「長谷川式認知症スケール(Hasegawa’s Dementia Scale-Revised; HDS-R)」は「認知症」のスクリーニング検査の1つです。
もともとは1974年に長谷川和夫先生たちによって公表された認知症の診断指標です。
その後1991年に改訂され、現在の検査となりました。HDSRのRがリバイズド(改訂版)の意味です。
以前は「改訂版長谷川式簡易知能評価スケール」と呼ばれていましたが、2004年に「痴呆症」から「認知症」へ呼び方が改称されたことに伴い「長谷川式認知症スケール」に変更された経緯があるようです。
長谷川式認知症スケール(HDSR)について
長谷川式認知症スケールのメリット
HDS-R のメリットはその簡単さと検査時間の短さです。事前に被検査者の生年月日のみ調べておけば検査を行うことができます。
また、HDS-R は動作性の検査が含まれていないことも特徴です。
動作性というのはペンで図形を描くなどの身体動作に関する検査のことです。なお、この動作性課題が入っているのがMMSE(Mini-Mental State Examination)という検査になります。
動作性の課題は高齢者に対しては負担が大きかったり、抵抗を引き起こす要因になること等から、HDSRでは外されているそうです。
HSDRは特に記憶に関する配点が高いため、アルツハイマー型認知症の鑑別には有用であると言われています。
長谷川式認知症スケールの実施方法
実施方法は検査用紙に書いてある項目について、被検査者に質問していくだけです。事前に予習しておけば、ほとんどの人が取れると思います。
ネットに用紙がありましたのでリンクを貼っておきます。
シンプルな用紙です。
こちらは実施上の注意点が書かれています。
ただし、1つ注意点があります。
8問目に「これから5つの品物を見せます。それを隠しますので何があったか言ってください。」という問いがあるのですが、この5つのモノは相互に関連の無いものをあらかじめ用意しておく必要があります。
いきなりドクターから「長谷川式とって」とオーダーが入った際に、「道具がないどうしよう!」とならないように、あらかじめ用意しておきたいものですね。
一応サクセスベルで売っていたりもします。
実施に不安がある方は書籍も出ています。
長谷川式認知症スケールの解釈
知能検査のように指標得点を算出して解釈といったプロセスはありません。
検査者は単純に点数を計算してカットオフをオーバーしているか・していないかを調べます。最終的な診断はドクターが行います。
HDSRのカットオフは21点/20点です。
20点以下の場合に認知症が疑われるという意味です。なお、最高得点は30点です。
私の経験談としては、実施⇒点数計算⇒カルテに記載して終了、という流れです。
案ずるなかれ、やればできます。
補足
HDSRを受けてみて、「認知症の疑いあり」という結果が出たからと言って、必ずしも認知症というわけではありません。
もちろん高齢で認知機能の低下があれば認知症が疑われることがありますが、例えばうつ病を患っている人にも認知機能の低下が見られる場合があります。
認知症の正確な診断には、専門医を受診することが必要になります。
最後に
長谷川先生はご自身も認知症になられ、その体験を本に書いておられます。興味のある方は読んでみてはいかがでしょうか。とても評価が高いです。