こういった疑問にお答えします。
本記事の内容
- 最強の資料は過去問
- おすすめ参考書:【心理学用語編】
- おすすめ参考書:【論述編】
- おすすめ参考書:【心理学英語編】
- おすすめ参考書:【研究計画書編】
記事の信頼性
私は現在、医療分野でカウンセリングや心理検査を行っている臨床心理士です。年間のカウンセリング回数は約1000回。研究では査読ありの学会誌に論文が1本掲載されました。
入試の勉強において、どの参考書を使うかは成果に大きくかかわってくる大問題ですよね。
この記事を読んでいる皆さんも、限られた時間の中で効率よく勉強するために、なんとか良い参考書を見つけようとしていることと思われます。
ここでは私が勉強で使った参考書を、心理学系、英語系、研究計画書系に分けて紹介したいと思います。
最強の資料は過去問
参考書の前に、絶対手に入れるべきは過去問です。
理由は、膨大な試験範囲をある程度絞り込むことができ、勉強時間を短縮できるからということ、そしてリハーサルができる点などです。
どこで手に入るのか?
志望校に実際に行って入手ことができます。
まずは教務課等に電話し、窓口の開いている時間や過去問がもらえるかを確認したうえで行ったほうがいいでしょう。
基本は無料でもらえるかコピーさせてもらえますが、東大のように購入しないといけない場合もあります。
何年分あった方が良いの?か→できれば過去3年分は欲しい
これは、あるだけあった方が良いです。できれば過去3年分は欲しいです。なぜかというと、いくつか理由があります。
問題の傾向が把握できる
院試の問題形式は200字程度の用語説明や600字程度の論述、1500字程度の小論文など様々で、大学ごとに異なります。また、用語の説明でも出てくる単語の分野が大学ごとに異なります。これは恐らく教授陣の専門分野が関わってくるからです。
精神分析系の単語がでたり、基礎心理系がでたりと学校によってまちまちなので、どの分野の問題が出題されるかを知ることは勉強範囲を絞り込むうえで大変重要です。
例えば、用語のうち3つは臨床系、2つは基礎系、1つは統計、しかもノンパラの検定のみなど、毎年決まったカテゴリから同じような個数出しているといった傾向を見つけられる可能性もあるため、過去問の分析は重要です。
過去に出た問題は出題されない
もちろん絶対とは言い切れませんが、過去3,4年で出題された用語がその年も出てくることはないと思われます。つまり、過去問で出た問題は勉強しなくていいのです。
いくつかの大学に併願する場合、片方で出なくても片方で出てくる可能性があるので、網羅して勉強する必要はありますが、単願の場合は過去問にある用語は覚えなくて大丈夫です。
論述問題も同様に、同じ問題はほぼ出ません。
私は思い切って過去に出た用語は覚えませんでした。もちろん重要単語なら覚えましたが、マニアックなものは捨てました。しかし、大学によっては過去1年分しかもらえないことがあるようですで、1年分では傾向を分析するのに十分ではないです。
まだ試験まで余裕がある方は、2年や3年の時から志望校をある程度絞り、過去問をもらっておくと良いと思います。とは言え、4年生で急ピッチで勉強を進めている、という場合もあるでしょう。この場合、研究室訪問などを通じて先輩の院生と連絡をとって過去問を手に入れるべきです。
少し長くなりましたが、以上の理由から、参考書よりなによりもまずは過去問を手に入れてください。
では参考書編に行きます!
おすすめ参考書:【心理学用語編】
臨床心理士指定大学院対策 鉄則10&キーワード100 心理学編 (KS専門書)
おすすめ度:★★★★★
この本は2014年出た本の改訂版(2022年1月時点)で、非常に良書です。
この本のせいで各大学の平均点はけっこう上がったのではないかと疑ってしまうくらい良くできています。私はこれが無かったら落ちてたと思います。
この本の良いところは以下です。
- 用語説明の型を教えてくれること
- 重要単語をある程度網羅して解説してあること
- 初心者が見ても理解できるくらいわかりやすいこと
- 200字説明の例文がのっていること
実は200字というのは思っているより短いです。その感覚をつかむのにも役立ちます。キーワード100と書いてありますが、派生語を含めるともっともっとあります。
私は用語はこれと、過去問に出てきた用語に関係がある言葉をそれぞれの専門書で調べ、ノートを作っていました。例えば“概日リズム睡眠障害”という単語が過去問にあったのであれば、睡眠障害系の主な単語を調べたり、といった感じです。
臨床心理士指定大学院対策 鉄則10&キーワード25 心理統計編 (KS専門書)
おすすめ度:★★★★
上記の鉄則10&キーワード100心理編の姉妹書です。
赤い方は優秀なのですが、統計についてはかなり浅くしか書いてないので、姉妹書のこちらを使用すると良いでしょう。やはりわかりやすいですし、基本的なことは載っています。
ただ統計に関しては得意・不得意の個人差がけっこうあるので、苦手ではない人は要らないかもしれません。学校の勉強で十分な場合もあります。
仮に難易度の高い統計用語が過去問にある場合はこの本でも正直まだ足りないかなって感じがあります。わかりやすいということは丁寧に書いてあるということであり、必然的に1つのことに割くページ数が多くなります。図があればなおさらです。そうなるとやはり1冊中の網羅性は下がります。例えばこの本はクラスカル・ウォリス検定のようなノンパラメトリック検定までは書いてません。
過去問の傾向に合わせて別の本を使ってみるのも良いでしょう。
心理学キーワード&キーパーソン事典 おすすめ度:★★★★★
私は使っていなかったのですが、大学院に入学後、同期のみんなが使っていたと知り驚きました。中身を見たところ非常に良くまとまっていたので、私も買えばよかったと思っています。
その後の臨床心理士試験の勉強でも役に立ちます。心理学に関係する有名人物(人名)の解説が載っているのが素晴らしいです。
おすすめ参考書:【論述試験編】
臨床心理士指定大学院対策 鉄則10&過去問30 院試実戦編 (KS専門書) おすすめ度:★★★★★
河合塾KALSが監修しているこのシリーズは私が受けた時は良書が多く、論述でも同様です。
- 受験にセンスや人間性は不要
- 必要なのはただ知識
- 論述や用語説明は情報量で点数がきまる
- 論述分に起承転結は要らない
といった鉄則や、回答を読む前にまず自分で答案をつくってみるといった勉強法まで書いてある大変いい本です。そもそも論述問題はどうやって勉強したらいいのかわからない、という人も多いのではないでしょうか?私はそうでした。
この本は臨床心理士の4大業務に沿って、実践に即した例題と解答例が書いてあります。始めは例のような回答は難しいですが、慣れれば少しずつできるようになっていきます。
600字を20~25分目安で書けるようになる練習を私はこれを使ってやっていました。
とてもおすすめです。
よくわかる臨床心理学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)
おすすめ度:★★★★
臨床心理学の定番教科書ですが、やっぱり良くまとまっていて、論述対策にもよく使いました。
心理療法や精神疾患もまんべんなくかつ詳しく乗っていますので、復習や想定回答を作る際に役立ちました。
短期決戦!心理学論述対策 人気校・ブランド校編―臨床心理士・指定大学院合格book
おすすめ度:★★
実は河合塾KALSの論述対策本は2015年の8月という比較的最近に出たもので、私がそれを見つけたのも試験の1ヶ月前くらいだったと思います。
それまで論述はこの本や臨床心理学系の学術誌を参考にしていました。この本の感想はKALS青本が出た今となっては必要ないかなという感じです。
この本は短期決戦と謳っているだけあって、15領域に絞り込んで前段階の必要知識と、例題と、回答例という構成になっています。
良い点としては実際の大学名を挙げて過去問の傾向を紹介しているところや、対象関係論といった少し理解するのが難しい分野を取り上げているところだと思いますが、網羅性も低く、回答例も青本の方がわかりやすいです。
心配でいろんな本を読みたい方は読んでみてもいいと思いますが、そうでない人は要らないと思います。
おすすめ参考書:【心理学英語編】
英語も得意不得意がかなり分かれるところだと思います。
一つ言えることは、急に英語力が上がるということはまずないです。少しずつでも単語なり、文法なりこつこつ勉強しといた方が良いです。
私の志望校は長文の英訳しかなかったので、その対策に使った本の紹介になります。
臨床心理士指定大学院対策 鉄則10&キーワード100 心理英語編
おすすめ度:★★★★
もうおなじみの河合塾KALSの本です。私はそこまでがっつり使わなかったのですが、一応持っています。
この本のいいところは、用語説明で紹介した赤本と対応しているので、用語の復習にもなること、見慣れてるけど訳しづらい単語のうまい訳し方が書いてあること、豊富な例題などでしょうか。
ちょっと内容が盛りだくさん過ぎて、手を付けるのがうっとなるかも知れませんが、ちゃんとやったら力がつくのは間違いないです。ちょっと文法の解説が弱いかなーと感じる時もありますが、解説に割かれているページの大きさが小さいので仕方ないです。
あと、例文の多くが英語の鉄板教科書と言われるヒルガードの心理学の英語版から引用されているのもいいところだと思います。私の周りでも、ヒルガードを訳して勉強している友人はいました。
●日本語版
●英語版
心理英語問題集(大学院入試問題分析チーム)
おすすめ度:★★★★
私は最初この本と過去問を解きまくるという方法で勉強していました。たぶんもう絶版なので、Amazonなどから中古で買う必要があるのが難点です。
内容は前半が心理用語の英語での説明文(短文)、後半が色んな大学の過去問(長文)となっており、それぞれ模範和訳、重要単語と英文の解説という構成です。
Amazonのレビューで誤訳が多いと叩かれていますが、私はそこまで気になりませんでした(スキル不足でしょうか・・・)。
私的には結構気に入っている本で、英文の解説もなかなか豊富ですし、訳しにくい単語の意訳の仕方など結構役に立ちました。
重要単語では心理用語以外の難しめな動詞や形容詞も載っていますし、訳して採点を繰り返しやるうちに力がついたと思います。
院単―大学院入試のための必須英単語1800
おすすめ度:★★★
院試用に単語帳があるんだ!と感動したのを覚えています。
すこし、というかかなり難しめの単語帳で、独自にコーパスを作って頻出なものから書いてある点も良いです。
ただ単語帳全てに言えることですが、その単語が、英文中で毎回単語帳に書いてある意味で出てくるとは限らないので、暗記したとしても実際に過去問で遭遇すると読めない、ということが意外とあります。
なので単語は過去問や参考書を使った演習でわからなかったものを辞書で引き、コロケーションで覚えたり、イメージをつかむといった方法で覚えていくのが個人的にはおすすめです。
使い方としては見たことない単語をピックアップしてつぶすために使っていました。
つまり、見たことある単語はスルーして、なんだこれ?!という単語にマーカーして覚え(もちろん全部は無理です)、本番にあたって見たことない単語をなるべく減らす。といった感じで使用していた気がします。
ちなみに院単は全ての学部を対象にしたもので、心理に特化した心理院単というものもあります。
心理院単はAmazonでめちゃくちゃ評価が良いので、もしかしたら使うならそっちの方が良いかもしれません。
基本からわかる英語リーディング教本 おすすめ度:★★★★★
この本は院試とは関係のない一般的なリーディングの参考書なのですが、とってもいい本です。私は文法解読が好きな方なので合っていたのかもしれないです。
心理英語問題集と並行してやっていました。とても力がついたと思います。
内容や評価はAmazonに多くのレビューが書いてあるので、そちらをご参照ください。
おすすめ参考書:【研究計画書編】
合格ナビ! 臨床心理士指定大学院 〔研究計画書〕
おすすめ度:★★★★★
こちらは改訂版で私が使っていたのは1つ前のバージョンです。研究計画書だけでなく、志望校の選択ポイントや理想的なスケジュール、入学後の院の生活と修士論文のことまで書いてくれてます。
大学院入試を考え始めたあたりで読んでおくと良いかもしれません。
研究計画書の書き方はかなり詳しく書いてあります。
ciniiでの論文検索方法からテーマの選定、フォーマットまで事細かに書いてありますし、何より、添削例があるのがとても参考になりました。
つまり良い例だけでなく、悪い例からどういうプロセスで良くなっていくのかを解説しているので、自分が描いたものをレビューする時の批判的な視点が身につきます。
臨床心理士指定大学院対策 鉄則10&サンプル20 研究計画書編 (KS専門書)
おすすめ度:★★★★★
私は使ってなかった(まだ出版されていなかった)のですが、河合塾KALSのシリーズから研究計画書編が出ています。
KALSの他の本が良書であり、この本もわかりやすくて大変よいです。
もうKALSの本はシリーズ全て持っていてもいいと思います。
本記事は以上です。
おさらい
1.心理用語編
2.論述編
3.英語編
4.研究計画書編
上記で紹介した意見はあくまでも私見ですので、皆さんに納得してもらえるかわかりませんし、全ての本を読んだわけではないので、紹介していない他の本でいい本があるあもしれません。
しかし、ここで紹介したおすすめ度の高いの本は、使ってて本当に良かったと思えるものなので、自信をもってお勧めします。
大学院に進学した後を見据えて心理検査の勉強をしたい方向けの記事もありますので是非ご覧ください。