不登校

不登校の親支援プログラム【第4回:許されない行動を叱る+親御さんの価値観をふり返る】

ブログをご覧いただきありがとうございます!

臨床心理士で不登校支援しております、モトセです。

今回は私の考えた「不登校の親支援プログラム」の第4回目です。

「不登校の親支援プログラムってなに?」という方は以下の記事を先に読んでいただけると、今回の内容がより理解しやすくなります。

 

前回までにお子さんの行動を3つに分けること、「好ましい行動」にコンプリメントすること、「子どもの課題である行動」を受け取らないことを説明してきました。

(おさらいの表)

>>子どもの行動3分類表をPDFでダウンロード(クリック)

 

今回は「許されない行動を叱る」ということについて解説していきます。

 

本記事の内容

  1. 「許されない行動」とは?
  2. なぜ叱ることが大切なのか?
  3. 「許されない行動」への対応方法(叱り方)
  4. 家庭内ルールを決めるときのやり方(家族会議)
  5. 許されない行動をるに関するQ&A
  6. 親御さんの価値観をふり返る質問集

※内容は随時加筆修正してるため変わる可能性があります。

 

この章は理解すること自体は難しくなく、むしろ簡単です。ですが、実際にやるのはちょっと気が引ける方が多いかもしれません。

今回のステップは大きく2つです。

本日のステップ

  • 1つ目は「許されない行動」を決める。
  • 2つ目はそれに対して警告し、代わりにしてほしい行動を伝え、それでも行動が変わらない場合にペナルティを与える、です。

 

ちなみに、大事なことなのですが、この許されない行動に当てはまる行動はできるだけ少ない方がいいです。

小学校低学年のお子さんなどはどうしても多くなりがちですが、なるべく少なく抑えた方がよいです。

なぜならば、「叱る」はどうしても親御さんの不安解消という側面がつよいからです。また、その場では言うことを聞かせることができるのですが、持続しないということも理由の1つです。

 

ではまず、「許されない行動」とは何でしょうか?

今回もワークから始めていきましょう。

ワーク1:許されない行動とは何か?(みなさんで考えてシェアしてみましょう)

 

①「許されない行動」とは?

私は大きく2つに分けて考えるとよいと思っています。

①家庭のルール違反(家庭内ルール) 

親の価値観による独自の家庭内ルール全般のことです。

例:スマホの制限時間、門限の時間、食事の時間など。

 

社会のルール違反(家庭内ルール) 

社会通念上やってはいけないこと全般のことです。

例:暴力、死ね・殺すなどの暴言、犯罪(になりそうなこと)など。

 

ちなみにある本では、叱ることについて次のように書かれています。

叱ることは「ライン」を引くことです。叱ることには「ルール」や「マナー」をはっきりさせるという機能があります。

引用元:『「ほめる」ポイント 「叱る」ルール 「認める」心得』

 

「これはいかんよ」というラインを引くことが大切なんですね。

 

②なぜ叱ることが大切なのか?

1つ目:大人になるためのリハーサル

社会人になったら失敗して上司に怒られることもありますよね。1回や2回怒られただけで会社を休むようになってしまうと、仕事が続かずに困ることになりますよね。

そのために多少は「しかられ慣れること」も必要なので、子どもが許されない行動をした場合には毅然と叱ることも必要、という考え方です。

 

つ目:お子さんに気を遣わない

前回(子どもの課題である行動を受け取らない)もお伝えしましたが、不登校のお子さん「ははれ物扱い(特別扱い)されること」を特に嫌います。

お子さんが許されない行動をしたときに親御さんが「悲しい顔でため息を吐くだけ」とか、「なんであなたはそうなの!!!!」と感情的に怒るでは親子が互いに気まずいですよね。

そうであれば、お子さんが「そりゃ叱られるよな」と感じられる、一般的な「叱り」で対応するのがよいでしょう。

 

私の体験談

私も中学生くらいのときに、反抗期がありましたが、親に心ないひどい言葉を言って後悔したことがあります。

そういう時に親から何も言われないと、それはそれで気まずいものでした。ちゃんと謝ればまた日常にもどれるのに、何日間も引きずってぎくしゃくする、なんてことを回避するためにも、叱ることは役に立ちます。

 

③「許されない行動」への対応方法(叱り方)

対応(叱り方)はシンプルです。

声のトーンは一定にして真顔で叱り、して欲しいことを子どもに伝える、です。

感情的に「怒る」と、その時はお子さんが言うことを聞くかもしれませんが、長続きしません。また、怒られたという事実に対してお子さんが強く反応して、不必要な反抗を引き出すことが多いので、控えた方がいいです。

 

親御さんの態度が大切

叱るで重要なのはこの「親の態度」になります。

具体的には、

  • 真顔で(表情を消して)
  • 声のトーンは一定程度で
  • 目を見て、必要なことだけを言う

のがよいと思います。なぜなら、真剣さが伝わるからです。

「表情がない」って怖さを演出しますよね。真顔の怖さを活用しましょう。

 

参考:怒ると叱るの違いとは?

『「ほめる」ポイント 「叱る」ルール 「認める」心得』の著者である南先生は「叱る」と「怒る」の違いについて以下のように言っています。

怒るは、怒るそのものがゴール。

叱るは、あとでほめることがゴール。

引用元:『「ほめる」ポイント 「叱る」ルール 「認める」心得』

これはかなり説得力ありますよね。

 

叱るの具体例

では、具体例を見ていきましょう。

 

●子どもが、親に「死ね」と言った。

親:人に死ねと言ってはいけません(叱り・警告)。言われた相手が傷つくからです(理由)。謝りなさい。
子ども:だって
親:謝りなさい。
子ども:だってさ…
親:謝りなさい。

 

●決められたゲームの時間を過ぎてもやめない

親:ゲームの時間が過ぎてるよ。過ぎたら明日はできないルールだったね(警告)
子ども:うーん(やり続ける。もし止めたらコンプリメントする)
親:過ぎたね。約束だから、明日はできないよ(ペナルティ)。
子ども:いやだよ
親:できないよ。
子ども:絶対ヤダ。
親:できません。
子ども:なんで!?
親:あなたと一緒に決めたルールだからです。
子ども:やだ
親:できません。

理由を添えると説得力が高まります。

なお、叱るときに重要なのは、叱り始めたら親は折れないこと、終わったら水に流すこと、です。

 

ペナルティはどうする?

ペアトレで言われているペナルティの目安としては以下です。

  • 子どもにとって意味があり、大切なこと。
  • 親がコントロールでき、心おきなく取り上げることができるもの。
  • 短時間であること。
  • 問題行動と結びついているほうがよい。
  • 体罰は厳禁。

上記のゲームの例では「次の日は使えない」でしたね。

ペナルティは躊躇なく、毅然と実行することが大切です。言い逃れたら許してもらえることを子どもが学ぶと、要求がエスカレートするからです。

例でも使いましたが、毅然とした雰囲気を出す工夫として、「ブロークンレコードテクニック」というものがあります。

 

ブロークンレコードテクニック

これは壊れたレコードプレイヤーが同じ部分を何度も繰り返し再生してしまう、という現象から名付けられたもので、同じことを繰り返し言うだけ、というテクニックと言えるのかもわからないやり方です。

本家のペアトレでもブロークンレコードは使います。

子どもの課題を受け取らないときにも使えますよ!

 

④家庭内ルールを決めるときのやり方(家族会議)

親の価値観による家庭内ルールに基づいた「叱る」では、突然叱ると、子どもから見て「そんなルールなかったじゃん」と戸惑うことがあります。

そのため、事前にルール決めの話し合いである「家族会議」をしておくことが決定的に重要になります。

 

次にこういうことをしたら叱ります、それでも変わらなければこういうペナルティがあります。

などと事前に伝える機会を作る、ということです。

 

家庭内ルールの一例

  • 門限は何時である
  • 親がいない時間は友達を家によばない
  • 食事中にテレビを見ない など

 

細かいルールを決めすぎて親の価値観の押し付けにならないように注意しましょう。

もちろん、一度決めたらずっと同じではなく、学年が変わるなどの節目で変えていくことも大切です。

 

ではどのように話し合うのが良いのか紹介します。

 

家族会議の鉄則

結論から言えば、家族会議で重要なのは、改まった空気感を出した話し合いにすること。

日々の生活のなかで、母親が「話の流れ」でなんとなく「門限は何時ね」など伝えるのでは、子どもはやぶってもまぁ大丈夫かなと、危機感を感じないかもしれません。

「まぁやぶっても許してくれるでしょ」と思わせては効果がないのです。

具体的には父と母の両方がいる場で「これから家族会議します」と宣言して、「いつもと違うちゃんとした話し合いですよ」という雰囲気をつくったうえでルールを決めましょう。

一方的に「明日からこうします」などと伝えるとお子さんも反発しますので、お子さんの意見も聞いたうえでルールを決めることも大切です。

聞くときは傾聴のテクニックが役に立つはずですよ。

 

ワーク2:「許されない行動」と対応を考える

では、「許されない行動」の枠に当てはまるお子さんの行動を書いて対応を考えてみましょう(現状許されない行動がない場合は空欄でいいです。許されない行動がありすぎる場合はなるべく最小限に抑えて「ここだけは」という行動を書いてみてください。

(本番ではロールプレイ)

 

この章はこれで終わりです。

正直なはなし、私は「しかる」をあまり重視していないので、さらっとおわります。

 

【今回のホームワーク】

今回は実際に叱らなくても良いので、そこに分類される行動を見つけて書いてくることを宿題にします。次回シェアして、多すぎないかチェックしていきましょう!

 

⑤許されない行動をるに関するQ&A

Q・子どもが暴れる場合はどうしたらいいですか?

叱る内容にもよります。親があまりにもささいなことで叱っていると、子どもも耐えられない場合がありますので、まずは「許されない行動」が多すぎないか検討してみましょう。

明らかに「許されない行動」を叱っても暴れる場合は、まずは「好ましい行動」と「子どもの課題である行動」への対応を地道に行い、親子のコミュニケーションをととのえましょう。そして、父親を含めて、家族でのルール決めをしっかり行うのがよいです。また、ルールを決めたら家族全員がそれを守ることも大切です。

 

⑥親御さんの価値観をふり返る質問集

ここまでで本プログラムの最も重要な「行動の3分類と対応」はおしまいです。お疲れさまでした。

いかがでしょう、親子のコミュニケーションに変化がでてきましたでしょうか?

うまくいかないこともあると思いますが、ご自身のペースで大丈夫。少しの変化がやがて大きな変化につながります。お子さんの成長がみられると、親御さんのストレスも和らいできますよ。

これまでの内容が本プログラムの中心なので、ぜひ何度もブログ記事を読み返して試行錯誤していっていただけたらと思います。

さて、これまでは「不登校のお子さんへの対応方法」である「方法」について色々と解説してきましたが、私は親御さんの「気もち」や「価値観」も同時に大切だと思っています

そこで、価値観をふり返る質問集、というものを用意いたしました.

もし皆さんのメンタルに余裕があれば、以下の質問に対する回答をノートか何かに書いていただいて、お子さんや家族とどう向き合っていきたいのかを確認する場になればと思っています。

 

親御さんの価値観をふりかえる質問集

  1. 将来、お子さんにどんな風に育ってほしいですか? 何を望んでいますか?
  2. もし自分が不登校だったら、(自分が子どもにできるかどうかは別として)どんな風に接して欲しいですか? それはなぜですか?
  3. 皆さんにとって理想の家庭とはどんな家庭ですか?
  4. 今一番の不安は何ですか?
  5. 今どんな我慢をしていますか? その我慢は本当に必要ですか?
  6. お子さんを癒す前に自分を癒せていますか?
  7. 自分のためにエネルギーをつかえていますか?(趣味、お稽古、仕事、ボランティアなど)
  8. 家庭で自然体でラクにありのままの自分でいれてますか?
  9. もし本音を言えるとしたら、誰にどんなことを言いたいですか?
  10. 子育てに関する罪悪感を感じていませんか?
  11. 配偶者はどれくらい不登校について理解していますか? 配偶者にわかって欲しいことはなんですか?

 

実際にグループで行うプログラムでは好きな番号を選んでざっくばらんに話し合うようなかたちにできればと思っています。

自分に問い直すことで気づきが生まれ、気づきが行動につながるかもしれません。

 

今回も読んでいただきありがとうございました!

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  • この記事を書いた人

モトセ

臨床心理士です。最近は不登校支援に力を入れています。2022年4月にブログをリニューアルしました。お気に入りやtwitterフォローお待ちしています。

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