精神分析

【5分で読める】子どもの心理療法であるプレイセラピー(遊戯療法)とは

 

大人は言葉で心の世界を表現できますが、子供の場合は言語発達が未熟であったり、不安が強かったりすることで言語化が難しい場合が多くあります。

そのため、子どものカウンセリングではしばしばプレイ(遊戯)が用いられます。

プレイセラピーは遊びを通じてお子さんの不安や欲求を表現させることで治療を試みる方法です。

プレイセラピー(遊戯療法)とは

遊戯療法とは、言語能力が未熟で内的な世界を言語で表現することが困難な子供を対象に、遊びを媒介として自己表現を促す心理療法である。遊戯療法ではアクスラインの8原則に基づき、子どもの主体性を重視し、自由に遊べる空間を作り上げると同時に、子どもとカウンセラーの安全を確保するための制限も用意する。この制限があることにより、子どもが不必要な試心配や罪悪感を抱くことなく、安心して自己表現を することが可能となる。
(臨床心理士指定大学院対策 鉄則10&キーワード100 心理学編 (KS専門書)より)

つまり、言語以外でどのように子どもの心理にアプローチしていくか、に対する一つの方法がプレイ(遊び)になります。

プレイにおいて治療者が適切なかかわりをしていくと、自然に無意識的なテーマが出てくると言われています。

プレイセラピーの段階

 

1.初期非関与の段階:舞台設定

子供は遊ばないか、一人で遊び、そのプレイは理解できなかったり、活用できなかったりする。

ここで治療者は舞台設定を行い、プレイのために適切なかかわり方を提供します。

良質なプレイを設定することで、無意識的な部分の表出を手助けます。

2.早期情緒的関与の段階

子どもがゆっくりとプレイに心が向かうようになり、プレイの中に出てくる特定の物事の深い意味を共有し始める段階。

遊びに熱が入ってくる段階ですね。

3.中心的ファンタジーの出現

子どもは次第に重要な意味をもつ空想世界を熱中して作り上げていく。

ここでは治療はその意味に漠然としか気づけないかもしれませんが、物語が展開するにつれて親が子供の変化を報告し始めたりする(改善や悪化)。

4.徹底操作期

治療者がプレイ中に明るみに出てくる物事の様々な意味を統合し、解釈的に介入する。

徹底操作(work though)

何回も何回も作業をし直すことを徹底操作といいます。
外的に操作をするわけではなく、繰り返すという意味です。

 

プレイの構造と投影

 

自由なプレイを提供していくと子供の中にある無意識が遊具や遊び方に投影され始めると考えられています。

プレイは場合によっては構造的なものが良い場合もありますが、基本的には自由度が高いほうが良いようです。

意味のあるプレイとは

 

子供のエスが自我機能とのバランスを保ちながら、クリエイティブに表現されるようなプレイが意味のあるプレイであり、これが実現されている時は、面白いプレイになるようです。

自我のための退行を促進する

治療者は子ども(クライアント)と一緒に遊ぶ遊び手になることで情動を調律し(合わせていき)、無意識の世界を見出す「自我のための退行」を許容することになります。

例えば潜伏期の子供がプレイにおいて、肛門期的な行動をとることがあったとしたら、それは自我のための退行であると言えます。

発達段階と退行についてはこちらをどうぞ

つまりプレイにおいて遊び手は、感情の表現を助ける人になるということです。

そこで情動調律を図ることで自由連想のようなことができるようになり、無意識の中のものが自然と出てくるようになります。

自由である、ということは無意識の探求に非常に重要です。理由は、無意識は意識より遠いところにあり、なんでもありが許されることで、ようやく出てくるからだと言われています。

抱える環境(Holding Environment)

治療構造を定めてしっかりと境界を規定すること(やってはいけないということを決めること)は、逆に言えば、それ以外はどのようなことをしても良いという場が提供されることを意味します。

また、それを治療が受け入れる態度でもって受け入れることで、子どもが安心して無意識を表現することができるような環境を“抱える環境”といいます。

治療者はプレイにおいて遊び手として機能しながら、このような環境づくりにも力を入れる必要があります。

遊び手と観察者という二重機能

プレイの中で治療者は一緒に遊ぶ遊び手としての立場と、プレイが単に楽しみのためにあるのではなく、それをよく見て理解するという重大な目的があることを暗黙のうちに伝える観察者としての役割があります。

観察者としての治療者はルールといった境界(治療構造)を定めますが、子どもはプレイが進むにつれてそのルールを理解し、次第に自身に内在化させていきます。

子どもの自我はえてして成熟していないため、治療者がその成長を手助けする補助自我として働き、その結果子どもはプレイの場が普段の生活とは切り離されている場であることを認識できるようになります。

子どもの観察自我を育てていくことも、プレイの意味の1つです。

雑多な内容になってしまいましたが、子どものためのカウンセリングであるプレイセラピーの概要でした。

プレイセラピーを学ぶには以下の本がお勧めです。

  • この記事を書いた人

モトセ

臨床心理士です。最近は不登校支援に力を入れています。お気に入りやtwitterフォローお待ちしています。 noteでは不登校のお子さんに対する具体的な関り方をプログラム形式で書いています➝noteはこちら

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