アイデンティティのための恋愛とは
青年心理学の第一人者である大野先生によれば、アイデンティティのための恋愛とは親密性が成熟していないかつ、アイデンティティ統合の過程で、自己のアイデンティティを他者からの評価によって定義づけようとする、または補強しようとする恋愛的行動と定義されています。
つまり、自己のアイデンティティを確認するための恋愛が「アイデンティティのための恋愛」です。
例:イケメンの恋人と一緒にいると、自分がとても立派な人間になったような気がする。
このような関係にある人は相手を自分の鏡として扱い、相手にではなく、相手に映った自分自身に最大の関心がある状態であると言えます。
今回はアイデンティティのための恋愛の5つの特徴についてお伝えしていきます。以下の書籍が大変参考になります。
アイデンティティのための恋愛の特徴
アイデンティティのための恋愛には以下のような5つの特徴があると言われています。
相手からの賛美、賞賛を求めたい
イケメンや美女に「好き」って言って欲しい、そのような人に好きって言ってもらえる自分は優れた人物であるという自己陶酔欲求を満たしている。
相手からの評価が気になる
「私のこと好き?」「俺のことどう思ってる?」等と評価が気になることです。相手が自分に興味がなくなれば、自分の価値に自信が持てなくなるためにこのような心理が働くようです。
付き合ってしばらくすると、呑み込まれる不安を感じる
一緒にいても自分が自分でないような、偽りの自分であるような感覚のことです。話題がなくなり、会話が続かず、呑み込まれるような不安が生じる。ほかにも沈黙とか緊張などがあります。嫌われないような関係性をとるためコミュニケーションが表面的になるために生じるのかもしれません。
相手の挙動に目が離せなくなる
「今何してるの?」と相手のことが気になって仕方ないことです。挙句の果てには細かい決め事をして、お互いを規制しあおうとします。これは自分以外の異性に興味が移ってしまうことに対する恐怖から生じると考えられています。
結果として、交際が長続きしないことが多い
上記のような心理状態が続くことで精神的に疲れてしまい、結果として一緒にいることが負担となり、別れに至ることが多いようです。
また、アイデンティティのための恋愛では、相手のことを “重い” と感じるがゆえに交際が長く続かないことがあるようです。重いに関しては後で説明します。
なぜアイデンティティのための恋愛に陥るのか
大きな原因は自分のアイデンティティが未達成であることです。
この恋愛をする人は、自分のアイデンティティに自信が持てないため、相手からの賞賛を自分のアイデンティティの拠り所としています。自分に自信はないけれど、“相手が好きって言ってくれてるから私はこのままでよい“という心理的な後ろ盾になります。
しかし、相手の自分に対する評価が価値基準になってしまっており、それがなくなることは、自分自身というアイデンティティそのものの消失に繋がってしまいます。自分というものが脆弱な状態と言えるでしょう。
アイデンティティのための恋愛関係でいると、相手から嫌われることが、ただ恋人を失うことにとどまらず、自分自身の基盤が根底から揺さぶられるため、大きな不安や混乱の原因となっていきます。
ではこのような状況を避けるにはどうしたらいいのでしょうか。
アイデンティティのための恋愛を避ける方法
異性と心理的に本当に親しくなるためには、相手の前で気取ることなく、自然のままで付き合うことができることが理想です。
そのためには両者のアイデンティティステータスが「統合」か、少なくとも「統合」に向かっていること、自分にある程度の自信を持っていることが必要だと言われています。
かといって青年期の若者がアイデンティティを確立することは容易ではありません。そうなる前の困難を避けるためには以下のようなことに気を付ければいいと大野先生は言っています。
つきつめあわない
細かなことまで気にしないということです。きりがないし、相手を追い詰めることになるからです。
共通体験をする
スポーツでも映画でもなんでも良いです。共通体験をすることでお互いの思い入れを深め、自分から相手をしっかり見ていく体験をしていくことができると考えられます。
相手を待つ
片方が少しでもアイデンティティを確立している場合、相手を余裕をもって見られることがあるでしょう。その場合、相手がいっぱいいっぱいの状態でも急かさずに待ち、同時に自分の課題についても考えてみることができます。
課題を持つほうはそれを解決する
就職、進学など様々な課題があるかもしれません。しかし、自分なりにアイデンティティの達成をしようと努力することで、前に進むことができますし、素直に相手に待ってもらえるように心を打ち明けてみれば、互いに理解を深めるきっかけになるかもしれません。
先ほど 相手の存在が"重い"から別れにいたる例があると書きましたが、それはこの問題が関わっています。
(1) 相手がアイデンティティ未達成の場合
この場合、相手が自分を過度に必要とするあまり、相手の存在が”重い”と感じることがあるようです。
(2)自分のアイデンティティが未達成の場合
こちらの場合、自分のことでいっぱいいっぱいで相手に思ったほど何もしてあげることができず、だんだん相手に申し訳なくなり、相手の存在が”重い”と感じることがあるようです。まじめな青年ほどこういうことを考えそうですね。
まとめ
アイデンティティのための恋愛
親密性が成熟していないかつ、アイデンティティがの統合の過程で、自己のアイデンティティを他者からの評価によって定義づけようとする、または補強しようとする恋愛的行動のこと。
アイデンティティのための恋愛の特徴
1.相手からの賛美、賞賛を求めたい
2.相手からの評価が気になる
3.付き合ってしばらくすると、呑み込まれる不安を感じる
4.相手の挙動に目が離せなくなる
5.結果として、交際が長続きしないことが少なくない
・アイデンティティのための恋愛を避ける方法
1.つきつめあわない
2.共通体験をする
3.相手を待つ
4.課題を持つほうはそれを解決する