今回も文化差シリーズということで、Hofstedeの多文化社会理論による4次元の中でも最も研究されている個人主義―集団主義という次元を取り上げたいと思います。
まず定義としては、以下のようになります。
・個人主義の社会
個人の利害が、集団の利害よりも優先される社会のことを指します。
例えば、今日は家族の誕生日だから早めに帰りまーす、といった感じでしょうか。
・集団主義の社会
集団の利害が個人の利害よりも優先される社会のことを指します。
当たり前ですが個人主義の逆ですね。
では、いったいどうやってそれを測ったのでしょうか。
■個人主義の測定方法
ホフステートは、あなたの理想とする仕事にとって重要な条件は何かを問う14の質問項目を用い、その回答パターンから2つの次元を見出しました。
その一つが個人主義/集団主義次元です。
ちなみにもう一つは男性らしさ/女性らしさ次元で、そのうち記事にしたいと思います。
質問項目の内容
以下の項目を重視する人を個人主義ととらえた。
・個人の時間(自分や家族に使える時間的余裕があること)
・自由(自分の考えで仕事ができること)
・やりがい(達成感の得られる仕事をしていること)
また、以下の項目を重視すると集団主義です。
・訓練(技能向上などの機会が多いこと)
・作業環境が良い
・技能の発揮(自分の技術、能力を集団で発揮できるか)
技能の発揮は個人主義っぽくも見えますが、集団主義に入っているようです。
■日本は本当に集団主義社会なのか
こちらのリンクに順位がのっています。
Individualism (IDV) 個人主義傾向の強さ
1位はやはりアメリカで、91点です。
日本は22位で46点。
どちらかと言えば集団主義ですが、そこまで過度にというわけではなさそうです。
ちなみに53位の最も集団主義的な国はグアテマラで6点です。グアテマラってどこ(笑)
また、権力格差と集団主義は相関していることが分かっており、集団主義の国のほうが権力格差が大きいようです。
■個人主義と集団主義の起源(どこで違いがでたのか)
あくまで仮説ですが、以下の事柄などが起源として考えられています。
・国の富が個人主義化を進める
実際に、国の豊かさと個人主義は相関するようです。ただし、東アジア諸国は集団主義的な傾向を維持しています。
わからないではないですが、日本は豊かだけど集団主義的な感じがしますねぇ。
・気候の温暖な国々、または寒冷な国々は個人主義的な文化を持つ傾向にある
これは人間の生存が個人の自発性に左右されるためでしょうか。
・人口規模は関連しない
意外にも人口の規模と個人・集団主義は関連しないようです。
・歴史的要因
権力格差ほどはっきり説明されないが、孔子の教えが集団主義的な価値システムを支えているという考えもあるようです。
■個人レベルの個人主義―集団主義
この個人/集団主義次元は個人レベルでの研究もされ、国や文化に見られる違いを個人の持つ文化的価値観の影響として分析するようになっていきました。
つまりこの考え方では、日本人にも個人主義と集団主義の両方いるが、平均すると日本人のほうがアメリカ人よりも集団主義的であるという捉え方です。
しかし、近年は日本人は集団主義的価値観をもっているというナイーブな考えは疑われてきています。
ステレオタイプ的なイメージでは日本はお国のためにという文化で集団主義的というとらえ方がされますが、スコアではそこまで顕著な結果が出なかったというのは意外ですね。
読んでいただきありがとうございました!