精神疾患の診断マニュアルであ「DSM-IV」の付録には、様々な防衛機制が7つの「水準」に分けて掲載されています。※今後の研究のために提案された軸として「付録」として記載されています。
「ストレス」の概念を使い、ストレスに対処するものとして防衛機制全体をとらえ直そうという試みがされているのが特徴です。
この記事では7つの水準のうち「高度な適応水準」と「精神的静止水準」の中から「昇華」「ユーモア」「抑制」「置き換え」「知性化」「隔離」「反動形成」「抑圧」を紹介します。
別記事でも防衛機制について書いています。
防衛機制の7つの水準
DSM-IVでは防衛を以下の7つに分類しています。
- 高度な適応水準
- 精神的抑止 (代理形成)水準
- イメージの軽度歪曲の水準
- 否定の水準
- 重度のイメージ歪曲の水準
- 行為的水準
- 防衛制御不能水準
高度な適応水準(最も良い適応状態を示す水準)
昇華(衝動を仕事、芸術、スポーツ、趣味など社会的に受け入れられる形で表現する)
衝動に対して社会的に受け入れられる行動にはけ口を求めることで葛藤や外的・内的ストレスに対処する。適応的な防衛の代表です。ただ単にネガティブなものからポジティブなものへの変換ではなく、社会的に認められる形で表現することです。
葛藤を曲や絵、漫画などで表現して社会的に評価される等。
抑制(意識的に我慢したり抑えたり、気をそらしたり、一時的に忘れたりする)
要するに我慢することです。
ユーモア(笑いに変える)
これは葛藤やストレス因子の面白い側面や皮肉な側面を強調することによってそれに対処することです。笑いには対象の価値を落とす効果があるようで、張り詰めた自我を緩める効果があるようです。自虐的に自嘲する笑いは含まれません。
その他
・予期(予想を立てて、備える)
・連携(人に助けを求める)
・愛他主義(ひとにつくして感謝される)
・自己主張(自分も他人も大切にする適切な、程よく直接的な自己表現)
・自己観察(冷静に自分の気持ちや考えを見る。自分と程よく距離をとる)
精神的抑止 (代理形成)水準
脅威を与える可能性のある気持ちや願望、恐怖などを意識の外に保つ防衛であり、うまく使えば問題になることは少ない。
置き換え(代わりのもので妥協する)
対象に対する感情や反応を他の対象に移し替えることで、葛藤やストレスに対処する防衛。
雑誌で見た高い服は買えないから、似たような安いものを、という感じです。
反動形成(反対の気持ちを感じる)
自分自身が受け入れることができない思考または気持ちを全く正反対の行動や思考、気持ちに切り替えることで、葛藤やストレスに対処する防衛。例えば嫌いな人に良い顔をしてみたりすること。
愛<->憎しみ。攻撃<->やさしさ。美<->汚い
抑圧(気持ちの根っこを意識の外に締め出す。よくわからない気持ちがある)
混乱する願望、思考、経験を意識的気づきから排除することで、葛藤やストレスに対処する防衛。
防衛機制の原型であり、意識すると辛すぎるから無意識の中に落ち込んで心の安定を保とうとする働き。
抑制との違いは意識してやるか否か。抑圧は無意識的な防衛。
知性化(知ったかぶりや頭だけでわかったり悟ったりする)
本を読んで情報収集するなどして、理屈から理解するという対処。
その他
・解離(人格の一部が切り離される、記憶がない時間がある)
・感情の隔離(気持ちが切り離されていて、感じられない)
・取り消し(気持ちや行動を打ち消すための儀式的な言動)
以下の馬場先生の書籍は精神分析や防衛機制のことが大変わかりやすく書かれているためおすすめです。
精神力動的な理解ができると防衛機制も理解しやすくなります。以下の記事もご参照ください。