心理検査

PFスタディの結果解釈【年間100件の所見を書く心理士が解説】

この前病院でPFスタディという心理検査を受けたのだけど、どんなことがわかるんだろう。

この記事ではPFスタディという心理検査について紹介していきます。

1分で紹介 PFスタディとは?

英語名は「Picture Frustration Study」、日本語名は「絵画欲求不満テスト」などと呼ばれています。

あまり馴染みがない人もいるかもしれませんが、PFスタディは「投影法」の心理検査です。

ローゼンツァイクという人が開発したもので、独自の欲求不満耐性理論というものに基づいています。ここでは欲求不満とは、欲求(自分はこうしたいという気持ち)が何らかの障害によって満たされない状態を意味します。

古典的な説明としては欲求不満耐性を測る検査ですが、私は説明するときは「ストレスや葛藤状況に対する対処傾向を評価するもの」と言っていました。

対処傾向と言うのは噛み砕いた言い方で、もう少し専門的に言うとアグレッションの傾向を評価します。

ここで言うアグレッションとは単純な「攻撃性」のことではなく、もっと広い「主張性(主張の仕方)」を意味します。

続いてPFスタディを実際に使っていた時の体験談からそのメリットについて書いていきます。

受検された方への補足もありますので気軽に読んでいただければと思います。

実際の結果解釈に当たっては、臨床心理士等の専門家の指導・説明を受けてください。

PFスタディについて

PFスタディの内容・実施方法

PFの中身は漫画の一コマのようなイラストが24個あり、それに記入する検査です。

大体2人の人がいて、片方の人がもう片方にストレスを与えるようなことを言っていて、言われた方の人の吹き出しは空欄になっています。

受検者にはその吹き出しに、その人だったらなんと言うと思うか考えてもらい記入してもらいます。絵の状況はそれぞれ異なりますが、共通しているのはストレス・葛藤を生むような状況であることです。

例えば、片方の人がもう片方を非難していて、非難されている側の吹き出しが空欄になっているなどがあります。

そこに何を書くのか等で、不満状況での対処傾向を推測しようとするものです。もちろん1つの回答からだけでなく、全体の傾向を踏まえて分析します

自分の感覚ではこの検査は比較的マイナーな方ですが、使っていた私としては結構使いやすい検査で、対人場面での対処傾向がわかるため重宝していました。

次に経験談からこの検査のメリットを紹介します。

PFスタディの特徴(使用者目線)

実施が比較的容易である

年代や性格等にもよりますが、だいたい20分程度で終える方が多いです。

そのためテストバッテリーの1つして組み込むことも容易です。

対象年齢が子どもから大人までと広い

この検査のいい点は子どもにも使えることです。

具体的には小学生用、中学生用、青年用、成人用の4パターンがあります。

小学生に使う場合、知的な問題や状況理解の難しさから書けないことも時々ありますが、それも1つの所見になるので無駄になることは少ないです。

GCRからストレス対処傾向が一般的かわかる

GCR(Group Conformity Rate)は集団順応度や集団一致度と呼ばれるものです。

PFの各場面には比較的出やすい典型的な回答(ロールシャッハ テストの平凡反応に類似するもの)が設定されているものがあり、受検者が全体をとおして何%GCR反応を出したかで、一般的な反応の出現率がわかります。

GCRが高すぎる場合は典型的な反応をあえて出そうとしているとみなし、空気を読む過剰適応の傾向があるかもしれないと仮説を立てたり、低すぎると常識がなく自己中心性が高いなどと仮説を立てていきます。

GCRは社会性を判断する1つの指標になるため、非常に有用な尺度です。

アグレッション(主張性)の傾向がわかる

大きく「主張の方向」と「主張の型」の傾向がわかります。

アグレッション方向とは簡単に言うと、ストレスがかったときに誰を責めるかです(厳密には正しくないのですが細かく言うメリットがあまりないので言いません)。

アグレッション方向は3パターンに分かれており、アグレッションが他者や状況に向かう「他責的」、自分に向かう「自責的」、誰にも向かわない「無責的」の3つに分けられます。

私は説明するときには「ストレスがかかったときに、相手や状況を責めるのが他責、自分を責めるのが自責、誰も責めないのが無責」と説明していました。

解釈としては例えば自責と無責が高く他責が低い場合、相手に対して全然主張ができず、不満をうちにためやすいなどと仮説を立てます。

方向は比較的理解しやすいのですが、型の説明はやや難しいです。

アグレッションの型とは簡単に言うと、ストレスがかかった時にどのように主張するかです。

これも3パターンあり、状況の指摘に重きをおく「障害優位型」、自分や相手自身(自我)を強調する「自我防衛型」、具体的な問題解決を強調する「要求固執型」の3つに分けられます。

実際は各反応を方向と型のそれぞれに分類するので、3×3の9パターンの反応分類となります。

PFスタディを受けられた方へ

この検査は各場面の特性上、対人場面でのストレスや葛藤にどう対処・対応しやすいかを知ることができるものです。

ストレス場面での自分の傾向を理解し、苦しくならない方法を考えるのに役立てることができますので、決して変な検査ではありませんし、病気を診断するものでもありません

結果をもとに助言されても、「わかるんだけどそれはできない…」という人もいるかもしれません。

その時はそれを自分の課題ととらえ、カウンセラーとそのことについて話を深めていけると良いと思います。

(追記)PFスタディ2020年版

(この部分は追記した部分です。)

なんとPFスタディが改定されたようです!

  • 以下サクセスベルのWebサイトからの引用

   「PFスタディ成人用第Ⅲ版」「PFスタディ解説(2020年版)」2020年10月14日新発売!
成人用紙は改訂(再標準化)し第Ⅲ版になり、児童・青年用紙もリニューアルしました。

※画像引用元 サクセスベル(http://www.saccess55.co.jp/kobetu/detail/pf.html)

PFスタディ関連 参考書籍

P-Fスタディ アセスメント要領(秦 一士)

秦先生はPFスタディ界では有名な先生だと思います。よく名前を見ます。この参考書を持っている同僚も多くいました。スコアリングや解釈のサンプルがあり、役に立つと思います。

攻撃行動とP‐Fスタディ(S. ローゼンツァイク )

PFスタディの作者であるローゼンツァイクの書籍です。PFスタディは関連書籍自体が少ないため、作者の書籍は貴重だと思われます。

当ブログには他の検査の記事もありますので良かったらご覧ください。

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  • この記事を書いた人

モトセ

臨床心理士です。最近は不登校支援に力を入れています。お気に入りやtwitterフォローお待ちしています。 noteでは不登校のお子さんに対する具体的な関り方をプログラム形式で書いています➝noteはこちら

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