発達障害

WISCで差が大きいと発達障害なのか?【医師の判断基準3点】

子どもがWISC4という検査を受けて差が大きい、発達障害の傾向があると言われた…。今後どうやって対応していけばいいの?

このような疑問にお答えします。

本記事の内容

  1. WISCで差が大きいと発達障害なのか?
  2. グレーゾーンという言葉の意味
  3. ASD・ADHD特性があるお子さんへの対応方法

 

私は医療機関で年間100件以上の検査結果を解釈してお伝えしています。医師ではありませんので診断はできませんが、結果的にASDやADHDと診断されたお子さんの結果を数多く見ていますし、医師に発達障害の判断基準を直接聞いたこともあります。

では解説していきます。

WISCで差が大きいと発達障害なのか?

結論を言えば、WISCで差が大きいという理由だけで発達障害を診断されることはありません。しかし、発達障害の方に差が大きい方が多いのは事実です。

ちなみに、例えば「言語理解」と「処理速度」の間に20の差がある、30の差がある、50の差があるなど、差の大きさだけで発達障害かどうか判断されることもありません。

先に発達障害について少しだけ説明させてください。前提が共有されていないと今後の解説がうまくできないためです。そもそも発達障害というのはいくつかの疾患名の「総称(グループ名)」であり、発達障害という疾患はありません。発達障害に含まれる疾患はASD(自閉スペクトラム症)ADHD(注意欠如・多動症)限局性学習症(sLD)などです。発達障害を疑って医療機関を受診される方のほとんどがASDかADHDを疑って来られる方です。以下がイメージ図です。

ADHDは「不注意・衝動性」と「多動性」を主な症状としています。落ち着きがない、忘れ物が、すぐに手が出てしまうなどが特徴として挙げられます。ASDは「コミュニケーションや対人関係の持続的な障害」、「限定された行動、興味、活動」、「感覚過敏」を主な症状としています。人の気持ちがわからない、場の空気が読めない、電車や車など特定のことに強いこだわりを持つことなどが特徴です。

医師は発達障害について、主に以下の3点から総合的に判断して診断をします

  1. 幼少期から現在にかけての問題行動のエピソード
  2. お子さん本人と会って関わった印象(行動観察)
  3. 知能検査や性格検査などの心理検査の結果

「エピソード」というのは幼稚園で飛び出しがあったとか、落ち着いて座っていられなかったとか、自分の世界に入っていて友達と遊ばないとか、そういうことです。

「行動観察」は診察室でのコミュニケーションや落ち着きのなさなどです。「心理検査」にはWISC4のような知能検査やADHD-RS、PARS、AQなどADHDやASDに特化した検査などが使われます。

つまり、先天的な発達特性(能力の凸凹:WISC内の差)があるから発達障害ではなく、特性があってかつ日常生活で困っている(日常生活が障害されている)方が発達障害なのです。

とは言え、差が大きかったら能力に凸凹があるんだからやっぱり発達障害では?と思われた方もいるかもしれません。

確かに発達障害の方は凸凹が大きかったり、特定の指標が下がったりする特徴は出やすいです。

また、医療機関を受診したということは困っている行動があるからなわけで、そこでWISCに大きな差があれば発達障害の可能性は高くなるとは言えます。

グレーゾーンという言葉の意味

医師に「ASDのグレーゾーンかな」等と言われた方もいるかもしれません。

ここで言うグレーゾーンとは、発達障害という確定的な診断には至らないけど、発達障害的な特徴は見られる、という状態です。大雑把に言えば、特徴はあるけど程度が軽いということです。

例えばADHDは忘れ物が多いと言われていますが、週に1,2回の人もいれば4,5回の人もいるかもしれません。ASDのコミュニケーションの質的障害も、意思疎通が壊滅的に難しい方もいれば、ちょっと空気読めないくらいの人もいます。

親御さんとしては厄介な話ですが、医師によって程度の判断が異なる場合もあり、グレーゾーンか確定診断かは病院によって違うという場合もあります。発達障害の厳密な診断は難しい場合も多いのです。

ASD・ADHD特性があるお子さんへの対応方法

私が親御さんから聞いた言葉で印象てきだったのは、「確定診断かグレーゾーンか、いずれにせよADHDの特性があるとわかったことで「なんでできないの!?」と怒ることは減りました」という言葉です

お子さんに問題行動がある場合、多くの親御さんは自分の育て方の問題と思ってしまい、苛立ちや自責感を感じ、必要以上にお子さんの行動を訂正しようします。そうなると、子どもへの叱責(お叱り)が増えます。そして子どもは反抗し、さらに言うことを聞かなく…(悪循環)。

もし発達特性であれば、子どもはそれをコントロールすることがかなり難しいです。お子さんとしては「だってだってなんだもん」としか言えないのです。

そういう意味では発達障害の確定診断であれグレーゾーンであれ、育て方が原因ではないとわかることは親御さんのメンタルに大きな意味があります。そして、対応の仕方を学ぶチャンスでもあります。

発達障害はここ何年かで非常に有名になりました。そのため、発達障害のお子さんに対する対応本も数多くあります。私はこれらの本をお子さんの攻略本ですと親御さんに説明することがあります。多くの親御さんは「そうなんだ」と納得してくれます。お子さんの行動でお困りの方は参考にしていただければと思います。

田中先生は非常に有名な先生でこの本はとても分かりやすくてお勧めです。

この本は発達障害(ASD)のお子さん(当事者)が大人になった後に、子どもの時の気持ちを親に教えるという子ども視点がわかる本で大変面白いです。

どちらか1冊でも十分ですが、支援者目線当事者目線の両方を読むと、かなり発達障害に対する理解が深まります。専門家の方にもお勧め致します。

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  • この記事を書いた人

モトセ

臨床心理士です。最近は不登校支援に力を入れています。お気に入りやtwitterフォローお待ちしています。 noteでは不登校のお子さんに対する具体的な関り方をプログラム形式で書いています➝noteはこちら

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