ブログをご覧いただきありがとうございます!
臨床心理士で不登校支援しております、モトセです。
今回は私の考えた「不登校の親支援プログラム」の第6回目です。
本プログラムはこれで最終回になります!
「不登校の親支援プログラムってなに?」という方は以下の記事を先に読んでいただけると、今回の内容がより理解しやすくなります。
これまでのおさらい
前回までのプログラムで、お子さんの行動を3つに分けて対応すること、そしてお子さんの行動範囲を広げる「行動活性化」をやってきました。
最終回の今回は、不登校で問題になる「スマホ」や「ゲーム」といった「電子機器の制限」について考えていきます。
本記事の内容
- スマホやゲームなどの電子機器は制限する? しない?
- 電子機器の何をどの程度制限するか
- 制限する際に重要なこと:いつもと違う真面目な話し合いの雰囲気
- 学校について話す:登校刺激(オプション)
※内容は随時加筆修正してるため変わる可能性があります。
スマホやゲームなどの電子機器は制限する? しない?
私の考えとしては、スマホやゲームなどの電子機器のルール(制限)は親が決めて、子どもに守らせる方がよい、です。

という親御さんも多いかもしれませんが、このプログラムを第1回目からこなし、親子のコミュニケーションパターンが改善されていれば、電子機器の制限をかけるベースとなる関係はできていると思います。
ではなぜ制限した方がいいかです。
電子機を制限する理由
不登校に関係なく、一般的な家庭でも電子機器のルールを設けることは、子どもの脳の成長にとって大切だからです。
やはり電子機器は中毒性が高く、生活リズムが不安定になるなど、さまざまな悪影響があります。大人でも寝る前にyoutubeを観すぎて寝不足、なんてこともありますよね?(私だけ?…)。
お子さんは不登校の前に「若い人」です。発達上の影響は無視できないので、普通のお子さんとして扱う、という感じです。

と言う意見もあるかもしれません(そんなにこのブログをくまなく読んでいる人はいないでしょうけれども)。
私は別の記事で不登校支援は「長期的視点型」と「再登校重視型」に分かれるという意見を書いています。
その「長期的視点型」支援の特徴として、以下の点を挙げました。
- 不登校であることを認め、家にいてよいと伝える。
- 学校にいるべき時間であっても、スマホやゲームなどを制限しない。
- 生活リズムの改善など、普通の子と同じようにしなさい、というたぐいの指示はしない。
- 肯定的な言葉をたくさんかけて、子どもの心のエネルギーをためる。
- 生活の中でできる行動を増やす。
- 登校しやすいような環境調整はするが、基本的には本人が自発的に動き出すのを待つ。
この「長期的視点型」の支援方法は児童精神科医の成重先生の本「不登校に陥る子どもたち」の内容をもとに、私の経験を加味して書いています。
本プログラムは基本的には「長期的視点型」の支援なのですが、スマホやゲームに関しては、少し制限する方法をとっています(理由は上記のとおり)。
電子機器の何をどの程度制限するか
私が制限を推奨する電子機器は「スマホ」と「ゲーム」です。
「テレビ」や「ラジオ」は制限しません(というか、制限が難しいです。部屋にテレビがあると、寝るときはリビングに置いておく、などもできませんし)。
「スマホ」「ゲーム」については制限するのですが、どの程度の使用時間にするかは一般的な目安を参考にするとよいかと思います。
以下のようなサイトがあるので、ルール作りの参考にしてみるといいかと思います。
>>中学生のスマホルール【各ご家庭での実例をご紹介します】(外部サイト)
小学生か中学生かでもルールの内容は変わりますよね。親御さんの価値観も入るので「これ」という決まりはないですが。
別の参考例ですが、再登校支援を行っている上野先生は著書で以下のような目安を書いておられます。
●小学校1,2年:概ね1,2時間
理由:小学校1,2年では自己判断がまだ完全にできず、ある程度親が管理する必要があるから。
●小学校3,4年:リミット時刻を決める(20時まで、宿題ができていない場合は19時まで 等)
理由:自己判断ができるようになり、なぜ自分の時間を好きに使えないのかと疑問をもつようになるから
ペナルティ:守れなかったときは一日やってはいけない日を作る など
●小学校5,6年:リミット時刻のみを決める
理由:自己判断ができる年齢になるため
ペナルティ:条件を付けない分、宿題ができていなく登校をしぶったらペナルティ(登校している場合)。
中学生以上:制限しない
理由:もう親がとやかく言う必要なない年齢だから。
ペナルティ:夜遅くまでスマホを使用して遅刻する場合は「したくはないけど、遅刻が続くなら23時までとか管理しないといけなくなる」と警告し、それでも遅刻が続くならペナルティをかける。引用元:『今、子どもの不登校でなやんでいるあなたへ』
上野先生の場合は一般的な感覚より中学生のルールがゆるいように見えますが、大人扱いをしているとも捉えることができるかもです。
私は中学生までは夜何時までと制限を設けた方がいいと思います。
何時までというか、寝る部屋に持ち込ませない、という感じですかね。
制限する際に重要なこと:いつもと違う真面目な話し合いの雰囲気
できれば渡すときにルールを決めたいが…
理想を言えば、スマホを与えるタイミングで「スマホは親が子どもに貸しているもの」であることを伝え、スマホ利用とペナルティのルールを話し合って決めるが重要です。
しかし、「すでに子どもに渡してしまっていて野放しです」という家庭も多いかと思うので、この章ではそういうケースについてどうすればよいかお伝えしていきます。
家族で電子機器のルールを決めるときに何よりも大切なのは、「ルールを決めるときのセッティング(状況)」です。
具体的には、ご両親とお子さんの全員で「家族会議」のような場を作ります。そして、まじめな面持ちで話し合いをすることが重要です。
理由は、いつもお子さんと接している母親が会話の流れで「ちょっとスマホやりすぎだから、明日からスマホとゲームは2時間までにするわー」とさらっと伝えても効果が薄いからです。
「やぶったらペナルティです、それが家族のルールです」ということを毅然と、堂々と伝えることで、「守らないといけない」とお子さんに思わせることが大切です。
家族会議は本家のペアトレでも使う手法なので、おすすめですよ。

と思った親御さんも多いと思います。
これに関しては、かなり難しい問題です。
ここからは個人的な意見になるので、皆さんもご自身で考えて家庭のルールを決めていただけたらと思います。
私としては、「スマホ」や「ゲーム」は日中使ってもよいと思っています。ただし、1日3時間など、時間制限はつけます。
理由は、カウンセリングでお子さんと話していると、平日の昼間でもLineのオープンチャットやらdiscordやらでネットのお友だちと関りをもてる方がいると知ったからです。
私はどういうかたちであれ、子ども時代から人間関係を持てた人は、大人になってもその子なりの人間関係をもてる、という価値観なので、日中スマホを使ってそういうことができるのであれば、別にいいと思っています。

と思った方もいるかもしれません。
その理由は、スマホは時間制限がないと永遠とやってしまいそうだからです。
youtubeやtiktokは関連動画でいくらでも動画を見せてきますが、それは非常に受動的(受け身)な感じみえて、「自分がyoutubeを見てる」というよりは、「自分がyoutubeに動画を見せられている」ような感じがするのです。
私が思うに、世の中には面白いものがたくさんあります。
個人的に、「漫画」、「小説」、「アニメ」、「TVドラマ」、「スポーツ(観戦でも実際にやるでもいい)」は子どもの頃から好きですし、何なら子どもと好きなアニメや漫画の話しをしたいです。だから色んなものに触れて欲しいし、そのためにはスマホ「だけ」やっているのは好ましくないと思ってしまうのです。
だから永遠にyoutubeやtiktokを受動的に観るのは個人的に好ましいとは思えない、という感じです。私の価値観なので、あくまでも目安としてお考え下さい。
制限しない場合もある
補足としては、家で好きなことをしてエネルギーためることが最優先されるようなケース(抑うつが強い場合、いじめが原因でやむなくいえにいる場合など)では制限しない方がよい場合もあります。
お子さんの状態に合わせてきめていく必要はあります。
以上がスマホのルール決めで重要なことと、ルールの例でした。
最近ではスマホのアプリで使用時間を制限できるものもあるようなので、そういったツールを試すこともいいかもしれません(私は詳しくないので例がなくてすいません)。
では最後に、もし本人が「登校をにおわせてきたら」どうしたらよいか、参考までに書いて終わりにしたいと思います。
学校について話す:登校刺激(オプション)
これは絶対に必要というわけではないのですが、上記のプログラムを実施していくと、お子さんの内面も育ち、このままでいいのだろうか、という気持ちが芽生えることがあります。
お子さんからそういったサイン(「自分は学校行った方がいいのかな?」と言った発言など)が出てきたら、親子で学校について話す機会をつくると良いでしょう。
子どもからのサインがなくとも、中学校2年から3年にあがるときや、志望校を決めるときなど話し合わざるを得ないときもありますよね。
その際に重要なのはスマホのルール決めと同様にセッティングです。
父親も含めて、改まったセッティングで話し合った方がよいでしょう。
何にチャレンジするか(教室? 別室? 適応指導教室?)
子どもが何にチャレンジするかはお子さんの精神状態や社会性の程度、不登校の期間によっても変わってくると思います。
不登校の期間が数か月から1年程度であれば、元のクラスに戻ることも選択肢かもしれません。
数年といった長期にわたる不登校の場合や不安緊張が強いお子さんの場合は、「学校の別室」や「放課後登校」、「適応指導教室」、「フリースクール」など、クラス以外の選択肢の方が子どもに合っている場合もあると思います。

と思う方もいるかもしれませんが、私のスクールカウンセラーとしての経験上、不登校のお子さんが別室に再登校をはじめて、他の生徒と和気あいあいとやっている光景は全然見たことあります。
復学支援サービスの中には、どんなケースであれ元のクラスに戻った方がよいという考え方もあるようですが、私は、そこは柔軟に考えたらいいと思っています。
別室や適応指導教室に促すときのポイント
ここでのポイントは2つです。
ポイント1:無理させないこと
本人が無理しない程度でやれるなら誘う、くらいのイメージで良いと思います。
理由は、ここで心のエネルギーを使い果たしてしまうと、今度は進学といった次のステージに行くときのエネルギーが残っていない状態になるからです。
ポイント2:子どもは別室や適応指導教室等を「ダサい」と思っていることがある
子どもは「学校の別室」や「適応指導教室」に行くことを「ダサい」と思っていることが多いということです。
また、緊張が強いお子さんの場合、「次の場所でも失敗したらどうしよう」と思っているお子さんもいます。
お子さんを別室等の社会的な居場所に誘うコツ
コツは、親から子どもに「別室行ってみない?」と提案するより前に、親だけで別室の先生や適応指導教室の先生と話しをしておくことです。
そこで、先生の趣味や特技、困っていることなど「学校や勉強とは関係のないくだらなーーーーーーい情報」を入手しておくのです。
そのうえで子どもに、「先生は~~が趣味らしいよ」、「~~のゲームをやってるみたいだけど、下手で困ってるんだって」と子どもに明るく話すのです。
そうすることで、子どもの頭にある「学校や適応指導教室=授業を受けて勉強するところ」というイメージを変え、「趣味の話しをしに行く」や「先生を助けに行く」という意味を作っていくのです。
もちろんそれはきっかけであって、それで学校や適応指導教室に行くことができれば、子どもの慣れを育てることができます。行くことができれば自信にもなります。
少しずつであっても、社会との接点をつくることは、可能性を広げます。
もちろん無理に行かせてトラウマになることは避けたいので、お子さんの精神状態を見て提案することが前提ですし、先生方と連携をとっておくことも非常に大切です。
それでも学校を拒否するときはカウンセリングも1つの手段
もしそれでも子どもが拒否するようであれば、カウンセリングを受けることも手です。
つまり、社会的な場ではないけど、まずは「知らない大人と1対1で話す経験をつくる」ところから始める、ということです。
私は医療機関で不登校のお子さんのカウンセリングをしていて、お子さんが成長する姿をたくさん見てきました。こちらは意図していなくても、子どもには成長する力があります。
どうしても家にいると生活パターンが固定化してしまい、成長のきっかけにとぼしくなりますので、カウンセリングも選択肢の一つですよ。
医療機関や教育支援センターなどで受けることができます。
今回の内容は以上になります。
そして、これでプログラムの内容は以上になります。
読んでいただきありがとうございました。
今後はこのプログラムの内容を聞けるようにyoutubeに動画を作ってあげていく予定です。
「家事をやりながら」とか、「通勤などの移動中」に聞いていただけるとうれしいです。
いつになるかはわかりませんが、更新情報はtwitterでお知らせしますので、ぜひフォローしてみてください。