「好きな服は何ですか?好きな本は?好きな食べ物は何?そう、そんな物差しを持ち合わせてる僕は凡人だ」
これはサカナクションというバンドの「アイデンティティ」という曲の一部です。自分が何者かを見つめる過程が生々しいくらいに研ぎ澄まされている感じがします。
人は特に青年期に自分が自分であるための”らしさ”を求めます。
今回はそんな自分らしさに関する概念【アイデンティティ(identity)】を紹介していきたいと思います。
アイデンティティとはなにか
アイデンティティとエリクソンの漸性発達理論
アイデンティティという言葉は元々E.エリクソンという発達心理学者が提唱した「漸性発達理論」(epigenetic theory)という発達理論に含まれる青年期の発達課題の一つで、自分らしさの感覚のことであり、「自己同一性」、「自我同一性」などと訳されています。
ここでは要点をできるだけシンプルに書きます。
筆者が思うに、この概念の最も厄介な点は ”なんとなくしか理解できない” これにつきます。
とにかくピンとこないのです。
恐らくその理由はアイデンティティが”感覚”であるという点です。言葉にしづらいのです。
なのでここでは筆者が聞いた解説のなかで、一番納得できたものを書いていきます。
まずアイデンティティの感覚を単に言い換えるならば、自分の生き方に”自信”、”自覚”、”自尊心”、”責任感”、”使命感”、”生きがい感”、などを感じている状態に近いのです。
しかし、ただこれらの言葉に言い換えるだけではだめです。
その理由は、アイデンティティには個人的側面と社会的側面という2つの側面があり、その両方からなりたっているからです。ただの自信や使命感では個人的側面にすぎません。
社会的側面というのはようは職業、地位、役割、身分などで、社会があってこそ現れる面です。
これが見落としがちでしかも重要な点なんだろうと思います。
したがってこの2つの側面を総合するとアイデンティティの感覚とは、
” 自分で選び取った生き方を、社会(世間)が認めてくれること ”
によって生じる自信、自覚、責任感 etc ということができます。
自分が思っている = 社会が認めている、このイメージが大切です。
例えば、就職して仕事をし始めて5年たち、プロジェクトのリーダーに抜擢され、責任ある立場を任された、としましょう。
ここでは自分がその職業人としてリーダーの能力があることを、他者(この場合は先輩)が認めてくれたことで、自信や責任感が生じます。この感覚がアイデンティティの感覚です。
エリクソンによれば、特に青年期における課題がアイデンティティの確立であるとしています。
つまり最終的な目標は「自分はこういう人間だ」という一定の自信を持つに至ることです。
まぁそれはわかるんですけど、アイデンティティて青年期だけの話ですかね?
私は実際のところいい大人でもこれで悩んでる人は多いんじゃないかと感じています。
なので大人でもアイデンティティについて知ることはとても大切なことだと思っています。
アイデンティティの重要性
何にアイデンティティを見出すかは個人によって様々です。
しかしアイデンティティはその人の行動、考え方、人生を変えることすらあります。そこにアイデンティティの重要性があるのでしょう。
ここではその重要性について、わかりやすい例を少しだけ紹介します。
金よりアイデンティティのパターン
例えば芸術家です。売れないだろうけど、自分が描きたい・描くべきというものを描いていく。そこに少しでも共感して援助してくれる人がいる。といった状況です。
命よりアイデンティティのパターン
これはかなり危険が伴うことに見出すパターンです。例えば登山家、いつ遭難の危機に合うかわからない。でもそこにプライドがあるからエベレストでも登る。
他にはF1レーサー。命がけでアクセルを踏むんです。たとえ死と隣合わせでも、そこに自分の使命感・プライドがあるからです。
後は親としてのアイデンティティというのもあるでしょう。例えば家が火事になり、子供がその中に取り残されているとします。おそらく親は死ぬかもと思っても助けにいくのです。もしその親になぜ飛び込んだ?と聞いたら、「私はあの子の親だから」と言うでしょう。親としてのアイデンティティがそういった行動をとらせることもあるのです。
このようにアイデンティティは行動や考えをも左右するものです。イメージをつかめていただけたでしょうか。詳しくは以下の書籍が非常に役に立ちます。
少しでもアイデンティティの感覚を実感していただけたら幸いです。