誰しも嫌いになるつもりはなくても、どうしても好きになれない人がいるのではないでしょうか。
今回は「虫が好かない」という「人を嫌いになる感覚」について、ユングの「シャドウ」という概念を使って説明していきたいと思います。
ユングの影(シャドウ)とは
シャドウとはユングの集合的無意識の中にある「元型」というカテゴリの1つで、以下のような種類があると言われています。
- 認めたくないけど、自分も持っている自分の嫌な部分(普段隠している自分の嫌な側面)
- 受け入れられない現実や価値観
- 自分が持っていないのを分かっていてあこがれている部分(嫉妬に近いようなイメージ)
【虫が好かない】という感覚の正体はシャドウの投影
虫が好かないことのの原因の1つは、嫌いな人に自分のシャドウ(影)を投影(見出して)してしまっているからです。
つまり、「自分の嫌いなところを相手から感じたとき」や「自分が持っていなくて憧れる性質を相手がもっていると感じたとき」に相手のことを嫌いと感じる、というわけです。
例:優柔不断な人が、うだうだ悩んでいる人を見ると、自分もそういうところがあってそれを思い出すから嫌だと感じる。
同属嫌悪という言葉がありますが、これは自分の嫌な面(影)を相手に投影した結果と言えます。
影を受け入れられない人は心が疲弊してしまい、現実適応にも影響が出る場合があります。影は人にとってネガティブな性質をもつものであり、「自分も同じところがあってそれに反応してるんだな」と客観しできない場合、どんどんストレスフルになっていくわけです。
特に思春期頃には自分の親に影を見出すことがあります。
集団におけるシャドウ
影の投影は1人ではなく集団でも起こりえます。集団が前に向かっている時は、その中の少数にうっぷんのような影ができている場合がある、というイメージです。
例えば会社やサークルで全体がうまく動いているように見えても、何人かのメンバーはそれを良く思っていなかったり、別のことで悩んでいたりする事があります。
シャドウの役割は「克服すべき課題」と「受け入れるべき生き方や価値観」
影はただのネガティブ要素なのかといえば、そうでもありません。
影には『克服すべき課題』と『受け入れるべき生き方や価値観』という2面性があります。
相手に自分と似たようなところを見つけて嫌いになる場合、自分が持っているその特徴を克服することで意識せずに済みます。克服できない(変化できない)場合は「それも含めて自分なんだ」と受け入れることで相手に反応する必要がなくなるでしょう。
優柔不断であれば、「直感に頼ってみる」や「もう悩むのが自分だから常に徹底的に考えよう」と割り切ることでシャドウ克服の第一歩になるかもしれません。
嫌な面であれ、否定していると生きていて疲れます。今まで抑圧してきたり、否定してきたことを生き方の中に取り込ませることが心の健康を保つために重要になりそうです。