今回は精神分析におけるフロイトの発達理論について紹介しようと思います。
発達理論というとエリクソンの漸成発達理論が有名ですが、フロイトも発達理論を提唱しています。
フロイトの発達理論(精神分析的発達論)
フロイトは乳幼児が成長するにつれ、身体の特定の部分の感覚が敏感になることに着目し、乳幼児にある性的な衝動、リビドーの発達を基に独自の発達理論をつくりあげました。
この理論ではリビドーの発達が、その後の精神生活を支配する無意識的な動因となるとされています。
リビドーの源泉となる身体部位は”口”、”肛門”、”性器”があげられていています。
これらの部位への関心や満足には一定の発達の順序があり、発達段階に対応する快感部位、充足の目標、充足の対象があるとフロイトは言いました。
今回はその発達理論を紹介していきます。
その前に!まず発達理論を理解するために知っておくと良いこととして固着と退行を紹介します。
固着と退行
何らかの要因でリビドーの発達が阻害された場合、その時点を”固着点”と呼びます。
その固着点が後の性格発達に重要な影響があると考えられています。
そして、人生において挫折が起きたり、セラピーの中で乳幼児期の心性が活性化されてきた際、かつてうまく乗り越えられなかった固着点のテーマに精神状態が戻り、その時期特有の行動をとることを”退行”といいます。
以下では発達理論の内容と、固着することによって生じる性格傾向、退行して生じる行動傾向とともに見ていきます。
口唇期(こうしんき)(0~1.5才) 快感部位:口
この時期は歴史的には口の快楽を満たせたかが重要であると考えられていました。母乳、おしゃぶりなど。
しかし今では空腹を満たせたかだけではなく、身体的な接触がしっかりあったことが重要であると考えられています。
キー概念としてはWinnicottの”Holding”やSternの”情動調律”などがあり、赤ちゃんへ触れること、感情の表出に対し、抱く、一緒に揺れるといった非言語的な共感が重要視されています。
自他の区別、自我の芽生え、欲求と現実との葛藤による欲求不満などが起こりますが、超自我はまだありません。
・口唇期的性格(固着していると)
甘えん坊・依存的になる。(これは何とかして満たそうとする気持ちが強くなるため)
・口唇期的行動(退行すると)
食べることへのこだわり、飲酒、喫煙、薬物、おしゃべりもしくはだまりこみが起こる。(口に関すること)
肛門期(1.5~3,4才) 快感部位:肛門
排泄のしつけであるトイレットトレーニングがなされる時期であり、身体の内部から外部へ出す事に伴う快感を味わうようになる時期です。排泄訓練により、自身のコントロール感が養われます。
排泄に関する時期であるため、我慢することを覚えてきます。
自我の発達としては、自律性が芽生え、現実検討能力、情動統制能力が発達していきます。
トイレットトレーニングにより大人に言われたことを守ることを覚え、そこから超自我が内在化し発達し始める時期です。つまり口唇期に主たる養育者との間で一貫した愛着が形成されていると、養育者との同一化が生じていきます。
この時期の超自我は厳格で、完全主義的、理想主義的なのが特徴です。
しかし超自我の発達は途上であるため、親が見ていなければ良いも悪いもないという肛門期的道徳が見られます。
・肛門期的性格(固着していると)
完全主義、強情、几帳面、けち、潔癖、短気、ルーズ。厳しさや頑固さ、清潔さに関係する。
・肛門期的行動(退行すると)
こだわる、叱る、がんばる、ちゃんとする約束を守るまたは裏切る。執着的な行動に関すること。
男根期・エディプス期(3,4~5,6) 快感部位:性器
偶然刺激されたことで性器の快感に気付き、性的な存在としての自分を発見し、性衝動が他者に向かい始める時期です。
性器ががついているか否かで男・女の違いを意識するようになる時期でもあります。
異性の親に対する性愛的愛着を抱き、同性の親に対するライバル意識や嫉妬を抱く”エディプスコンプレックス”という現象が起き、これはフロイトにとって非常に中心的な理論です。
ちなみにエディプスコンプレックスの発見の背景には、
-年上の父と若い母
-フロイトはその間の第1子で母親のこと大好き
-寝室に入って父に追い出された経験
-母の裸の夢
などがあるらしいです。
異性の親をライバル視することから、自分の魅力を誇示したり、他者と競争するという行動が出現します。エディプスコンプレックスによる大きな出来事の1つは3者関係への取り組みであり、そこにある競争などが子どもの発達に大きく影響してきます。
自我の発達としては、エディプスコンプレックスが克服されないことによる万能感の縮小(親には絶対に勝てないから)、現実検討能力の増大、情動統制や葛藤処理能力の増大があげられます。
超自我についてはエディプスコンプレックス克服過程において、今は勝てないが、いつかは親のようになりたいという自我理想が作られ、そのことから”ちゃんとしなければ”と思うことにより超自我が発達(内在化)します。
・エディプス期的性格(固着していると)
神経症的性格(軽い神経過敏、不安、不適応)、みえっぱり、優越感の誇示が続く、劣等感が残る、引っ込み思案。競争における態度に関することが多い。
・エディプス期期的行動(退行すると)
上記に関連した様々な不適応行動。
潜伏期(概ね小学生)
身体的には性的な衝動が高まる10歳ごろくらいまでは大きな特徴がない時期です。
自我は認知的な発達などに伴い、自律性が増加していきます。
勤勉性が培われていきますが、できないと劣等感が生まれる時期でもあります。
超自我は集団の変化により同一化の対象が増え、価値観の相対化を通じて柔軟で幅広く発達します。
・潜在期的性格(固着していると)
特になし。
・潜在期的行動(退行すると)
現実への逃避、仕事や勉強に逃げ込む、ひたすら努力する、もしくは逆に何もしない。
性器期・第2エディプス期(思春期~青年期)
第2次性徴が始まり、またリビドーの影響が出はじめる時期です。
また、対人関係において同年代の仲間の影響が強くなります。
仲間関係の分類としては以下のような分類があります。
ギャングエイジ・Gang Age
ともに行動するレベルの仲間。
チャム・Chum
何かを共有するつながりのレベル。同一化対象。
ピア・Peer
独立した人格を認めるレベルの仲間。違いを認めている。
自我にとってはアイデンティティ形成が始まる時期であり、拡散、早期完了、モラトリアムといったステータスを行ったり来たりします。
超自我もChumの超自我と同一化したりして安定しない時期で、レベルが下がることもあります。
自我の再構成とともに超自我も再構成され、より発達した柔軟なものになっていくと言われています。
・思春期的性格(固着していると)
特になし。
・思春期的行動(退行すると)
モラトリアム的行動、大人のくせに青臭いことやったり、中年の浮気とか。
■まとめ
他のサイトを見ても、固着と退行に関して解説しているところはあまりないと思うので、そこは参考にしてもらえたらと思います。
・精神分析的発達理論
1.口唇期(こうしんき)(0~1.5才) 快感部位:口
2.肛門期(1.5~3,4才) 快感部位:肛門
3.男根期・エディプス期(3,4~5,6) 快感部位:性器
4.潜伏期(小学生らへん)
5.性器期・思春期・第2エディプス期(思春期~青年期)