皆さんは文化によって人の心の有りようは変わると思いますか?
ぱっと思いつくだけでも、アメリカ人は自己主張が強くで個人主義的で、逆に日本人は控えめであることを良しとし、集団主義的であるといった特徴を思い浮かべることができます。
心理学においても、このように文化によって人の心理に差が出るのかということを研究する分野があり、それが文化心理学と比較文化心理学です。今回の記事ではこの2つの違いについてお伝えしていきます。
学部時代、地味にこの授業大好きでした。
定義の前に(文化と心理の基本的な前提)
これまでの心理学の研究では、人間の基本的な心理的プロセスを研究してきたはずでした。そのため、そこで得られた知見や理論は当然普遍的だと考えられてきたわけです。
しかしながら、心理学の対象は人間であり、個人差があります。理論や知見は、繰り返し同じ現象が確かめられて初めてその現象が一般的な人々の傾向と認められますが、欧米以外で実験や調査の追試が行われるようになると、同じ結果が出ないという証拠が続々と出てきました。
それによって多様な文化の中で、心理プロセスは普遍的ではないかもしれないという問題提起が生じ、それが比較文化心理学の原点となっているわけです。
ちなみに文化差のベクトルは、ほとんどが「東洋と西洋」の違い、あとは「農耕民と牧畜民」の違いみたいです。アラブ圏は特にわかっておらず、それはその地域出身の心理学者が少ないためだと言われています。
1分でわかる文化心理学と比較文化心理学の違い
文化差と心理について研究している分野には文化心理学と比較文化心理学があります。
2つの違いを一言でいうと、元になっている前提です。文化心理学は心理的プロセスそのものが文化によって異なるという“文化相対主義的”な立場をとっている心理学です。心と文化は切り離せないという立場となります。
一方、比較文化心理学は、心理的プロセスの根本は同じだけど,あらわれ方が違うという“心性単一性の前提”に基づいている心理学です。
前者は文化によって元から心的傾向に差があるといっているもので、後者は心的傾向は同じだけど、その表れ方の違いに注目する心理学の領域ということができます。
多様な心理的な文化差へのアプローチ方法
今後も解説していきたいと思いますが、文化差へのアプローチには様々な方法があり、例えば以下のようなものがあります。
①生態学的な環境
②行動に影響する規範やルール
③価値観
④遺伝子
など
比較文化研究の意義
心理学の研究は欧米が進んでいるため、欧米人の心理学=普遍的な心理学と見なされていました。
そのため、心の文化差を見つけることはその前提を覆し、異文化理解、自文化理解への前提となるのです。
様々な文化の中でも、日本は東洋の島国という言ってみれば変な国になるので、欧米と異なる文化にいるのは明白で、比べがいがあることから、果たす役割は大きいと思われます。
もちろんステレオタイプ的な決めつけになってしまいやすいという問題点は頭に置いておく必要があり、科学的な論文に基づいて議論することが重要です。
イタリア人はプレイボーイといった先入観には注意が必要ですね。
参考となる書籍
■まとめ
文化心理学
心理的プロセスそのものが文化によって異なるという“文化相対主義的”な立場をとっている心理学。
比較文化心理学
心理的プロセスの根本は同じだけど,あらわれ方が違うという“心性単一性の前提”に基づいている心理学。