不登校

不登校の親支援プログラム【第2回:好ましい行動にコンプリメント】

ブログをご覧いただきありがとうございます!

臨床心理士で不登校支援しております、モトセです。

今回は私の考えた「不登校の親支援プログラム」の第2回目です。

まだ読まれていない方は先に第1回目の記事を読んでいただけると、今回の記事の位置づけや内容がより理解しやすくなります。

 

前回はプログラムの概要と子どもの行動を3つに分けることを解説いたしました。

おさらいすると、行動の3分類は以下です。

  1. 「好ましい行動」
  2. 「子どもの課題となる行動」
  3. 「許されない行動」

とても大切なので表も確認しましょう!

>>子どもの行動3分類表をPDFでダウンロード(クリック)

では今回は好ましい行動にコンプリメントする、をやっていきましょう!

 

本記事の内容

  1. 子どもの「好ましい行動」とは?
  2. 具体的なコンプリメントの方法
  3. コンプリメントに関するQ&A

※内容は随時加筆修正してるため変わる可能性があります。

好ましい行動とは?

最初に、皆さんはお子さんの好ましい行動って何だと思いますか?

では、少し考えて紙に書いてみてください。

 

シンキングターイム!

 

想定される答え

  • お手伝いをしてくれる。
  • 兄弟の世話をしてくれる
  • 挨拶をちゃんとする
  • やさしい。
  • ない。ずーっとゲームやってる。

みなさん思いついたでしょうか?

もしここで、優しいとか、まじめとか、そういう抽象的なことを思いついた方は「お子さんが何をしたときに、お子さんが優しいことに自分が気づいたか」を考えてみてください。

そうすることで、ターゲットとなる「行動」が明確になります。

思いつかない方はまずは1週間、お子さんの行動を観察してみてください。何も言わず、とりあえず観察して、朝起きてから1日が終わるまでの行動を時系列で書いてみるのです。

最初はハードルを下げて大丈夫です。「こんなことでもいいの?」と思ってとりあえずメモしておくことをおすすめします。

本家のペアトレでは「25%ルール」と言って、100%の理想ではないけど、25%くらいできている行動でほめていくことを勧めています。

 

(いったんシェアする)

 

では、好ましい行動が見つかったと仮定して、お子さんの好ましい行動に対してどうほめるか少しイメージをふくらませてみましょう。

以下のほめ方のうち、言われて嬉しい(自分に自信が持てるようになる)のはどっちだと思いますか?

子どもの行動:自分でお皿をシンクに入れた

①すごいね。えらいね。
②いつもありがとう。助かるわ(母は満面の笑顔)。

この場合②の方が嬉しいかなと思います。

①だと「すごいか?」とか、「えらいっていうかあなたがやれって言ったんじゃん?」と子どもが思いそうです。

何が言いたいかというと、かける言葉と親の態度でコンプリメントの効果が変わるということです。

 

では次に、次の例はどうでしょうか。

子どもの行動:夕飯を一緒に食べた

①すごいね。
②食べてくれてありがとう。

これは①か②かという以前に、「ご飯を食べてくれたこと」に対してほめるかどうかという問題ですね。

いつも一緒に食べているなら「当たり前のことしただけじゃない?」と子どもが思う可能性が高いです。たまに改まって「いつもご飯一緒に食べれてお母さん嬉しいんだ」と言う分には、子どもとしても「そうなんだ」と思うかもしれないので、いいかもしれません。

もし仮に、「いつも部屋に引きこもっていた子がリビングに来て一緒に食べた」なら②もありますね。このように好ましい行動というのはお子さんによって多少変わります。

年齢や性別、これまでの生活状況が違えば、好ましい行動が違うのは当然のことです。他の家庭と比べる必要はありません!

 

私は別の記事で、「好ましい行動」の基準を3つほど書いています。

①本人なりの努力でものごとが前進したとき(過去と比較して前進した)
例:勉強でできなかった問題ができるようになった。ゲームで次のステージに進んだ。

②子どもが様々な活動に活き活きと取り組んでいるとき(何かしら挑戦してみた)
例:自発的に工作を始めた。野球の試合を解説してくれる。ジャニーズの魅力を語ってくれる。

③子どもの行動で親が助かったとき
例:家事をしてくれた、犬の散歩を手伝ってくれた。

 

ではもう一度、皆さんの書いたお子さんの好ましい行動を見直して、そして頑張って思い出して追加してみましょう!

(表に書き込む)

次に、ほめ方の具体的な方法をいくつか紹介します。

一度に全て使う必要はなく、使えそうなものに挑戦してみるくらいの気持ちでやってみましょう!

具体的なコンプリメントの方法

6つほど紹介します。

  1. (大前提)過程9割、結果1割の比率でほめる
  2. こだわった、頑張った、難しかったところを聞く
  3. その行動ができた理由を、驚きをもって聞く
  4. 本人の能力に帰属してコメントする
  5. 親自身が喜んでいることを伝える
  6. 間接的にほめる

 

①★過程9割、結果1割の比率でほめる

子どもの行動の結果より、努力や過程(プロセス)についてコメントしてあげるということです。これが一番重要なので意識してやってみて欲しいです。

子どもからすると「自分のことをそんなに見てくれてたんだ」と嬉しいですし、親はちゃんと自分を見てくれているという安心感につながります。

また、結果に自信があれば、結果をほめられてもうれしいのですが、結果ばかり褒められていると、「ちゃんと結果をださないと親ががっかりしちゃう」という風に考えてしまうかもしれないですよね。


具体例:子どもが何かを作っていた時に

すごい真剣に作ってたよね

などです。

例えば「上手くできたね」と結果をほめるのと、皆さんだったらどっちが嬉しいですか?

結果はほめてもいいのですが、1割くらいの注目で、9割は本人の努力の過程行動の過程に注目して肯定的に注目してあげることで自信がつくと思います。

 

②こだわった、頑張った、難しかったところを聞く

これは質問の体でほめるという高等技術です。

例:何かを作っていた時に

すごい!これ作るときに、どこが難しかった?
んー、ここかな。細かいし。
そっか、確かに難しそう!頑張ったんだね!

などです。

以下の質問も、本人がエネルギーをそそいだところはどこですか?という質問であり、おすすめです。

  • 「どこにこだわったの?」
  • 「どこに力いれたの?」
  • 「どこが一番時間かかった?」

本人はこういった質問をされること自体が嬉しいですし、質問に答えることで、頑張った部分をアピールできるのです。

お母さんも旦那から「この料理おいしいね。すごいね」と言われるよりも、「この料理おいしいね。どこにこだわったの?」と言われる方が「よくぞ聞いてくれました!」となりませんか?

大した工夫をしてなかったとしても、旦那さんから「俺は料理のことあまりわからないけど、これも手間とかかかるんでしょ?」とか言われたら「切れ込みとか入れているかな」とか、多少の工夫を答えたくなりませんか?

そのうえで旦那さんから、「やっぱ手間かかるんだね。ありがとう」とか言われたら嬉しくないですか?

質問攻めしてすみません!

お子さんの行動にもこのように興味をもって質問してあげると、お子さんなりの頑張ったところがわかり、それを認められることで自信につながります。

 

③その行動ができた理由を、驚きをもって聞く

これも質問の体でほめるという高等技術です。

例:何かを作っていた時に

なんでそんなことできるの?!
なんでこんなふうに作れるの?!

などです。

お母さんの料理に例えると、旦那から「なんでこれはこんなにおいしいの?」と言われるようなものです。質問されるだけで褒められているのと同じ、ということです。

 

④本人の能力に帰属してコメントする

これは本人の有能感を上げることに役立つほめ方です。

例:何かを作っていた時に

○○(子どもの名前)は手先が器用だね

手先が器用というのは本人の能力の話しですよね。集中力があるよね、とか、「○○には~~する力がある」という言い方をすると、自信につなげることができます。

ただし注意点もあります。それは、「○○は天才だよね」「○○は何でもできるよね」とか、抽象的な言い方はしないということです。

理由は、「ほめる」というよりは「おだてる」ことになるからです。これを続けると、お子さんが「自分はできる人間だ」「勉強をする必要もない」などと考えるようになり、プライドばかり高くなってしまう可能性があります。

 

コンプリメントは「子どもの具体的な行動」という事実に基づいた言葉がけをしていくことが大切です。

 

⑤親自身が喜んでいることを伝える

文字通り親自身が喜んでいることを伝えることでほめていく方法です。

例:自分でお皿をシンクに入れた

いつもありがとう。助かるわ(笑顔)

これは先ほどの例で出てきましたね。

お母さん自身が、「嬉しい」「助かる」「ありがたい」「好き」など、気持ちを伝えてあげるということです。

言うまでもないですが、非言語メッセージが重要です。表情、声のトーン、身体の向きなどもどうしたら効果的か考えながらやるとよいかと思います。

⑥間接的にほめる

次に超強力なほめ方である「間接的」にコンプリメントするという方法を紹介します。

間接的にというのは、父や祖母など、誰か別の人を介したほめ方のことです

例1:子どもがいる場面で父に向って以下のように言う。

今日○○が~~してくれて私嬉しかったんだ

これは、母が父に子どものよいところを伝える場面を「子どもに見せる」というやり方です。

お父さんのリアクションも重要で、「そうか、それはすごいな」などとのっかるか、何を言えばいいかわからないときは「そうかそうか」とほほ笑んでいるだけでも良いと思います。

お父さんが「そんなのすごくねぇよ」「いや当たり前だろ」などと言いそうな場合には、お母さんが事前に良い感じにリアクションしてねと頼んでおいてください。

 

例2:子どもに向かって以下のように言う。

そういえば、お父さんが「○○が~~しててすごいな」って言ってたよ

これは、誰かがほめてたよと子どもに「伝言」することです。

子どもからみると否定ができないので、かなり強力です。

 

例3:夫に子どものほめたい行動を伝え、夫から「お母さんから聞いたんだけど、すごい集中して作っていたんだってな」と伝えてもらう。

これも「伝言」ですね。「お母さんすごく嬉しそうだったぞ」と伝えてもらうとなお効くかと思います。

 

コンプリメントが効いているか確かめるには?

コンプリメントが子どもに入っているか(効いているか)を知るには、お子さんのリアクションを観察するしかありません。

まんざらでもない顔をしていれば入っているでしょう。思春期であったり、もともとの関係があまり良くない場合は「なにいきなり?、気持ちわる」などと言われることもあるかもしれません。

ひねくれたお子さんであれば「そう言えば学校に行くと思ってるの?」と言われることも覚悟しましょう。

そういう時は、「本当にそう思っただけだよ」とさらっと言えばいいかと思います。

 

コンプリメントの方法いかがでしたでしょうか。あくまでも例なので、色々とアレンジして使っていただけると幸いです。

最後に大切な補足です。

それは、コンプリメントするときは、親御さんが心からよい(少しでもよい)と思ったお子さんの行動に対してコメントする、ということです。

なぜなら、1ミリも思っていないことを言うと、子どもは見抜くからです。

25%ルールでハードルを下げるのはよいですが、嘘をついては逆効果です。

思いつかないときはまず観察、あせらずいきましょう!

では、実際にお子さんの好ましい行動とどうやってほめるかを書き出してみましょう!

 

ワーク:お子さんの行動にどうやってコンプリメントするかを書いてみる。

(みんなでシェア)

 

ここまで記事をご覧いただきありがとうざいました。

 

今回の宿題は、コンプリメントの記録をつける、です。

1日のなかで最低3つ、お子さんの好ましい行動とそれに対するコンプリメントを記録してください。

最初の1週間は実際にお子さんに言わなくても良いです(「こうやって伝えたらどうかな」というアイデアのメモとして、記録をしてみてください)。

その後はぜひ実際にやってみてください。記録表を用意したので使ってみてくださいね!

>>コンプリメント記録表をPDFでダウンロード(クリック)

※感想というのは、親がコンプリメントしてみた感想を書く、という意味です。目標のところには「過程をほめるを意識する」など、取り組みたいことを書いてみてください。

コンプリメントに関するQ&A

最後の最後にコンプリメントについてのよくある質問に回答して終わります。

Q・コンプリメントはずっとやらないといけないの?

基本は続けていくのがよいです。

理由は、親子のコミュニケーションの良循環をキープしたいからです。

ですが、たとえば習慣化してできるようになったことを毎回コンプリメントすることはしなくてもいいかなと思います。

例えばゲームの時間を1日何時間と決めて守れたとして、それが習慣化でききたら毎回ほめるというよりは、時々「ここ●週間時間守れてるね。頑張ってて嬉しいよ」と言うくらいでもいいと思います。アフターフォローみたいな感じですかね。

なんならお子さんがゲームしていないときに、「まだ時間あるけどゲームしないの?」「日曜は自由なんだからもっとやりなよ」などと逆説的な言葉がけも、いつもと違う刺激になるのでいいと思います。

Q・どうしてもおだててしまいます…

「えらい」「いい子」「天才」などの言葉が出るということは、親御さんがお子さんのよい行動を見つけようとする姿勢がある証拠です。個人的にはその心意気、めちゃ素晴らしいとおもいます。

それら言葉にはお子さんに対する肯定的な思いがたくさん含まれているのだと思います。その気持ちを大切にしつつ、もう1歩進むために、「行動に着目したコンプリメント」を意識してみる、と考えて欲しいのです。

抽象的なほめ言葉はお子さんからするとどこをほめられたのか分かりづらかったり、自分は努力しなくてもいいという変な自信や万能感をもつことにつながります。要するに天狗になってしまう感じですね。

Q・コンプリメントしても反応がうすいのですが、効いてないのでしょうか?

心の中では嬉しいかもしれません。

基本的に日本人は謙遜文化ですし、ほめられ慣れていないとどうリアクションしたらよいかわからないこともあります。

もちろん、親御さんの嬉しい気持ちが伝わっていない、ということも考えられまして、親の伝え方が嬉しそうじゃないとか、ほめているつもりで皮肉になっていたとか、「次からもそうしてね」など耳が痛い追い打ちをしていないとかをチェックしていくとよいかもです。

Q・コンプリメントするのが恥ずかしいです。

実は私は基本のテンションが低いほうでして、お子さんとのカウンセリングでテンション上げてコンプリメントするのは苦手でした。

ですが、結論、やっているとなれます。

私が受けたペアトレの講習会では「まずは俳優になったつもりで伝えてみてください」と言ってました。私もカウンセリングで自分の言葉がうわ滑ってないか心配になることもありますが、「これが私のやり方なんです!」となかば開き直っています。

 

次回の第3回目では、「子どもの課題を受け取らない」について解説します。

読んでいただきありがとうございました!

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  • この記事を書いた人

モトセ

臨床心理士です。最近は不登校支援に力を入れています。2022年4月にブログをリニューアルしました。お気に入りやtwitterフォローお待ちしています。

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