自我はエスから生じる「欲求」と超自我から生じる「理想や現実的制約」を調整する役割をもちますが、その調整する際に生じる不安や葛藤に対処して自我の安定を保とうとする機能は「防衛機制」(Defense Mechanism)と呼ばれています。
この記事では防衛機制と似た概念であるストレスコーピングの違いについてご紹介します。
防衛機制とは
フロイトは自我は不安を「危険を予知する信号」として知覚し、そこで防衛機制を働かせると言っています。不安だけではなく、欲求の高まりによって生じる不快感、罪悪感、恥などの情緒体験に防衛なくさらされると心は疲弊してしまうため、それを回避して心を安定させるために意識的・無意識的にとる対処が防衛機制です。
一言で言えば心の安定を守るための対処法です。
重要な点の1つは防衛機制は無意識的に行われることが多いということです。
防衛機制とストレスコーピングの違い
不安に対処する機能がある防衛機制ですが、心理学の分野でも似たような概念があります。それはストレスコーピングと呼ばれるものです。
ストレスコーピングは分野で言うと臨床心理学か健康心理学に入ると思います。
これはラザルスという人が考えた概念で、人がストレスにさらされた際にとる対処方略のことです。
大まかに分けるとストレスを生む問題を具体的に解決することに焦点をあてる”問題焦点型”と、不快な感情をコントロールしてストレスに対処しようとする”情動焦点型”という2種類のコーピングがあり、もう1つストレスフルな状況事態を避ける”回避型”を入れる場合もあります。
防衛機制とストレスコーピングの違いを4点まとめました。
防衛機制のほうが古い
それぞれ異なる理論から生まれていますが、精神分析の理論から生まれた防衛機制のほうが古く、ストレスコーピングのほうが新しいです。
意識的か無意識的か
防衛機制は自我が行う無意識的な不安・葛藤への対処という側面が強く、ストレスコーピングはストレスに対する認知的な対処方略であり意識的なものです。
しかし、防衛機制は無意識的なものではありますが、それが表に出た後自覚できるものもあります。
防衛機制のほうが広い範囲をカバー
ストレスコーピングはストレスを認知的な方法で対処しようとする概念なので、無意識的な部分をカバーしていません。そのため、防衛機制のほうが広い範囲をカバーしていると言えます。
対象の違い
防衛機制は精神分析から出てきていますので、神経症と言った病的な人を対象として出来てきたところがあるのに対し、コーピングはどちらかというと健康的な人を対象にした健康の保持・増進的な役割が強いようです。
まとめ
・防衛機制
エスの欲求や超自我のこうあるべきという理想、現実の制約などを調整する際に生じる不安や葛藤に対処し、自我の安定を保とうとする機能であり、意識的ないし無意識的に行われる。
・防衛機制とストレスコーピングの違い
1.防衛機制のほうが古い
2.意識的か無意識的か
3.防衛機制のほうが広い範囲をカバー
4.対象の違い