書籍紹介

【初学者向け】家族療法のおすすめ本10選【学派ごとに紹介】

家族療法の勉強をしたいけど構造派とかコミュニケーション派とか家族療法の中にも理論がいくつもあって何を勉強したらよいかわからない…。そもそも難しそうだしマイナーだから勉強するのも大変そう…。何から勉強すればいいのだろう。

こういった疑問にお答えします。

本記事の内容

  1. 【総論】家族療法の全体像を学べるおすすめ本2選
  2. コミュニケーション派家族療法のおすすめ本3選
  3. 構造派家族療法のおすすめ本3選
  4. 多世代派家族療法のおすすめ本1選
  5. ミラノ派家族療法のおすすめ本1選

 

記事の信頼性
私は現在、医療機関でカウンセリングや心理検査を行っている臨床心理士です。年間のカウンセリング回数は約1000回。研究では査読ありの学会誌に論文が1本掲載されました。

精神分析やクライアント中心療法、認知行動療法を学んだ方にとっては「システム理論」という言葉自体が人間味を感じないから好きになれない、という方も多いと聞きます。

私は大学院で家族療法の先生に学んでいたため、それなりに詳しいと思います。この記事ではそんな私が、これから家族療法を学ぶ方へおすすめ書籍を紹介していきます。

では、いってみましょう!

【総論】家族療法の全体像を学べるおすすめ本2選

まずは各学派を紹介している全体像を学べる書籍を紹介します。

  1. カウンセリングの理論 (下):力動論・認知行動論・システム論
  2. 匠の技法に学ぶ実践・家族面接

 

カウンセリングの理論 (下):力動論・認知行動論・システム論

1つの心理療法の「らしさ」・「独自性」を理解するには他の心理療法と比較する相対化の作業が不可欠だと思います。

その作業にうってつけなのが諸富先生の「カウンセリングの理論 (上)(下)」です。

家族療法の独自性は「システム理論」に基づいた心理療法であることでしょう。

私は最初「コンピューターの話ですか?」と思いましたが、システム理論と円環的因果律に基づいて家族を見る視点に、とてつもないユニークさと魅力を感じました。

個人的な感情は置いといて、他の心理療法と比較しながら家族療法をしることができる諸富先生の書籍をまずおすすめします。

本記事記載時でAmazonレビューは8件で★4.5と非常に高い評価です。

目次を引用します。

第4章 精神力動論の立場
 1 精神力動論の特徴
 2 フロイトの精神分析
 3 「精神分析的カウンセリング」「力動的カウンセリング」
 4 対象関係論
 5 力動論的方法の短期化の動きと短期力動療法
 6 AEDP(加速化体験力動療法)

第5章 ユング心理学とアドラー心理学──「精神力動論」と「自己成長論」の間
 1 ユング心理学(分析心理学)
 2 ジェイムス・ヒルマン「魂の心理学」(ユング派の「元型心理学」)
 3 アドラー心理学(個人心理学)

第6章 認知行動論の立場
 1 認知行動論の特徴
 2 第一世代──行動療法
 3 第二世代──認知行動療法
 4 第三世代の認知行動療法

第7章 システム論の立場──家族療法、ブリーフセラピィ、ナラティブ、オープンダイアローグ
 1 システム論的な見地
 2 家族療法
 3 ブリーフセラピィ
 4 ソリューション・フォーカスト・アプローチ
 5 ナラティブ・アプローチとナラティブ・セラピー
 6 ライフデザイン・カウンセリング
 7 オープンダイアローグ

第8章 その他のアプローチ
 1 動機づけ面接
 2 交流分析
 3 内観法
 4 森田療法
 5 EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)
 6 回想法(ライフレビュー)
 7 ピークエクスペリエンス体験ワーク
 8 ソマティック・エクスペリエンシング

第9章 カウンセリングのおける「開かれた統合的アプローチ」
 1 「カウンセリング理論・全体見取り図」に「その他のアプローチ」を位置づける
 2 まとめ
 3 統合に向かう傾向──「大きな統合」と「小さな統合」
 4 日々の臨床の基本スタンスとしては「小さな統合」=「面接のタイプや経過とともに技法を変えていくスタンス」
 5 「開かれた統合」へ──統合性と多元性
 6 「核に据える学派(ベースに据える学派)」をどのようにして選択するか──あなたは「何のスペシャリスト」になりたいのか
 7 「自分のライフワークにかかわる特定のテーマ」に関しては「大きな統合」
 8 EAMA(体験‐アウェアネス‐意味生成アプローチ)──実存的自己探究を援助する新たな統合的アプローチ

おわりに

引用元:https://www.seishinshobo.co.jp/book/b599412.html

ソリューションフォーカスやナラティブセラピーなど、家族療法の後継的な位置づけにある心理療法について触れられている点も魅力です。

②匠の技法に学ぶ実践・家族面接

この本は家族療法の専門家3名が同じケースを面接するという、「グロリアと3人のセラピスト」の現代かつ家族療法版ともいえる書籍です。

この本をおすすめする一番の理由は出版社のサイトに実際の面接動画がアップされているからです。また、本記事記載時でAmazonレビューは7件で★4.5と非常に高い評価でもあります。

これ無料で見れてしまうのはやばいんじゃないの?と思ってしまうくらい貴重です。

 


ただし、この本は面接の解説なので、理論的な解説は少ないです。この動画を観て家族療法のイメージをつかみ、個々の学派の理論を学ぶのがよいかと思います。

家族療法の実際をイメージしたい方にめちゃくちゃおすすめします。

コミュニケーション派家族療法のおすすめ本3選

コミュニケーション派家族療法はアメリカのパロアルトにあるMental Research Instituteという機関が発祥の学派で、対人コミュニケーションにおける対処行動自体が問題を維持していると捉え、それを切るためのアプローチをとります。

コミュニケーション派家族療法は、ブリーフセラピーのMRIアプローチと同じであるため、MRIアプローチの書籍を紹介することになります。

  1. 新版 よくわかる!短期療法ガイドブック
  2. 事例で学ぶ家族療法・短期療法・物語療法
  3. 解決が問題である―MRIブリーフセラピー・センターセレクション

①新版 よくわかる!短期療法ガイドブック

コミュニケーション派家族療法(MRI短期療法のアプローチ)に関する本で一番おすすめなのは若島先生の本です。

若島先生はブリーフセラピーの大家であり、家族心理学会の現会長でもあります(本ブログ執筆時)。Amazonレビューも14件で★4と高評価です。

事例が豊富に示されており、面接における具体的な言葉の使い方など参考にしかなりません。

目次を引用します。

はじめに
第1章 短期療法(ブリーフセラピー)とは
第2章 短期/家族療法を理解するために
第3章 短期療法〝表裏のアプローチ〟
第4章 治療的会話法
第5章 介入課題の出し方・使い方
第6章 短期療法テクニックの研究
第7章 短期療法の展開
あとがき

引用元:https://www.kongoshuppan.co.jp/book/b514962.html

コミュニケーション理論についても詳しく解説されており、まず1冊目におすすめです。

②事例で学ぶ家族療法・短期療法・物語療法

こちらは若島先生と先生の師である長谷川先生の編著であり、この本の方が家族療法の歴史についてより詳しく書かれていますし、パニック、抑うつ、摂食障害、不登校など事例が豊富です。

Amazonレビューは13件で★4と高評価です。

目次を引用します。

まえがき  長谷川啓三

1章 家族療法から短期療法,そして物語療法へ―家族療法の歴史と展開  若島孔文・佐藤宏平・三澤文紀
   
 1.1980年以前の家族療法
 2.さまざまな第一世代家族療法
 3.1980年以後の家族療法の展開―理論的変遷の概略
 4.1980年代以降の代表的な理論と技法
 5.最後に

2章 パニック障害  若島孔文
 1.パニック障害とは
 2.パニック障害の心理療法
 3.逆説(パラドックス)
 4.長期的にパニック発作に脅かされた事例
 5.ダブル・ディスクリプション・モデル
 6.広場恐怖を伴うパニック障害と診断された女性の事例
 7.EMDRとTFT
 8.最後に

3章 抑うつ  佐藤宏平
 1.うつ病とは
 2.抑うつ状態の心理学的生起および維持要因
 3.抑うつを面接で扱う際のポイント
 4.慢性的な軽症抑うつ症状を訴える女子大学生の事例
 5.夫との関係調整により改善した事例
 6.最後に'

4章 摂食障害  生田倫子
 1.摂食障害の症状および特徴
 2.摂食障害の要因
 3.摂食障害の治療
 4.拒食症の娘を持つ母親が受診した事例
 5.過食症高3女子の母親が受診した症例
 6.世代間境界と暗黙の話題
 7.最後に

5章 複雑で難解な事例  若島孔文
 1.失敗例と言える事例から学ぶ
  ―進行性の病におかされる双極性障害の男性
 2.身体表現性障害の老人
 3.肺結核による運動機能の低下
 4.PTSDとドメスティックバイオレンスに悩む女性
 5.引きこもりへの対応―MCRプロジェクト

6章 児童虐待  三澤文紀・生田倫子
 1.虐待の影響
 2.虐待発見の手がかり
 3.虐待の心理的援助の方法
 4.「子どもの口をふさいでしまう」と訴える母親
 5.施設で問題行動を示した被虐待児のケース

7章 不登校  三澤文紀・若島孔文
 1.夫婦関係の改善を図った不登校の事例
 2.家庭内暴力と不登校(行き渋り)の事例
 3.不登校を経験した子へのインタビュー

8章 非行間題  久保順也
 1.非行少年と少年法
 2.クライアントとしての非行少年
 3.非行少年の家族
 4.非行少年と保護者がカスタマーの場合
 5.非行少年がカスタマー以外で保護者がカスタマーの場合
 6.非行少年と保護者がどちらもカスタマー以外の場合
 7.万引きにより触法通告を受けた和哉君の事例
 8.家庭内暴力がある広幸君の事例
 9.非行臨床と家族療法/短期療法の今後

9章 スクールカウンセリング  生田倫子
 1.多様な学校システム
 2.学校側とのコンサルテーションの重要性
 3.担任・親・スクールカウンセラーのコンサルテーションで不登校が短期間に改善した事例
 4.担任とのコンサルテーションと共同作業
 5.精神障害を呈した生徒の病院への紹介と学校側とのコンサルテーション
 6.精神分裂病が疑われた高1男子生徒への対応
 7.守秘義務の問題
 8.最後に 用語解説

引用元:https://www.kanekoshobo.co.jp/book/b183951.html

国内でコミュニケーション派家族療法(MRI短期療法)をけん引しているのは東北大学であり、本書は東北大学に関係する先生方によって書かれた本です。

コミュニケーション派家族療法(MRI短期療法)を学びたい方にはおすすめの書籍です。

補足

本家のMRIの先生方の書籍で学びたい方は以下の書籍がおすすめです。

構造派家族療法のおすすめ本3選

構造派家族療法はS.ミニューチンという人が創始した方法で、家族内の勢力や世代間境界などが鍵概念の家族療法です。

恐らく日本でガチガチの構造派家族療法をやってる人はいないと思うのですが、構造派家族療法をベースにご自身の理論を構築しておられるのが東豊先生です。

先の章で紹介した『匠の技法に学ぶ実践・家族面接』でも構造派家族療法のデモンストレーションをしておられます。

東先生は龍谷大学の先生で(本記事執筆時)、家族療法の大家であり、著作も多いです。東先生の本を読んで家族療法を学び始めた方も多いと聞きます。

  1. セラピスト入門―システムズアプローチへの招待
  2. 新版 セラピストの技法 システムズアプローチをマスターする
  3. マンガでわかる家族療法: 親子のカウンセリング編

この3つの本を紹介します。

セラピスト入門―システムズアプローチへの招待

東先生の初期の作品であり、おそらく、一番有名ではないでしょうか。

この本はシステム理論を用いた面接について、めちゃくちゃわかりやすく、そして明るく語っておられるのが特徴です。Amazonレビューはなんと36件で★4.5と高評価です。

なお、東先生はご自身の面接理論を「システムズアプローチ」と呼んでおり、この呼び方は日本しかないので、家族療法の知識が少しあると、「システムズアプローチって何?家族療法と違うの?」となります。

構造派をベースにしているみたいですが、先生独自の言い方としか言えません。

目次を引用します。

1 理論編

 第1章 治療の対象としてのシステム

  システムとはなにか
  システムズアプローチとはなにか
  家族:治療前夜
  円環的観察
  システムを見るトレーニングのために
  システムをおおざっぱにつかむこと ほか

 第2章 システムセラピストと治療技法

  システムセラピストに向いている人
  システムへの合流 その1・その2
  システムの分析 その1・その2・その3
  システムを変える その1・その2

2 実践編

 その1 供養の酒

  供養の酒
  霊感療法vs心理療法
  良い自分、悪い自分
  私の声は母の声
  天国からのアドバイス
  夢の中で ほか

 その2 セラピスト失格

  セラピスト失格
  タバコの煙
  受容の達人
  恐怖の電話
  ナントカ療法 ほか

引用元:https://www.nippyo.co.jp/shop/book/1115.html

この本の最大の難点(に見えてしまう点)は、家族療法って簡単そう、と思ってしまうところです。

それくらいわかりやすい。そして明るい語り口。

実際は簡単ではないのですが、、、東先生の著作で外せない本だと思います。

マンガでわかる家族療法: 親子のカウンセリング編

漫画でわかるシリーズは家族療法にもありまして、しかも原作は東先生です。

Amazonレビューは驚愕の64件で★4と高評価です。家族療法関連の本で一番レビューが多いんじゃないですかね。

目次を引用します。

1 サーモスタット母さん大活躍
2 涙とオシッコ
3 名通訳はほどほどに
4 天国からのアドバイス
5 虫退治
6 フリの効用
7 お猿の子から人の子へ
おすすめDVDガイド

引用元:https://www.nippyo.co.jp/shop/book/7642.html

この本に関しては、目次を見てもなんのこっちゃわからないですね。。。

内容は超絶わかりやすいですが、この本もわかりやすいがゆえに、自分でもすぐできるんじゃないか?と思ってしまうことに注意です。

多世代派家族療法のおすすめ本1選

多世代派というのはM.ボーエンを始祖とする家族療法です。

多世代派というだけあり、端的に言えば、ある家族が元の家族(原家族)から影響を受けており、分化できていないために現在の問題を呈していると考える学派です。

ジェノグラムという家族図が有名ですが、それをよく使うスタイルです。

国内ではIPI統合的心理療法研究所の先生方が多世代派の家族療法をベースにしておられます。多世代派家族療法よりもアサーションで有名かもしれません。個人療法に家族療法的な視点を持ち込む統合的なアプローチを重視されています。

①個人療法と家族療法をつなぐ関係系志向の実践的統合

中釜洋子先生の著作です。

中釜先生は東京大学やIPI統合的心理療法研究所で家族療法を研究しておられた第一人者の先生ですが、残念ながら2012年にご逝去されています。

目次を引用します。

はじめに
第I部 個人のための心理療法と家族療法の統合
第1章 心理療法の統合とは
第2章 家族療法のねらいと進化
第3章 個人のための心理療法と家族療法を橋わたしする
第II部 〈関係系〉志向アプローチを構成する鍵概念
第4章 ジェノグラム面接
第5章 文脈療法
第6章 多方向への肩入れ
第7章 ジェンダーという視点
第III部 〈関係系〉志向アプローチの臨床
第8章 関係系志向アプローチによる親支援
第9章 個人面接と家族合同面接を併用した統合的アプローチ
第10章 学校という〈関係系〉への適用
おわりにかえて

引用元:http://www.utp.or.jp/book/b306052.html

お弟子さんたちによって中釜先生の論文集が作成されており、多世代派や統合的心理療法に関心がある方は参考になると思います。

《中釜洋子選集》家族支援の一歩──システミックアプローチと統合的心理療法

ミラノ派家族療法のおすすめ本

この本を紹介した理由は、ミラノ派の紹介というより亀口先生の紹介です。

亀口先生は中釜先生と同じく東京大学におられた先生で(現在は違います)、恐らく日本の家族療法界で一番有名な先生ではないでしょうか。

かの有名な家族アセスメントの方法である家族イメージ法(FIT)を作った方で、粘土や餃子づくりなどユニークな方法をつかわれることで有名です。

大家のご著書を読みたい方はぜひ。


本記事は以上になります。

家族療法のおすすめ書籍いかがでしたでしょうか。

他にも心理療法に関するおすすめ書籍をまとめていますので、参考にしてみてください。

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  • この記事を書いた人

モトセ

臨床心理士です。最近は不登校支援に力を入れています。お気に入りやtwitterフォローお待ちしています。 noteでは不登校のお子さんに対する具体的な関り方をプログラム形式で書いています➝noteはこちら

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