比較文化心理学における文化差の次元については4つあるということを以前書きました。
おさらい
Hofstedeの多文化社会理論による4次元
①権力格差の大小
②個人主義―集団主義
③男性らしさ―女性らしさ
④不確実性の回避の強弱(リスク志向度)
今回はその権力格差について、書いていこうと思います。
■権力格差(power distance)
権力格差とは、それぞれの国の制度や組織において、権力の弱い成員が、権力が不平等に分布している状況を受け入れている程度のことです。
大きいとピラミッド型になり、小さいと組織は分権化され、フラットになると言われています。
■権力格差の指標を構成する調査項目
ホフステートは以下の3つの項目で、調査しました。
1.社員が管理職に反対を表明することをしりごみする
1.非常によく起こる~5.全く起こらない
2.上司が実際に行っている意思決定のスタイルについての部下の考え方
①独裁的、②温情主義的、③相談的、④多数決、⑤どれでもない
①と②を選んだ社員のパーセンテージを算出
3.部下が好ましいと思っている上司の意思決定スタイル
相談的なスタイル以外のものを選好した社員のパーセンテージを算出
■日本は権力格差社会なのか
以下に権力格差指標の詳細があります。解説もあるので是非読んでみてください。
日本のスコアは54点で、中間くらいのスコアとなっています。ちなみに1位はマレーシアで、欧米は比較的小さいようです。
■権力格差の違いと起源
1.ロマンス語系(スペイン語、ポルトガル語、イタリア語、フランス語)
これらの国は中~高スコアで、ローマ帝国に属していた国と、ローマ帝国の植民地であったスペイン、ポルトガルによって植民地化されたラテン・アメリカの国々です。
2.ゲルマン語系(ドイツ語、英語、オランダ語、デンマーク語、ノルウェー語、スウェーデン語)
これらの国々は低スコアです。意外でしょうか。
3.中国文化の遺産を持つ国
これらの国々は中~高スコアです。
■スコアを説明する各国の量的データと仮説
・緯度が高いほど、権力格差のスコアは低いのではないか
緯度が低いと自然の脅威が少ないため、同じ領土、資源を求めて他の人間集団と敵対することが社会に対する脅威となり、中枢権力に依存するためであるとする仮説。
また、緯度が高いと、自然の力が脅威のため、権力者に依存せず、自ら生活の道を切り開くから格差が低いとも考えられる。
・人口規模が大きいほど、スコアは高いのではないか
これは、人口規模が大きいと、政治権力は疎遠で近づきにくい存在であるため、格差が大きくなるのではという仮説です。
■まとめ
指標によれば日本の権力格差はどちらかと言えば大きいということになります。
年功序列というものがありつつも最近は成果主義を取り入れていると言ったこともこのスコアを反映した形になっているようにも見えます。
読んでいただきありがとうございました!