心理検査

バウムテスト(樹木画テスト)の解説:やり方、結果の解釈、幹・実・樹冠等のサインについて

バウムテスト(樹木画テスト)投影法にあたる性格検査の1つです

この記事では検査を受けた方が不安にならないために、どのような検査なのかを少し紹介します。

そもそも性格検査には質問紙法と投影法があります。

質問紙法は簡単に言うとアンケートです。1つの刺激文に対して、ほとんど当てはまらない、から、かなり当てはまる、などの数値の選択肢があり、それらを選ぶ検査になります。

一方の投影法は刺激があいまいで多義的であり、求められる反応の自由度が高い心理検査です。反応の自由度が高いため、意図的に回答を歪めることが難しい、無意識のパーソナリティが投影されやすいといった特徴があります。

では、バウムテストについて書いていこうと思います。

心理検査の解釈は専門的な知識と経験が必要です。検査結果の解釈については、必ず専門家の助言を受けてください。

バウムテストのやり方

1.コッホ式

教示は「実のなる木を描いてください」というものです。
道具はA4版の画用紙、中程度の柔らかさの鉛筆です。

2.高橋雅春式

教示は「木を一本描いてください」というものです。
道具はB5のケント紙、HBの鉛筆です。

バウムテストの目的

最終的な目的は描かれた木から様々な解釈仮説を検討し、被験者のパーソナリティを見立て、生活に役立てる、ということになると思います。

もちろん、木を一本見ただけでその人の人となりが完璧にわかるということはありませんし、バウムを基に病気を診断することもありません。

しかし、この人はこんな人ではないか、といういくつかの人物像(可能性)を持っておくことはできます。また、バウムテストは質問紙法と併用し、テストバッテリーとして使われることが多いです。

バウムテストの解釈方法概要

ここでは支援者向けにはなりますが、高橋の解釈法を基にした解釈の方法の概要を書いていきます。

詳しく知りたい方はこちらの本を参照されると良いと思います。これまで出会った多くの心理士がこの本を使っていました

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北大路書房

①全体的評価

これは「パッと見」から全体的な印象を得ることで、検査者が直観的に被験者の評価をすることです。そもそも木は人型に似ているため、自分自身を反映しやすようです。

この枝はこれこれを象徴している、といった細部の解釈はそれだけではあまり意味がありません。部分部分の解釈では矛盾した結果が出ることもしばしばあります。

まず初めに全体的な印象をとらえ、その情報を参考にしながら、描かれた木の様々な特徴の意味しているところを考えていきます。

この段階では例えばですが、雑だなとか、力強いなとか、調和がとれているなとか、直観的な印象を重視します。

②空間象徴の分析

空間象徴というのは、木を描く用紙のある領域には特別な意味を象徴しているという考え方です。
もともとは筆跡学で用いられていたもののようです。

グリュンワルドという人が考えたのが有名です。
kuukan用紙のどの部分に、あるいはどの部分に向かって何が描かれているかというサインが、パーソナリティの側面と結びつく根拠となる理論がこの空間表象です。

③形式分析

どのように描かれているか、に関する分析です。

例えば、木の位置、サイズ、写実性、筆圧、線の特徴、どこから見た木か(パースペクティブ)、対称性、透明性、陰影、などが形式分析の対象です。

④内容分析

何を描き、何を描かなかったのかという内容に関する分析です。

樹冠や幹などの特徴、杉や竹といった特定の木を描いたか、などが対象となります。

⑤総合評価

実際に解釈する場合、時間が許せばですが、それぞれの解釈仮説を基に、共通性の高いもの、全体評価にマッチするものをその人の特徴として考えていくのが良いかと思います。

バウムテストをそれなりに読み取れるようになれた3つの理由

ここでは私がバウムテストの解釈をそれなりにできるようになった理由を経験談をもとに書いています。

数多くのバウムを見たこと

自分が所見をそこそこ書けるようになるうえで一番重要だったことはたくさんのバウムを見たことだと思っています。

たくさん見たことで、そのバウムの特徴が説明できるようになりました。

例えば大きさや位置、枝先が尖っているといった細かいところまで、その度合いが強いのか弱いのかは比較できるようになって初めてとらえることができるものだと思います。

描いた人とその人のバウムの照らし合わせを数多くこなした

実業務をこなすなかで、実際に会ったときのその人の話し方、考え方、感じ方と、その人が描いたバウムを照らし合わせることが増えました。

参考書を読み、こういう指標はこの傾向を示しているということを勉強するのも大切ですが、現場感覚として理解できたのは大きかったと思います。

特に子どもさんのバウムは発達水準を見るうえでも役に立つことが多かったです。発達水準とバウムとの関係は以下の本がおすすめです。

バッテリーのなかでバウムの比重が大きくないとわかったこと

検査所見とフィードバックのテキストを見るとわかりますが、テストバッテリーを組んだ場合バウム所見の分量はそれほど多くありません。

つまり、バウムだけで受検者のパーソナリティを十分に検討することはあまりありません。

しかしながら、防衛が強く質問紙や投影水準の低い検査で結果の妥当性が怪しい場合や、描画に親和性が強く独自のバウムを描いてくれた場合など、有用な検査になる場合もあります。

また、性格検査の所見として使わずとも、カウンセリングのなかで会話を広げるためにPDI(検査後の質問)を行うことも支援に役に立つ場合があります。

バウムテストのおすすめ書籍

この本も持っている人が多かったです。非常に内容が濃いので、しっかり勉強したい人におすすめです。値段が高いのがネックですが、専門的に勉強したい人は必須かと思います。

こちらはバウムテストを体系化したカール・コッホ自身の本です。詳細に解説されているので極めたい方にお勧めです。

まとめ

投影法は解釈に熟練を要すると言いますが、本当にそうだと思います。

反応の自由度が高いがゆえに解釈可能性は膨大になりますし、部分部分の解釈は矛盾したものになることもよくあります。

どれをピックアップし、リアルな人文像を描くためには臨床の経験も重要です。

受検者の方にお伝えしたいことは、心理検査は良い・悪いという判断をするものではないということです。

不安もあるかとは思いますが、自然体で臨んでいただければと思います。

バウムテスト以外の心理検査も紹介しておりますので是非ご覧ください。

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  • この記事を書いた人

モトセ

臨床心理士です。最近は不登校支援に力を入れています。お気に入りやtwitterフォローお待ちしています。 noteでは不登校のお子さんに対する具体的な関り方をプログラム形式で書いています➝noteはこちら

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