
こういった疑問にお答えします。
本記事の内容
- 不登校の親支援プログラムとは?
- プログラムの内容(第2回~第6回)
- 子どもはなぜ不登校になるのか?(本プログラムの根拠)
- 子どもの特徴を大まかに知っておく
※内容は随時加筆修正してるため変わる可能性があります。
記事の信頼性
作者:モトセ
資格:臨床心理士、公認心理師
モトセの職歴
- 精神科・児童精神科クリニック
- 県のスクールカウンセラー
- 公官庁の組織内心理職
- オンラインカウンセラー
こんな私が説明していきます。
ではさっそく内容にいってみましょう!
不登校の親支援プログラムとは?
プログラムの目的
このプログラムの目的は何かというと、子どもが登校する・しないに関わらず、保護者の皆様のストレスを少しでも減らすことです。
こういわれるとがっくり来てしまう方も多いと思いますが、このプログラムはお子さんを再登校させることを目的としていません。
プログラムで学んだことを実行することで、結果的に再登校を始めるかもしれませんが、それ自体は目的ではありません。
なぜなら、お子さんたちが学校に行くかは、わからないですし、学校に行き始めたとしても、「今度はいつ行かなくなってしまうんだろう」、「いつまた不登校になってしまうんだろう」という不安が出てくると思います。
保護者の方にとって、子どもが日常的に家にいる生活というのは、時に相当なストレスを感じることだと思います。
私がなぜそう思ったかというと、実際に保護者の方と面接(カウンセリングのことです)をしていて、暗い顔をされている方が多いからです。
また、twitterを見ていて、お子さんに対する不満やお子さんとの生活のつらさ、将来への不安に関するつぶやきがたくさんあることを知りました。
Twitterに投稿されている方の多くはただ気持ちを吐き出したいのかもしれませんが、中には状況を変化させる「方法」を知りたい方もいるのではないかと思いました。
もしくは方法は調べたけどうまく実行できないとか、どの方法がよいのかわからず迷っている方もいるかもしれません。書籍やブログ記事などたくさんありますので、無理はないかと思います。
子どもが学校に行くかどうか、行った方が良いのか悪いのか、それは不確定な部分が多いですが、親御さんのストレスを少しでも減らすお手伝いは、私にもできると思ったので、このプログラムを考えました。ながくなりましたが、目的は以上です。
コラム
ここからは価値観の話になりますが、私はお子さんが学校に行くことが、その子にとって必ずしも幸せだとは思っていません。
もちろん、登校することで学力がついたり、社会性が身についたり、思い出ができるのは事実です。ただ、それが子どもにとって幸せなことであるかは、子どもが大人にならないとわからないと私は思っています。
登校しないことで得られた体験が、その子の人生を決定づけることもあるでしょう。これは価値観の話なので、皆さんに押し付けるつもりもありません。
再登校した方が間違いなく子どものためになる、という考えで支援している人もいます。再登校支援サービスはその一例だと言えるでしょう。そういう意味では私のスタンスは中途半端に見えるかもしれません。
このプログラムの内容
では次にプログラムの内容に入ります。
このプログラムの中心は、親が子どもの行動を3つに分けて、それに対する対応を身につける、ということです。
この行動を3つに分けるという考え方は、主に発達障害児に用いられる「ペアレントトレーニング」(ペアトレ)を参考にしています。
余談ですが、このプログラムは、不登校支援とペアレントトレーニングを合体させたものです。
最初は「不登校の親のためのペアレントトレーニング」という名前にしようと思ったのですが、トレーニングっていうのもなんか違うなと思ったので、今の名前にしました。
話を戻して、ペアトレでは子どもの行動を、「好ましい行動」、「好ましくない行動」、「許されない行動」の3つに分けてそれぞれ、「ほめる」、「無視する」、「警告のうえでペナルティを与える」、という方法をとります。
- 「好ましい行動」➝「ほめる」
- 「好ましくない行動」➝「無視する」
- 「許されない行動」➝「警告のうえでペナルティを与える」
ペアトレを不登校支援にそのまま流用することが難しかったので、私は、「好ましい行動」、「子どもの課題である行動」、「許されない行動」の3つにわけました。
本来のペアトレよりも分け方の基準が曖昧なので厳密に分けるというよりは、この行動にはこうやって対処してみようかなと保護者の方が考えられるようになることが目標です。
表を添付するので、イメージをつかんでいただけると幸いです。
なお、このプログラムで使用する心理学的な技法や概念としては、ペアレントトレーニング、家族療法・ブリーフセラピー、認知行動療法、アドラー心理学、再登校支援、モデリング、傾聴、アサーションなどがあります。
1.好ましい行動にコンプリメントをする(第2回目の内容)
最初にお子さんの「好ましい行動」をほめる・認める対応であるコンプリメントを学んでいきます。
コンプリメントのイメージとしては、子どもが自分に自信をもてるようになるような言葉を選んで伝えていく感じです。
これを学ぶ理由は、心のエネルギーをためるためです。
余談ですが、このプログラムは本家のペアトレと同様に「積み上げ式」です。
どういうことかというと、ほめることが定着してきてから、「子どもの課題である行動」への対応を行っていきます(コンプリメントを実践しつつ、以降の章を学んで実行いくイメージです)。
具体的にどうほめるのが良いか、概要をお伝えすると、結果よりはプロセスを認めること、子どもの能力に帰属することなどがあります。
もしも、ほめることが難しいくらい親子関係が破綻している場合は、先に親からの干渉を減らすなど、個別に考えていかないといけないこともあります。
その他の工夫として、子どもが親のコンプリメントを否定してきたときの対応を学んだりします。
ほめることの習慣化を助けるために、コンプリメントしたことを記録するワークも行います。ホームワークは本家ペアトレでも行うことです。
2.子どもの課題である行動は受け取らない(第3回目の内容)
次に「課題の分離」という考え方と「子どもの課題」に対する対応を学びます。親を困らせる子どもの行動への対応はここに入ります。
例えば子どもの無理な要求、親にやって欲しいことを子どもが匂わせてきたとき、自分でできることを頼んできたとき、などです。
これをする理由は、子どもの社会性を高め、自立して生きていく力を身につけてもらうためです。
本家のペアトレでは「好ましくない行動」は無視(好ましい行動が出るまで待つ)ですが、不登校のお子さんに関しては無視だけでは社会性を育てることが難しいので、対応内容も複数になっています。
基本的なスタンスは「親が子どもの課題を受け取らないこと」です。よって、子どもの要求に対して助言や提案を控える対応をとります。
具体的には助言や提案なしで話を聞いて気持ちを伝え返す「傾聴」、任せる・ゆだねる、聞こえていないふりをする、断るなどが入ります。
他の内容としては、毅然とした態度を演出するためのブロークンレコードテクニックや、親が子どもの課題を受け取らないことによる子どもの不満への対応方法なども学びます。
これができるようになると、親御さんの子どもへの干渉が減り、子どもの成長が加速しますし、お子さんの反発という親御さんのストレスになる要因が減ります。
3.許されない行動を叱る(第4回目の内容)
次に「許されない行動」についての対応を学びます。
「そんなことは学ばずともやってます」という家庭も多いでしょうが、一応、感情的に怒るではなく、「しかる」ということをおさらいする感覚です。
許されない行動をしかる理由は、大人になるためのリハーサルだと思ってください。
社会人になったら失敗して上司に怒られることもありますよね。
1回や2回怒られただけで会社を休むようになってしまうと、仕事が続かずに困ることになりますよね。そのために多少は「しかられ慣れること」も必要なので、子どもが許されない行動をした場合には毅然と叱ることも必要、という考え方です。
また、子どもがあきらかに良くない行動をしからなかったときに、「見守った方が良いって言うから見守ったけど、これでいいのかな…」と悩むこともあるのではないでしょうか?
不登校とはいえ、子育てをするうえで叱ることは必要なことがあると私は思います。お子さんに気を遣わない、というのもポイントです。
もちろん、この「許されない行動」は少ないに越したことはないですし、ペナルティに関しては最初から実施するのではなく、警告したり、こうしなさいと指示・命令したり、それでも子どもの行動が変わらないときに実施します。
4.行動範囲を広げるー行動活性化(第5回目の内容)
ここまでで日常的なコミュニケーションはかなり変わり、親御さんのストレスは減っていくと思います。
コミュニケーションの架け橋がとれたら、子どものエネルギーがたまってきます。
エネルギーがたまると、ぶっちゃけた話し、子どもが家にいることを「暇だ」と感じるようになります。「家にいることに飽きる」と言ってもいいかもしれません。
そのような兆候が出てきたら、子どもの行動の幅を広げることをしていきます。専門的には「行動活性化」と呼びます。
なぜこれをするかと言うと、色々あるのですが、主には子どもの行動範囲が広がって新しい経験を積むと、社会性も伸びますし、自信もつくからです。行動範囲が広がったその先に学校やアルバイトがあるようなイメージです。
では、ここで親が何をするかというと、子どもが家で寝ていたり座っていたりする時間を減らす、ということです。
具体的には「好きなこと」や「好きなもの」などを足掛かりに、買い物、ショーやライブなどのイベント、運動、カラオケ、ボーリング、図書館、釣り、DIY、料理、畑仕事、家の手伝い、温泉、オタク活動(アニメイトに行くなど)、推し活(アイドルの握手会に行くなど)、など、外に出るのであれば何でもいいので促していきます。
具体的には、どうやって子どもに提案するかを学んでいきます。
直接「~~しない?」と提案しても断られることも多いので、別の方法を説明します。
5.スマホやゲームに対応する:家庭のルールを決める(第6回目の内容)
次に不登校で問題になるスマホやゲームといった電子機器の制限について考えていきます。
私の考えとしては、スマホやゲームの使用時間などのルールは親が決めて子どもに守らせる方がよい、です。

という親御さんも多いかもしれませんが、プログラムをこなしてコミュニケーションパターンが改善されていれば、電子機器の制限をかけるベースとなる親子関係はできているはずです。
制限をする理由は、不登校に関係なく一般的な家庭でもルールを設けることは子どもの脳の成長にとって大切だからです。
やはり電子機器は中毒性が高く、生活リズムの不安定化などさまざまな悪影響があります。大人でも寝る前にyoutubeを観すぎて寝不足、なんてこともありますよね?(私だけでしょうか?…)。
理想を言えば、スマホを与えるタイミングで「スマホは親が子どもに貸しているもの」であることを伝え、スマホ利用とペナルティのルールを設定することが重要ですが、「すでに渡してしまっていて野放しです」という家庭も多いかと思うので、この章ではそういうケースについてどうすればよいかお伝えしていきます。
補足としては、家で好きなことをしてエネルギーためることが最優先されるようなケース(抑うつが強いなど)では制限しない方がよい場合もあるので、お子さんの状態に合わせてきめていく必要はあります。
学校について話す:登校刺激(オプション)
これは絶対に必要というわけではないのですが、上記のプログラムを実施していくと、お子さんの内面も育ち、このままでいいのだろうか、という気持ちが芽生えることがあります。
お子さんからそういったサイン(「自分は学校行った方がいいのかな?」と言った発言など)が出てきたら、タイミングを見計らって親子で学校について話す機会をつくると腹を割った話し合いができることがあります。
子どもからのサインがなくとも、中学校2年から3年にあがるときや、志望校を決めるときなど話し合わざるを得ないときもありますよね。
まとめ
このように、このプログラムでは第1回目の今回と、他5回の全6回の内容で行っていきます。
補足なのですが、本家のペアトレと同様に、当プログラムは数名のグループで行うことを想定しています。
講師である私と、受講者は複数名の保護者、ということです。
このグループの力というのはとても大きいです。
不登校の親御さんの気もちはなかなか理解されないことも多く、同じ境遇の人と意見を交換したり、愚痴を言い合うことは親御さんのメンタルを支えるうえで大切だと思っています。
もしかしたら、他の人がやってうまくいったイケてる対応をパクれますし、失敗談からそれを避けることができます。
他の人も同じようなことで困っているとわかるとほっとすることもあるでしょう。参加者同士ときに助け合い励ましながらプログラムをすすめる予定です(本家のペアトレも基本はグループです)。
今のところグループは準備中ですが、開催できるときはtwitterなどでお知らせしますので、ぜひフォローしてみてください。
今回のホームワーク
今日のホームワークは「子どもの行動を3つに分類する」です。
表を印刷して、「好ましい行動」「子どもの課題である行動」「許されない行動」に当てはまると思われるお子さんの行動を記入してみてください。
どんな行動が当てはまるかは次回以降に詳しく解説していきますので、正しい・間違っているは気にしなくていいですよ!
最後に
最後にこのプログラムの限界についてお話しします。
このプログラムは万能ではありません。家庭の状況によっては当プログラムどおりにお子さんに対応しても改善が難しく、保護者の方のストレス軽減が難しいこともあると思います。
また、不登校になりかけの時期と不登校で安定したあとの対応は少しかわってきまして、このプログラムは不登校で安定してきた後のお子さんに対する対応を想定して作っています。
なぜ子どもは不登校になるのか?(本プログラムの根拠)
補足として、子どもがなぜ不登校になるのかについて、私の考えを話します。
私は不登校をこのような図で考えています。(あまり難しく考えなくて大丈夫です)
横軸が時間で、縦軸が心のエネルギーになります。心のエネルギーというのは、学校に行くための元気や活力みたいなものだと思ってください。
縦軸と横軸に加えてもう1つ重要なのが、「なんとか頑張れるライン」と書いてある部分です。いい名前が思いつかなかったので、このように呼んでいます。
このラインは表現するのが難しいのですが、子どものストレス耐性や社会性のことだと思ってください。
心のエネルギーがこのラインを下回ると、学校に行くことが難しくなる基準のようなものです。この線は個人差があり、ラインが高い位置にある人もいれば低い位置にある人もいます。
高い位置にあることが何を意味するかと言うと、少しエネルギーが下がるだけで学校に行くことが難しくなる、ということです。
反対に、ラインが低い位置にあることが何を意味するかと言うと、ある程度エネルギーが下がっても学校に登校を続けられることを意味します。何となくイメージがつきますでしょうか?
子の心のエネルギーは様々な要因で回復したり、消耗したりします。これは大人の方でもそうです。会社に行く元気がなくなれば、休職する方もいますよね。
では、この図から何が言えるかお伝えします。
それは、不登校対応は2つの柱があるということです。
1つ目は心のエネルギーをためることです。
休んでいるだけではなく、何かやってみようと思えるくらいの元気や活力を取り戻してもらうということです。
2つ目は、なんとか頑張れるラインを低い位置に持っていくことです。
ラインの位置が低くなれば、多少エネルギーが減っても、なんとか頑張って登校を続けられるからです。ここまでよろしいでしょうか?
子どもの心のエネルギーをためる方法
では次に方法ですが、心のエネルギーをためる方法は、生活の中で、肯定的な気持ちを多く感じることです。
肯定的な気持ちというのは、嬉しいとか、たのしいとか、安心感とか、安全感とか、満足感とか、達成感とか、そういうことです。
方法としては、保護者の方がお子さんの頑張りを認めたり、ほめたりすることです。専門的には、コンプリメントと呼びます(不登校の親支援プログラム第2回で徹底解説します)。
ちなみに補足なのですが、rikaさんという不登校の親御さんが書いている本のなかで、エネルギー回復のために必要なことがまとめられておりまして、専門家としてもなるほどと言ってしまったくらいわかりやすかったので引用させていただきます。
- 家で気を遣わずにゆっくり心身を癒す
- 頑張ってきた自分を認める
- 誰かに悩みなどを相談してすっきりする
- 好きなことをして気分を上げる
- なんのプレッシャーも制約もない中で安心感を得る
引用元:「子どもが不登校になったら読む本」
なんとか頑張れるラインを下げる方法
なんとか頑張れるラインを下げる方法は、本人の社会性を育てることです。
社会性ということばは抽象的ですが、大人になって自立して生きていくのに必要となるメンタルだと思ってください。たぶん以下のような感じです。
- ストレス耐性
- 問題解決力
- セルフコントロール力
- コミュニケーション力
- 失敗したり落ち込んだ時の切り替え力
じゃあどうやって育てるかというと、これも一言で言うのは難しいのですが、あえていうとすれば、子どもの気持ちは受け止めたうえで、子どもの問題は子どもに解決させる生活をすることです。
子どもから見て、親はしっかり受け止めてくれるけど、代わりにやってはくれないから、自分でなんとかするしかないか、と思えるようになる、そんなイメージです。
方法としては、任せる、ゆだねる、放っておく、助言せずに話を聞くなどです(助言するなら最低限にとどめる)。
私が考えた「不登校の親支援プログラム」では、第3回にて「課題の分離」という概念をつかい、子どもの課題となる行動を親が受け取らない方法を解説していきます。
子どもの課題と親の課題に明確な線引きはありません、子どもの特徴や親の価値観も関わってくることですから、家庭ごとに多少の差はあると思います。
コラム
不登校の原因は探さない?
ここまでが不登校になる理由と対応方法でした。ちなみに、このプログラムでは不登校の原因探しには重きを置いていません。
もちろん、原因が明確であればそれはそれでよくて、いじめが原因であれば、断固として学校に訴え、クラス変えなりなんなり対応してもらうことで再登校につながるかもしれません。
しかし、不登校は様々な「原因らしきもの」が混ざり合っていることが多く、原因の特定が困難であるばかりか、特定しても解決につながらないことが少なくありません。
そのため、このプログラム自体では、そういった原因の究明とその解決は狙わず、家庭でどのようにお子さんと関わるか、に絞っています。
何度も言いますが、本人が行きづらさの理由、原因のようなものを言ってくるのであれば、可能であれば、対応してあげてよいと思います(担任を変えてなどの無理な要求は対応しないほうがよいですが)。
子どもの特徴を大まかに知っておく
上記の図で不登校支援の大まかな流れを説明しましたが、お子さんの特徴によって、重点的に行うべきことがかわってくるため、不登校のお子さんの特徴を大まかに3つのタイプに分けて解説します。
なお、このタイプ分けは明治大学教授である諸富先生の本(不登校体験の本質と予防・対応 学校に行けない)から引用しています。
①葛藤型:まじめで緊張が強い。行きたいけど行けないお子さん。
②低エネルギー型:めんどくさい、つまらない、葛藤がないか浅い、幼い雰囲気があるお子さん。
③曖昧型:自分でも理由がよくわからないお子さん。
④混合型:上記の3つないし2つがまざっている(大体はここに入る)。
長文を読んでいただきありがとうございました。興味があるかたは次回以降もぜひ読んでみてください。
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