このような疑問にお答えします。
この記事の内容
- SCTはどんな検査で何がわかる?
- SCTの解釈方法
- 回答例はあるのか、書けないときはどうすれば良いか
私は医療機関でSCTを含め心理検査を実施・解釈してお伝えしていますので、的は外れていないと思います。
では解説していきます。
SCTはどんな検査で何がわかる?
SCT(文章完成法)は投影法の心理検査(性格検査)の1つです。
どんな検査?
「私はよく」などの短い書きかけの文(刺激文)が複数あり、受検者にはその文に続けて思いつくことを自由に書いてもらい、文章を完成させてもらいます。
小学生用、中学生用、成人用の3種類があり、様々な年齢層に使用でき、パーソナリティに関する情報を幅広く把握・分析できることができます。
SCTでわかること
SCTは性格検査ですので、受検者の性格を推測するものです。
こういう性格でこういう風に悩みやすいのかな?等と仮説を立てるために使います。
SCTには様々な刺激文が書いてあるため、パーソナリティ(性格)だけでなく、興味や価値観、生活史、家族関係といった、 受検者の全体的な情報を把握することができるのが特徴です。特に受検者の意識的な部分(自分をどうとらえているか等)を評価するのに適しています。
これだけ聞くと非の打ち所がない検査に見えますが、弱点もあります。
それは受検者が意識的に回答を操作しやすい点です(心理的防衛が入りやすい)。これは実際に書いた方も想像できたことかと思います。
回答に際し受検者の皆さんにお伝えしていることがありますが、それは最後のところで書かせていただきます。
SCTの解釈方法
検査中にどうやって性格を分析するんですか?と聞かれることがあります。詳細はお答えできませんが概要としては、以下点から総合的に判断します。
解釈は記入いただいた内容と、どのように書かれているかという形式の両方を参考にします。
SCTの内容分析
書かれた反応の内容を分析するのが内容分析です。
解釈に特にこうしなければいけないという決りはなく、検査者の着眼点にゆだねられます。
解釈に重要な点は、「こういうところがあるかもしれない」という解釈仮説を数多く出していくということだと言われています。ベテランの検査者が読み取ると色々なことがわかると言われるのは、この解釈仮説をいくつも出せること、それを統合してまとめられることができるからです。
内容にどのような意味があるのか直接受検者に聞いて確認することもあります。
SCTの形式分析
形式分析は内容に関するものではなく、どのように書かれているかを解釈することです。
具体的には、反応(記入量)の長さ、記入にかかった時間、漢字や文法の誤り、筆跡(線の強さ)などを参考にすることがあります。また、空欄がどれくらいあったのかも参考にすることがあります。
SCT解釈のまとめ方
SCTは刺激文が様々あり、まとめ方も情報のカテゴリごとにまとめたり、力動的な観点でまとめたりなど検査者によって様々なようです。
いろいろな心理職の所見を見ましたが、これといって統一的なフォーマットはないと感じます。
まとめ方の一例
- パーソナリティ特徴
- 家族関係・対人関係
- 欲求と防衛・適応方法
- 何度も出てくる記述/目を引く記述
- その他(性役割観、職業観、価値観など)
心理検査の実施・解釈には専門的な知識と経験が必要です。検査結果の解釈については、必ず専門家の説明・助言を受けてください。
回答例はあるのか、書けないときはどうすれば良いか
結論から言えば回答例はSCTの表紙に書いてあるもの以外ありません。確か2問くらい表紙に書いてあったはずです。
理由は回答例が豊富にあるとそれにひっぱられて書いてしまうからだと思います。
回答例があった方が書きやすいという意見もあると思いますが、書きやすいよりも受験者の方が素直に書く方が結果として意味があるのではないでしょうか。
書けないときにどうすれば良いのか
書けない項目は無理に書かなくてかまいません。検査者は受検者に対し、書けないときは書かなくて良いし、書きたくないことは書かなくて良いと伝えることになっています。
そんなこと言っても書かないと検査の意味がないのでは?と思われた方もいるかもしれません。
もちろん、全ての刺激文に率直に思ったことを書いてくださった方が情報量が多いので、検査の精度は上がるでしょう。しかし、書けなかったという事実も大切な情報ですので、そこも素直に検査者にお伝えいただけると幸いです。
病気の診断に使われることはある?
SCTが病気の診断に使われることはありません。
受検者の性格を把握するために使われます。また、ほとんど場合、性格検査は何種類か別のものを実施し、総合的に判断します(テストバッテリーと呼びます)。SCT1つでは性格も病気も決まりませんし、奇抜な回答があったとしても、それだけで特定の病気と診断されることはありません。
様々な回答を基に、性格に関する仮説を立て、受検者の問題解決(苦痛を減らすこと)を手助けにするために行うのが心理検査です。
当ブログには他の検査の記事もありますので良かったらご覧ください。