職場のメンタルヘルス

【厳選】職場のメンタルヘルス対策おすすめ書籍9選【もう悩まない】

職場のメンタルヘルス対策をすることになったけど、勉強するにもどの本がいいのかわからない…。メンタルヘルスは大切みたいな抽象的なやつじゃなくて、まねできるくらい具体的なことが書いてある本はないかな…。全体的なことも知りたいし、発達障害や新型うつの対応方法も知りたい…

こういった疑問にお答えします。

記事の信頼性
私は以前、組織内で心理的支援をしていた臨床心理士です。職員のメンタルヘルスケアや年間計画の作成、メンタルヘルス研修の講師などを行っていました。

医療機関から転職して組織に入ったので最初はわからないことばかりでしたが、本を読んだりSVを受けたりすることで何とか乗りきっていました。

この記事ではそんな私が参考になったと感じた書籍のみを紹介しています。

職場のメンタルヘルス対策おすすめ書籍9選

以下の本は全て私持っておりますので、読んだ感想込みで紹介していきます

※カッコ内はジャンルです。

  1. メンタルヘルス・マネジメント検定試験公式テキスト II種 ラインケアコース(総論・ラインケア)
  2. 心理職の組織への関わり方: 産業心理臨床モデルの構築に向けて(総論)
  3. リーダー事始め はじめて部下をもつときに読む本(総論・ラインケア)
  4. うつ病の人に言っていいこと・いけないこと(うつ傾向職員への対応)
  5. 管理職のためのハラスメント予防&対応ブック(ハラスメント)
  6. コーチング以前の上司の常識 「教え方」の教科書(指導方法)
  7. うつと発達障害(発達障害)
  8. すぐ会社を休む部下に困っている人が読む本 それが新型うつです(新型うつ)
  9. クライシス・カウンセリング(うつ・PTSD)

 

メンタルヘルス・マネジメント検定試験公式テキスト II種 ラインケアコース

この本は資格試験の参考書ですが、組織のメンタルヘルス対策を行う上で学ぶべきことが網羅的に書いてある良書です。

管理監督者を対象にラインケアについて書かれているため、上司へのコンサルを行う上でも役に立ちます。私は組織に対するメンタル対策の全体像をつかむのにこの本が大変役に立ちました。

  • 「メンタルヘルスケアの意義」
  • 「管理監督者の役割」
  • 「メンタルヘルスの基礎知識」
  • 「職場環境の評価及び改善方法」
  • 「個々の職員への対応」
  • 「相談対応の仕方」
  • 「社内外の資源と連携」
  • 「復職支援」等、本当に盛沢山です。

また、巻末に資料として掲載されている各種法制度もありがたいです。「労働安全衛生法」「労働者の心の健康の保持増進のための指針」「ストレスチェックの指針」等があります。

レビューにあるように文字ばかりでテキストチックなため、読むのが大変というか飽きるのが難点ですが、それを差し引いても買う価値のある書籍です。

ちなみに、メンタルヘルスマネジメント検定には「セルフケアコース」(労働者個人向け)と「マスターコース」(経営層向け)もあるようですが、私は「ラインケアコース」が1冊あれば支援には十分かなと感じました。

Amazonのレビュー

  • 資格うんぬん別にして上司に100回読ませたい
  • 本書で一通り学習すると、この業界の基本が理解できます
  • 文字ばかり

心理職の組織への関わり方: 産業心理臨床モデルの構築に向けて

この本は心理職や保健師の方向けの良書です。

まず本の名前からして「心理職の組織への関わり方」と、相当練られている気がします。労働者や管理監督者ではなく、「組織」への関わり方というところに、産業心理職としての働き方を示そうとする意気込みが感じられます。

内容は数名の先生方が分担して執筆しています。

  • 1章 方法論を意識した産業心理臨床
  • 2章 心理職と組織の多面的な関わり
  • 3章 ストレスチェック制度を活かす心理職の専門性
  • 4章「組織のメンタルヘルス体制づくり」と「再就職支援の最前線」

この本の良いところは、先生方が産業組織で行ってきた支援を「体験談」として語っている場面が多く、生きた経験として知ることができる点です。イメージしやすく具体的です。第4章は日本心理臨床学会での自主シンポジウムの記録となっており、指定討論まで収録されています。

本の序盤から方法論であるM-GTAと分析ワークシートが紹介されていたりと、著者それぞれの得意分野がまとまりなく配置されている感は否めないですが、気にしなければ内容は非常に良いです。

2016年と比較的新しい本のためか、Amazonのレビューがありませんでした。(この領域の人口が少ないことがわかります。)

リーダー事始め はじめて部下をもつときに読む本

この本は組織支援よりもう少しローカルな部分、「部下をもつ上司が知っておくべき内容」に関する書籍です。

著者は家族療法・ブリーフセラピーの大家であり、内容もシステム理論やMRIアプローチに基づいた内容が満載です。システム理論による組織の理解、リーダーシップ、コミュニケーション、困った部下への対処方法、交渉術、説得術、介入の仕方、等々、内容が細かくて豊富です。

特に私が好きなのは、「組織の力動」等という抽象的でイメージしづらい表現ではなく、システム理論に基づく対処行動の悪循環で組織を見立て介入することについて、具体例を挙げて記述してある点です。

ブリーフセラピーのモデルを知らない方にとっては奇抜で理解が難しく、使いこなすのも難しいですが、実行して試しながら体得できれば大きな武器になるでしょう。職場への介入や上司へのコンサルに非常に役立つ本です。

絶版の書籍のため、中古でしか買えないのが難点です。。

うつ病の人に言っていいこと・いけないこと

うつ病等のメンタル疾患を抱えた職員の「同僚」が、本人をどう扱えばいいのか教えて欲しい、と言ってきたときに参考にした本です。

言っていいことと、まずいことが具体的に書いてあるので、全ての人に読んでいただきたいくらいです。

この本の良いところは、心の病気であっても、会社とは仕事をするために行くところである(職場は働く場所)、という支援者が忘れがちな点をしっかりと指摘しているところです。ともすれば不調者本人の病気の治療を最優先してしまいがちですが、会社は営利活動ですから、不調者に配慮するのは、その方やチームの生産性をできるだけ落とさないためです。問題と病気を分け、問題は指摘する必要があります。それがちゃんと書かれています。というか、この本で学びました。

そういう意味では復職支援本としても使えます。

私も体験的に感じていますが、本人が継続して労働できることももちろん大切なのですが、それ以上に、会社組織として定めた規則やルールをもとに、一貫した対応をとることが大切だと感じています(ケースごとに柔軟に対応する必要があることを否定しているわけではありません)。

なぜなら管理監督者のスキルがまちまちだからです。

みんながみんな心理職並みに共感的に配慮できればいいですが、現実はそうではありません。誰でも一定の水準で対処するには、ファミレスのようにマニュアルに沿った一定の対応を行うのが良いわけです。

管理職のためのハラスメント予防&対応ブック

2020年発売と新しく、パワハラ防止法にも対応しています。何よりわかりやすく、時々漫画すら入っている優しさ満点の書です。

「パワーハラスメント」「セクシャルハラスメント」「マタニティハラスメント(パタニティ及びSOGIハラ含む)」といった主要なハラスメントについてわかりやすく解説されています。

しかもそれだけでなく、「加害者のタイプ別対処方法」まで解説されています。なんてありがたい。

相談されたらどうすれば良いかも書いてあり、相談員の方にもおすすめの内容です。

また、ハラスメント防止のために組織が行うべきこと(研修、チェックリスト、アンケート、相談窓口の設置等)も書いてあり、組織のコンサルをする心理職や管理職にも相当役に立ちます。ハラスメントに関してはまずこの本で良いでしょう。

コーチング以前の上司の常識 「教え方」の教科書

部下の指導法に関する本です。組織内で健康管理やっていると困った部下がいるという相談も多いわけで、我々も基本的な指導方法については理解していると支援の幅が広がります。心理職がそこまで口出ししなくても良いとお考えのかたは、読まなくても良いと思います。

ど頭から「コーチングよりもティーチング」とコーチングと比較して論を進めています。大丈夫?と思いますが、著者の主張は的を得ていると感じます。例えば、以下の部分。

仕事の基本すらわからない部下に対し、最初からコーチングをするのが本当に部下の成長につながるのかどうか、私は疑問に感じています。(中略)。失敗したり悩んだりする中で、仕事の基本を身に着けていきます。それを繰り返すことによって、やっと自分の考えをもてるようになるのです。そこにたどり着いて初めて、「君ならどうする?」という(コーチング的な)問が活きるのです。

部下に対して、仕事をするうえで大切なことを、初めはとことん教える、コーチングは言葉の響きが良いので惹かれますが、指導の方が先だよなと改めて気づかせてくれる良書です。

うつと発達障害

発達障害の章でも参考にさせていただきました。大人の発達障害についての本です。

当事者の体験談ではなく、現役の医師が書いています。専門家目線の本です。

発達障害の「ADHD」と「ASD」、そして「うつ病」について、特徴がわかりやすくまとめられています。ADHDとASDには類似した症状もありますが、図解があるので理解しやすいです。

新書サイズなのでコンパクトにまとまっていることも良いところ。発達障害理解のためにはまず持っておいて損はありません。

当ブログにはADHDの部下をもつ上司の方への記事もありますので良かったら参考にしてみてください。

すぐ会社を休む部下に困っている人が読む本 それが新型うつです

この本はいわゆる「新型うつ」と呼ばれる従来型と異なるうつに関する本です。こちらも新書なので、コンパクトにまとまっています。著者は臨床心理士です。

「回避性」「自己愛性」「他責性」が新型うつの3大特徴と説明しており、わかりやすく、腑に落ちます。

不登校や引きこもりを「心気症」の延長線上として見立てているのも面白いと感じました。

新型うつの職員に対するカウンセリング事例も記載があり、具体的にイメージして学ぶことができます。新型うつ関連はこの本から入るのがおすすめです。

クライシス・カウンセリング

この本は“「死にたい気持ち」を持つ人、および悲惨な出来事(参事ストレス)直後の人に対するカウンセリング”である「クライシス・カウンセリング」の本です(定義は書籍内のものです)。

著者は元陸上自衛隊の心理幹部であり、臨床心理士ではないようですが、現場で培ったスキルがすさまじいようで、非常に良書です。

PTSDや急性ストレス障害等の相談対応を行う可能性のある方は必読だと思います。

参事ストレスを経験した人間の心理状態や、その人の味方になるための「メッセージコントロール」(会話の仕方)について非常に具体的に書いてあります。

このメッセージコントロールというのがなかなか秀逸で、大学院の傾聴の授業でもこれやったらいいのでは?と思うくらいクライアントに寄り添う具体的な方法が書かれています。

また、トラウマ体験のショックが時間の経過とともにどう変わっていくか、うつの症状の時間的な変化もかなりためになります。

うつの症状は人間を安全に休ませるための原始人から続く本能と解説しているのも面白いです。とにかく独自の図解や用語が多く、どうやったら一般人がしやすいかを考え抜いている感じも素晴らしいです。お勧めします。

本記事は以上になります。

他にも職場のメンタルヘルス関連の記事がありますので、気軽に読んでみてください。

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  • この記事を書いた人

モトセ

臨床心理士です。最近は不登校支援に力を入れています。お気に入りやtwitterフォローお待ちしています。 noteでは不登校のお子さんに対する具体的な関り方をプログラム形式で書いています➝noteはこちら

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