初めて会社のメンタルヘルス対策するけど、何からやったら良いんだろう…
個人のカウンセリングはやったことあるけど、組織に対する働きかけって全然イメージがわかない…
組織に対するサポートって漠然としてイメージできないですよね。
行動レベルで理解できるように、具体例をたくさん書いておいたから参考にしてください。
「産業領域の心理職は組織を対象に支援するからコミュニティアプローチである」。ここまでは大学院や資格試験の対策で学ぶと思います。
では、組織を対象とした心理的支援とはどのようなものか、具体的にイメージできますか?
私はこのイメージをつかむのにだいぶ時間がかかりました。今もはっきりしたわけではないですし、「組織の力動をつかむ」という言葉の意味については、もっと明確に定義される必要があると思っています。
結論から言えば、私の感覚で言えば組織への介入とは、「メンタル不調の「予防」と「対応」に関する仕組みづくり」をサポートすることです。
この章では組織に対する支援とはどのようなものか、今の私の考えをお伝えし、皆様の具体的な行動に結びつくような内容にしていければと思います。
メンタルヘルスに強い組織の作り方
「組織への介入」とは何を意味するのか
私の感覚で言えば組織への介入とは、「メンタル不調の「予防」と「対応」に関する仕組みづくり」をサポートすることです。
※ここで言う予防とはいわゆる1次予防から3次予防のことです。
事業者(言い方は所属長でも社長でも良いです)は、自社の職員に正しいセルフケアやラインケアをやって欲しいわけです。なぜなら健康でいて欲しいし、能率よく仕事して欲しいからです。
まず事業者はそれを職員に説明する必要があります。「メンタルヘルスは大切ですよ」、「私はあなた方のメンタルヘルスを大切にしますよ」と。
いきなり言われても、職員は「じゃあどうすればいいですか?」と思うはずです。だから事業者は、目標とすべき状態やそこに至るまでの手段を明確にし、職員に周知する必要があります。組織内心理職はそのサポーターとして、様々な活動をしていきます。
心の健康づくり計画を策定する
心の健康づくりについては少し長くなるため、別の記事で書いております。
定期的な関係者ミーティング(衛生委員会)を実施する
私はメンタル不調に限らず心身の健康に不調をきたす職員が発生した場合は、可能な限り、上記の関係者メンバー(産業医は状況による)でその都度集まって会議をした方がいいと思っています。
会議自体は短時間でよく、チーム内守秘義務のもとに、対応方針や具体的なプランを検討し共有します。
また、2~3か月に1回、定期的に集まり、不調者の病状経過を共有する機会を作ることが非常に重要だと考えています。
関係者間の意思疎通を図ることで協力体制を構築し、個別にばらばらな対応をとることを防ぐためです。
心理職は「その集まる場をセッティングする」、専門的に言えば「コーディネート」することに尽力すべきです(具体的にはメールやら電話やらしてこの日のこの時間に集まりましょうと決めたり、今からやりましょうと誘ってみたりする)。
これこそが、組織内の心理職だからこそできる重要な役割であると強く思っています。
人事担当者はこういった集まりをめんどくさがります。しかし、メンバーがこういった集まりに慣れ、効果が出始めれば、当たり前のようになります。
めんどくさがって誰もやりたくないようなことを買って出ると、周りから感謝されますし、組織内心理職の存在意義も目立ってきます。
ストレスチェックを実施する
ストレスチェックについて細かく書きませんが、メンタルヘルスに関する気づき・意識づけのために効果があります。
健康診断と同様に、心の健康を振り返る機会として極めて重要です。やってなければ規則を整備し、やりましょう。
メンタルヘルスに関する対応マニュアル・フローチャートを作成する
職員一人ひとりが何をすればいいか迷わないように、「規則」「マニュアル」等を整備することも事業者のやるべきことであり、これをサポートすることが組織への介入となりえます。
「心の健康づくり計画」にもあるとおり、「管理監督者による職場環境等の把握と改善」は重要事項です。
しかし、私の経験から言えば、職員のメンタルヘルスリテラシーにはかなりばらつきがあります。
過去にメンタル不調者対応の経験があり、ある程度支援方法を理解している管理監督者もいれば、新任管理職で不慣れな方もいます。
そのため、組織で取り組む場合、効果が見込まれる一定の決まったやり方で対処することが望ましく、管理監督者が統一的な対応を行うためには「対応マニュアル」を作成し、それに則って対応してもらうことが1番手っ取り早いですし、管理監督者の負担も減ります。
一方で、マニュアルというのは作ったは良いものの、次第に形骸化し、実態としては機能せず、結局は管理監督者のスキル任せになることが多いものです。
組織内の心理職は管理監督者と協力し、マニュアルやガイドラインに沿った支援ができるようにサポートすることが重要です。
マニュアル作成は内容的に非常に高度な作業のため、専門家に依頼し、社内の実情を踏まえたうえで協力して作成していくと良いでしょう。
メンタルヘルスに関するお便りの配信
スクールカウンセラーが「相談室だより」を発信するのと同様に、社内の心理職もメンタルヘルスに関するお便りを月1程度の頻度で出すと良いでしょう。
簡単なものでいいと思います。A41~2枚とか。
内容は心理職の腕の見せ所ですが、専門知識がふんだんに入ってしまうと難しく、読みづらい印象を与えるようです。心理職個人の趣味の話等、身近な存在として感じてもらうような内容でもいいでしょう。あんまり文章量が多いとネタがすぐ尽きるので、小出しにしていくといいです。
また、お便りの「配り方」も非常に重要です。
可能であればオフィスの全部署を回り、1人ひとりに「今月のお便りでーす」という具合に、顔を見せつつ配った方がいいです。
そして職員の顔と名前が一致するくらいに覚えましょう。そうやって顔が見える関係になることが、組織内では重要です。
配る際は何となくでいいので職場の雰囲気を探ることも忘れてはいけません。ちょっと暗いなとか、殺伐としているなとか、会話が多いなとか、そんな簡単なことでいいです。
組織には業務の性質によってメンタルヘルス不調が起きやすい部署と、そうでない部署がどうしても出てきます。それを肌で感じるためにも、各課に足を運ぶ理由付けとして、お便りを利用することをお勧めします。
まとめ
私は組織に入って何をやったら良いか本当に悩みました。その苦い経験を振り返り、実際にやったことも含めてまとめたのがこの記事です。少しでも皆様のヒントになれば幸いです。
- 組織への介入とは「メンタル不調の「予防」と「対応」に関する仕組みづくり」のサポート
- 心の健康づくり計画を策定する
- 定期的な関係者ミーティング(衛生委員会)を実施する
- ストレスチェックを実施する
- メンタルヘルスに関する対応マニュアル・フローチャートを作成する
- メンタルヘルスに関するお便りの配信
職員さんとの関係作りのコツは以下の記事に書いています。
シリーズの目次ページは以下です。
お読みいただきありがとうございました!