前回の記事では新型コロナ関連ストレス(コロナストレス)の全体像と、対処すべき問題(しんどさ)を書きました。
今回はそれを踏まえ、コロナストレスに対する具体的なセルフケアの方法について書きます。
まずは対処を考える前に、いくつか著名なサイトに記載されているストレスケアの方法をレビューし、まとめようと思います。
心理士が考える新型コロナ関連ストレスケア
コロナストレスへのケア方法をレビュー
様々な記事やサイトがあると思うので、信頼性の高そうな以下のページを見てみました。
他にも数多くあると思いますが、記載内容が類似しており多くのサイトをみるメリットがないと判断しました。
- 日本心理学会(アメリカAPAの記事を翻訳している)
- 東京大学
- 産業カウンセラー協会
日本心理学会(アメリカ心理学会(American Psychological Association: APA)公式Webサイトに掲載された記事 "Keeping Your Distance to Stay Safe"の翻訳)
https://psych.or.jp/special/covid19/Keeping_Your_Distance_to_Stay_Safe_jp/
東京大学 学生相談所
http://dcs.adm.u-tokyo.ac.jp/scc/scc-info/1203/
※学生相談所が学生向けに書いている記事です。
産業カウンセラー協会
https://www.counselor.or.jp/covid19/tabid/505/Default.aspx
※なお、心理臨床学会のページは子どものケアに関する内容が多かったので、余裕があれば別の記事で書いていこうと思います。
コロナストレスへの具体的なケア方法をまとめてみた(レビュー結果)
これらサイトの内容や他のいくつかのニュース記事をレビューした結果、コロナストレスのケアについて書かれていることは、大まかに以下の6つにまとめられると思います。
生活習慣を見直す
これは睡眠、食事、運動、飲酒、喫煙等に関するケアです。
具体的には十分な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動、飲酒・喫煙の制限等によって、健康的な生活習慣を保ちましょう、それをもって健康なメンタルを維持しましょうということです。
メディアからの情報の取り入れ方に注意
ニュースやSNSなどからコロナ関連の情報に過剰に触れることで高まるストレスに関するケアです。
具体的には過度に多くの情報に接することは控える、信頼できる発信元からの情報(厚生省HP、ニュース、新聞等)に絞って収集する。ネットニュースのコメントやSNSの投稿は陰性感情の表出が強かったりデマであったりするため、見ることを控える。
日常のルーティンを維持する
非常事態だからこそ、生活のなかで行っているルーティンを維持し、心的な安定を保ちましょうというケア。
自粛であっても起床・睡眠時間を平常通り保ち、生活リズムを維持する。掃除・洗濯・炊事等の家事や子どもの勉強、できる範囲の趣味等の維持。
好きなことや趣味で息抜きをする
コロナ関連のストレスや情報から距離をとり、好きなことで息抜きをしましょう。
音楽を聞く、好きな動画を見る、好きな飲み物や食べ物をゆっくり味わう、本を読むなど、人それぞれです。
他者とのつながりを保つ
対面出会えなくとも、電話、メール、LineやスカイプなどのSNSでバーチャルに他者とのつながりを保ち、孤独にならないようにしましょう。
人と繋がり気持ちを共有したり吐き出したり、受け止め合ったりすることは日々の緊張をやわらげ、安心感をもたらす。
心理的な対処・コーピングを行う
考え方を変えたり、自分の状態を受容したりするなど、心理的な対処によるケア。
例えば、自粛だからこそ家でできることをやろうと「ポジティブな考え方」をする。認知療法のモデル自動思考などを利用して「思考のくせ」を自覚し、変える、専門的なリラクセーション(漸進的筋弛緩法、自律訓練法、マインドフルネス)を行う、感情のセルフモニタリングをして日記に記録を付けるなど。
参考:APAのサイトにはこう書かれています。
・自分が何を心配しているのかをよく考えましょう。そして,自分の不安と,自分が出来ることについて,現実的になりましょう。
・過剰に騒ぎ立てず,自分には何ができるかを考え,自分では変えられないことを受け入れましょう。
個人的な見解
これらがセルフケアに大切なのは理解できます。
しかし、個人的な意見を言えば、こんな当たり前のこと言われてもあまり響かないし、何ならコロナ危機と関係なく、一般的なメンタルヘルス教育で言われることと同じではないか、という印象があります。
当たり前のことが難しいからこそ、当たり前のことを再認識し、意識的に行うことが重要だということでもありますが、もう少し異なる視点からのケアもあると思い、心理療法、なかでもブリーフセラピーのモデルを参考にしたセルフケアの方法を以下に書きます。
新型コロナストレスを乗り切る4つのステップ
ここではブリーフセラピーという心理療法のモデルを参考に「変化を求める必要があるのか?」、「変わらなくてもいいのではないか」、という発想をもち、次のような4ステップのセルフケア方法を考えました。
STEP1 おかしくならない方がおかしいと捉える
コロナ危機のような非常事態下にあっては、様々な心身の反応や変化が生じるのは当たり前で自然な反応。なんならおかしくならない方がおかしいと捉える。言い方があってるか心配ですが、良い意味で開き直る、ということ。
STEP2 苦しいながらも数ヵ月やってこれた事実に着目する
こう考えてみて欲しいのです。コロナ危機の状況は今となっては既に数ヵ月続いている。皆苦しみながらも、これまで何とかやってこれたのである。
STEP3 例外探しと観察課題
何とかやってきた数ヵ月の中で、気持ちの安定や、日常生活の維持に少しでも役にたったこと(自分が行った行動、言動、考え方、誰かの言葉などなど)を振り返り、それをメモしましょう(例外探し)。
あなたは今現在も苦しいながらも、何とか生活できているのであれば、自分自身の普段の生活を自己観察し、その状況を維持するのに役立っていると思われる行動を記録しましょう(観察課題)。
見つけられたこと(生活の維持や少しでもマシになるために役に立った事柄)はあなたのリソース(資源)であり、オリジナルなケアの方法です。
例えば家では健康サンダルを履いて健康維持している、抱き枕を抱いて寝ると落ち着くなど、人から見たら何それ?と思うことでも、自分がそれでちょっとでも心が落ち着いたり、ケアできていると思えることなら、ささいな事でもオリジナルなケアとして捉えましょう。
STEP4 リソースを活用し続ける
見つけることができたオリジナルなケア方法を自覚的に続けましょう(Do more)。
どんどんやりましょう。自分の専門家は自分自身です。
確かに一般的に大切だと言われているストレスケアの方法は上記のようにありますが、それにこだわらず、自分にとって役に立っていることを見つけ、活かし続けましょう。
【番外編】例外を探せない、あるいはもう少し心に余裕を持ちたい場合
自分がこれまで行っていた役立つ対処が見つけられず、ストレスフルである場合は何らかの変化を導入する必要があるかもしれません。
その一つの指針としては以前の記事に書いた「過覚醒への対処」が有効である可能性があります。具体的にはリラクセーション(心身の緊張を緩められればお風呂でも音楽でもストレッチでも何でも可)を導入し、副交感神経を優位にする時間を意識的に増やすことです。イメージとしては、常に張りつめてパンパンの風船は割れやすい(心が折れやすい)ため、空気を抜いて、緩めてあげる(リラックス)ような感じです。
また、レビューした有効だと言われているストレス対処を振り返り、自分ができることを導入していく必要があるかもしれません。
家族などの対人関係においてストレスが維持している場合は、コミュニケーションの悪循環パターンを自覚し、対処することが有効かもしれません。(個人対処の限界)
それでも不安や緊張が持続し、心理的な症状が持続する(特に不眠は要注意)場合、専門家への相談や医療機関の受診を検討してください。
ひとまず対処として思うことは以上です。
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