力動的ってどういう意味? パーソナリティの精神分析的理解

心理検査
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この記事では臨床心理領域における「力動的(心理力動的、精神力動的とも)」という言葉がどんな意味なのかについて、私の理解をもとにまとめたものです

(絶対にGoogleで検索されないだろうなー…と思いながらも2時間かけて書きました…。しかもけっこう長い)

みなさんは「力動的」ってどういう意味か説明できますか?

一般的には精神分析のモデルを用いた理解の仕方、と解釈されているかと思います。

私はオリエンテーションが精神分析ではなく、本格的に学んだことがありません。ですが、心理検査を多くとるため、どうしてもパーソナリティのことを説明するために精神分析的な理解が必要になりました。

そこで「力動的な理解」という言葉にぶち当たるわけですが…

いまいちわからなかったので自分なりにまとめる意味を込めてこの記事を書いています。読者の皆様にとっても、復習になれば嬉しいです。

この記事は専門家向けの記事です。心理検査を受けられた方は結果の解釈にあたり、専門家の指導と助言を受けてください。

力動的ってどういう意味? 心理検査所見作成の「基本の基」

私の「力動的」という言葉のイメージは、精神分析のモデルを用いて理解すること、それくらいでした。エスとか、自我とか、防衛とか、どんな感じの言葉を使って説明する。

非常にぼんやりしていて、どんな所見を書けば力動的な理解をもとにした所見なのかと、確信が持てないでいました。

結論から言うと、馬場先生の本に全部わかりやすく書いてありました。この本を探し出した自分を褒めたい。というより、それまで知らかなった自分が恥ずかしい。

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本気で学びたい方はこの記事を読まずに本を買った方がいいです。

では、少し引用させていただき、力動的の「」とは何なのか、「動き」というのは何の、どんな動きなのか、についてまとめていきます。

「力」について

結論から言うと、精神力動的理解の「」は「人の欲求・欲動・衝動」です。領域で言うと「エス」から生まれます。

厳密に言うとその3つの意味は違うのでしょうが、ここではある程度の理解を目的としているため、ひとまとめで記述します。なお、コトバンクによれば、「欲動」とは「人間を行動へと駆り立てる無意識の衝動」と書かれています。

精神分析な理解では欲動を主に2つに分けているようです。それは「リビドー」と「アグレッション」です

リビドー

1つはかの有名な「リビドー」です。

これはラテン語で、wishとかdesireとかいう言葉がこれに該当するようです。

(馬場禮子『精神分析的人格理論の基礎』より)

もともとは「願い」とか「願望」という意味だったのでしょう。ただ、フロイトはヒステリーの女性を研究していたこともあって、欲求は抑え込んでいた「性欲動」だと思っていたようです。

リビドーは、イコールエロスだと思って良いでしょう。これは愛の欲求です。最終的には生の欲動になっていくのです。

(馬場禮子『精神分析的人格理論の基礎』より)

馬場先生いわく、イコール愛の欲求なので、「生きたい」、そして生きていくにあたって「こうしたい」「ああしたい」という欲求。

ワンピースのニコ・ロビンの名シーンが思い出されます。

他のモデルを参照するのであれば、「マズローの欲求階層説」や「デシの自己決定理論」も基本的な欲求を論じているものと捉えることができるのではないでしょうか。

アグレッション

2つは「アグレッション」です。

今現在では非常に問題になっている欲動、衝動のもう1つの軸として、アグレッションというのがあります。攻撃性、破壊性。… 死の本能でいうと、破壊性、攻撃性は本来自分に向かってある。それが自分以外の人に向かうと、他者攻撃になるという考え方です。

(馬場禮子『精神分析的人格理論の基礎』より)

「PFスタディ」の「ローゼンツァイク」の理論を参照すると、攻撃性は「主張性」と広くとらえても良いのかもしれません。

まとめると、力動的理解の「力」は以下の2つに便宜的に分けられるかなと思います。

  1. 欲求・欲動・衝動・リビドー:自分がこうしたいと思う「思い自体の熱量
  2. アグレッション・攻撃性・主張性・破壊性:「その熱量をどこかに出したいという思いの熱量

自分なりの理解として「熱量」という言葉を使ってみました。力学的にいうと「エネルギー」になります。

実際、心理職はエネルギーという言葉を好んで使います。あの人はエネルギーが低いとか。バウムテストの所見でもエネルギーが高いとか低いとか、出せないでいるとか、そういう表現をよく見ます。

なお、馬場先生もこのように締めておられます。

結局現在の理論として、エスの中に何が入っているかというと、リビドーとアグレッション。これが色々と姿かたちを変えて、敵意だの、人と仲良くしたいだの、人をやっつけたいだの、色んな欲求や感情になって、対人関係とか意識とか、そういうところに現れてくる、その元素はこれだというのが、ほぼ一般的な考え方です。

(馬場禮子『精神分析的人格理論の基礎』より)

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「動き」について

次に力動的の「動」の部分についてです。まず基本的な部分を引用いたします。

力動論というのはダイナミックという言葉を訳しているのです。そういう(自我、超自我、エスの)相互関係があって、相互交流しているというダイナミズムについて詳しく考えるのが力動論です。

(馬場禮子『精神分析的人格理論の基礎』より)

力動論的観点とは何かと言いますと、自我がいろいろなファンクションをしていますから、まずそれがどんな動き方をして、どういう役割をして、どういう働きをしているのかそれに伴って、エスや超自我との間にどういう相互作用が起こるのか、するとそれはどのような対外的行動として、あるいは症状として現れるのかということを論じる観点です。

(馬場禮子『精神分析的人格理論の基礎』より)

もうこれが答えです。馬場先生、本当にありがとうございます。他の書籍の関係する部分も引用してみたいと思います。

(自我、超自我、エス)この3つの力動的な不均衡と外的現実の圧力から心の健康が損なわれる可能性を唱えたのです。

下山晴彦(編)『よくわかる臨床心理学』

精神力動的な立場の特徴は以下である。

  1. 人間の心の働きには本人が意識していない無意識があること(無意識の存在)
  2. 無意識は個人の日常の言動に、非常に大きな影響を与えていること
  3. 人間の心の中には色々な葛藤がある(眠りたい欲求と食べたい欲求、遊びたいという願望と仕事をしなければならない現実があること 等)
  4. 個人は欲求を満たしながらも現実に適応できるように葛藤を解決しながら生きていること(妥協形成)
  5. その結果として心と体のバランス、個人として社会への適応を保っていること など

小川 俊樹(編)『投影法の現在 (現代のエスプリ別冊)』 

※ちなみにこの「投影法の現在」は結構良い本なので、図書館にでもあれば借りてみることをお勧めいたします。

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網羅的かは置いといて、私が読んだことのある本から引用してみました。

力動的理解の「動き」は「エス、自我、超自我のうちの “自我の動き(機能)”」とほぼイコールで良いのかなと思います

精神分析でも様々な学派があるようなので、統一的な理解なのかはわかりませんが、所見を書く上での理解としては自我の動きと捉えて十分なのではと思います(自我の動きに伴って「エス」と「超自我」の相互作用が記述されるので、自我を中心に置いていいのかなと)。

“自我”の動き・機能

では自我の機能とは何なのかというと、馬場先生の本では自我の機能について以下の5点が示されています。

  1. 現実機能:現実検討と自我境界の維持の2つがある。
  2. 防衛・適応機能:防衛は自分の内面で自分を安定させるために働く機能のこと。適応は外界に適応するために働きかける機能のこと。
  3. 対象関係機能:自分の内面の、つまり頭の中で思い描くもの(≒イメージ)に関する機能。わかりやすく言うと、自己表象は自己像、他者表象は他者像のこと。
  4. 自律機能:自分の成長や発達に寄与するような自我の働きのこと。ハルトマンが提唱。
  5. 統合機能:自我同一性の保持に関する機能。うまくいかないと多重人格、アイデンティティの問題に関係。

「:」以降の文章は私がまとめました。

いやー、これを網羅的に所見に落とし込んでいるとしたら相当すごいなと思います。ロールシャッハをとる人は普通なのでしょうか。私はロールをとらないのでよくわかりませんが。

私見ですが、バウムやSCT、その他の比較的実施が容易な投影法やエゴグラムの解釈・所見作成では、2の「防衛・適応」と3の「対象関係」の部分がフォーカスされてる気がします

(理由:まず1はBPDか精神病圏に関する部分なので、病態水準が軽めの方の所見にはあまり出てこない。4は問題のメカニズムを説明するときにあまり出てこない。5は保ってて当然のケースが多い。)

まとめると、検査所見を書くときにまず考慮すべき「動き」は以下の3つ。

1つ目は防衛機制。これはエスから生まれたエネルギーと、超自我の理想的な自分像や行動規制の間で生じる「葛藤」「不満」を心の中でどう処理するかということ。

抑圧とか、投影、合理化、反動形成、はたまた原始的防衛機制かなどなど。

2つ目は外界への適応の仕方。防衛機制という言葉の中には適応も含まれているみたいですが、わかりやすく言うためにあえて分けました。これは内的葛藤の処理に伴って、現実世界にどうやってそれを表出していくか、言い換えると社会適応していくか(適応)。

3つ目は対象関係機能。自分のことや他者のことをどのように捉えているか、言い換えると、どうやって自分像や他者像を作っているか。作られた自分像や他者像はどのようなものか。所見では自己知覚(自己肯定感とか、自尊心とか)や他者知覚(他者認知)と関係。

ひとまず大雑把ではありますが、心理検査所見を書く上でまず考慮しておくべき「自我の動き・機能」は上記でいいのではないかと勝手に思っています。

ロールシャッハでも「統制力」という概念が重要なのは自我の中心的な機能を意味しているからかなと思いました。

力動的理解のまとめ

まとめます。

  1. 人には「無意識」があり(精神分析の局所論で言えば意識前意識無意識の3つがあり)、無意識が日常の生活に影響していることを仮定する
  2. 自我が、エスにある「リビドー」と「アグレッション」(力)を、超自我が作った自分ルールを参照しつつ、どのように処理(防衛・適応)するか(動き)、自分像や他者像をどのように作りあげているか(動き)などを検討するのが「力動的理解」という言葉の主な意味

現実的に仕事をするうえで最低限これくらいは知っていれば、ひとまずは所見は書けるのではないでしょうか。これらをもとにすると、力動的な理解をベースにした所見では最低限以下を書くべきでしょうか。

  • 無意識の欲求・衝動:クライアントの無意識な欲求としては~~~が考えられる。等
  • 自我の防衛・適応メカニズム:そのような欲求を内的には~~~して処理し、自分を安定化させているようである。また、対外的・社会的には~~~~という方法で表出し、適応しようとしているようである。等
  • 自己像・他者像:クライアントは自分を~~~~と捉えているようである。他者を~~~~と捉えているようである。
  • 上記などをもとに、支援の方針(これが非常に大切)

本当に中心的なところをまとめただけであることをご理解ください。

長くなってしまいましたがこのへんで。

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この記事を書いた人
モトセ

30代の心理職です。元会社員で社会人入試組。ITベンチャー→大学→大学院→心理職。SC、精神科クリニック、企業内心理職の経験ありです。twitterでは心理学関係の学会の更新情報をほぼ毎日つぶやいていますので、情報収集に使ってください。

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