普通の子として接してきたけど、それだと無理させていたことがわかった」と言われる保護者の方もいらっしゃいます。

お子さんが「ママが最近怒らなくなった。少し気持ち悪いけど嬉しい」などと言うケースもあります。

 

②お子さんの気持ちを理解でき、親子のコミュニケーションが改善する

上記した発達障害の特性や知的な低さがあることで、失敗体験が続き、自己肯定感が下がっていたケースもありますが、「発達的には問題がないのに盗み癖がある場合もあるんじゃないの」という意見もあると思います。

それは一理ありまして、発達特性で説明できない場合も多々あります。

児童精神科の病院では知能検査の他にも性格検査や本人とのカウンセリングを通じ、本人がこれまで語ってこれなかった気持ちがわかる場合がありますし、それが今後のお子さんへの関わり方のヒントになることも多いですよ。

 

③「病院につれてこられたこと」が子どもにとって大きな意味になる

これはつまり、盗むことで、病院につれてこられて色々検査をさせられ、何なら薬を飲まされるかもしれない、という不快感(めんどくささや危機感)を与えることで、盗みという行動を抑える(消去する)効果があるということです。

病院で何を言われたか、そんなことはどうでもよくて、「病院に連れてこられる」という体験自体を避けるために、盗み癖が治まる可能性がある、そんな効果です。

こうやって言葉で説明されてもいまいちイメージがわかないんだよね…

という親御さんもいると思われますので、ネットを巡回して解決事例をもってきました。

ネット上の意見、母親のみの意見、私が探しただけ、などの理由から片寄りがありますが、解決像をイメージすることは問題解決にとても重要なので、一度読んでみてください。

解決事例からわかる、盗み癖が治った親子の共通点

 

ケース①:友だちの消しゴムや鉛筆を盗んだケース(本人体験談)

わたしがそういう子供でした。
やってはいけないことのラインが分からない、泣いて理解する機会があってもすぐ抜けてしまう、ちなみに健常者です。
歳を重ねる事に「そういう行為は周りからの信頼を無くす」と理解して、中学に上がったあたりで段々となくなりました。
ちなみに母子家庭で、PMSの酷い母と暮らしていたのでストレスはかなり酷かったです。
他にも爪噛み癖や髪を抜くような自傷癖があり、精神的に参っていたように思います。
今思い出しても被害者には申し訳ない気持ちでいっぱいだし(消しゴムや鉛筆とかだったけど)、当時を知る友人たちには変な目で見られていると思います。
まずは心のケアから、考えてみてほしいです。
必要であれば学校で用意されている相談員に相談してもいいと思いますよ。
※発言小町:https://komachi.yomiuri.co.jp/topics/id/955125/

 

ケース②:万引きをした中学生のケース(親の体験談)

我が息子も小学生の頃に手癖が悪いと言うか、他人様の持ち物を勝手に持って来てしまうということがあり、どれだけ叱っても直りませんでした。
しかし、中1の時にコンビニで万引きをして捕まり、初犯だから学校と警察には連絡しないでおくというお店の温情を断り、今、この子は痛い目に遭わないと大人になって犯罪者になってしまうと思い、警察に連絡していただきました。悪いことをしたとようやくわかったようで、以後ピタリと盗癖は直りました。
※発言小町:https://komachi.yomiuri.co.jp/topics/id/955125/

 

ケース3:人のものを盗んだケース(本人体験談)

私は子供の頃に手グセが悪かったです...
人の物を取り上げたり、勝手に持ち帰った事もあります。
今思えば周りが羨ましかったんだと思います。
欲しいものを買ってもらえたり、その子自身が愛されてると感じることがあると、何かしてしまっていた気がします。。。
ウチは母親が過度に姉を可愛がっており、自分は姉と比較されて常に劣等感や寂しさがありました。
自分に目を向けてほしい気持ちが、悪い事で気をかけてもらう事にすり替わっていたように思います。
※発言小町:https://komachi.yomiuri.co.jp/topics/id/955125/

 

ケース4:人のものを盗んだケース(本人体験談)

アドバイスはできませんが、私も小学生の頃よく人の物を盗むクセがありました。
うちも結構何でも買ってもらえる家だったんですけど。
ただ結局私の盗癖が直ったのは一度痛い目にあったからなんですよねえ。。。
盗んだのがバレて友達に詰め寄られて、でももう後には引けないと思って「知らない」の一転張りで通して。
結局数日にわたり「知らない」と言い張り続け、そのうちうやむやになって終わったのですが、あの日々は今思い出しても胃が痛くなるような恐怖でした。
それ以来きっぱり治りましたね。
幸運なことにイジめにも合わず普通の生活に戻ったとき、「この平穏を守り続けねば!」って心底感じました。
※教えてgoo https://oshiete.goo.ne.jp/qa/5369011.html

 

ケース5:親の財布からお金を盗んだケース(教員の体験談)

周囲にも少なくありません、同様の悩みを持つ御家庭が。ある小学校教諭から聞いたのですが、親の財布から現金を持ち出す癖がついてしまった子のおうちは、
担任と相談し、地元警察署の少年課の人と相談し、一度連行してもらい、事情徴収(もちろん擬似です)をしたそうです。何度叱られてもやってしまっていた子は、一発で治まったとの事。その子にはそういう方法が効いたそうですが、別の盗癖の子に同じようにやってみても、駄目だったそうです。

※教えてgoo https://oshiete.goo.ne.jp/qa/5369011.html


回答者のほとんどが母親であり偏りもありますが、参考になる部分は多く、共通していることは親子ともに盗み癖について真剣に考えた、ということではないでしょうか。

 

盗み癖に関する本の紹介【鉄板本あります】

最後に本を紹介して終わりたいと思います。

子どもの「盗み癖」は医学的に言うと「行為障害」というカテゴリーに入りまして、その「行為障害」に関する本は役に立つ鉄板本と言って良いと思います

本記事執筆時のAmazonレビューは50件で★4と高評価です。

 

本の紹介文を引用します。

【行為障害(素行障害)の背景と支援法を徹底解説】
反抗的ですぐに暴力をふるってしまう。盗みを働いたり、学校をさぼって遊び歩いたりする。
そんな困った行動は、「やめさせよう」という姿勢でのぞんでも、ななかな思うようにはいきません。
子どもの行動にどんな意味があるのか、まずはそこから見直してみることが必要です。
本書は非行への対処法の基礎の基礎。うまくいく指導や支援のヒントが満載の書です。

引用元:https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000196164

 

また「盗み癖」という行為への依存と捉えると、依存症に関する書籍も参考になります。

松本俊彦先生は依存症の治療で有名な先生であり、本もたくさん書いています。

中学生の事例を扱っており、レビューにも保護者の方に読んで欲しいというものが多くあります。非常に信頼できる先生の本なので、図書館で借りてでもいいので読んでいただきたい本です。

 

 

本記事のまとめ

①子どもの盗み癖の原因

  1. 初発:何らかの理由で盗んだ
  2. 癖になる:盗んだ結果、快感情が高まり、不快感が低下した(盗むという行動が強化された)

②子どもの盗み癖の治し方

盗みが起きない環境調整と事後対応の2つが重要。

ここまで読んでいただき本当にありがとうございました!
お気に入り登録やtwitterフォローお待ちしています。どうぞよろしくお願いいたします。

  • この記事を書いた人

モトセ

臨床心理士です。最近は不登校支援に力を入れています。お気に入りやtwitterフォローお待ちしています。 noteでは不登校のお子さんに対する具体的な関り方をプログラム形式で書いています➝noteはこちら

-子どもの問題行動
-