臨床心理学

臨床心理士の職業倫理と倫理規定|命令倫理・理想追及倫理・守秘義務・多重関係・インフォームドコンセント

 

この記事では臨床心理士の代表的な倫理規定である「守秘義務」、「多重関係」、「インフォームド・コンセント」に関して、大学の定期試験対策、大学院入試の勉強用の記事として作成したものです。

臨床心理士の職業倫理

臨床家の専門性の水準を一定に保つために専門家として行うべき、あるいは行うべきでない行動の規範を職業倫理という(あるいは、成員の好意の善悪を判断する基準として、職場集団内で承認された規範)。

職業倫理は大きく、①命令倫理②理想追及倫理の2つがある。

命令倫理とは、専門家としての行動レベルの最低基準を定めたものである(一般的感覚としての倫理で「XXしなければならない」、「XXしてはいけない」ということ)。

理想追及倫理は、命令倫理の最低ラインを押さえたうえで、専門家としての最高の基準を目指すレベルを定めたものである。

①命令倫理②理想追及倫理を踏まえると、臨床家は最低限の決められたことに従って行動すればいいわけではなく、人々の幸福と福祉に貢献するために、常に専門家として最高の基準を目指し、自分を高める姿勢が求められるということになる。

以下に絶対に知っておくべき臨床心理士の倫理規定を3つ紹介します。

絶対に知っておくべき倫理規定1 守秘義務

基本的には、面接で知り得た情報を本人の同意なしで他者に開示してはならないというルールである。

しかし、これは限定付き秘密保持であることに注意する必要があり、以下のパターンの場合、秘密保持は適応されない。

守秘義務の例外1:クライアントが自殺を仄めかしたり、他者を傷つけたり殺害しようとする意図を感じた場合

この場合秘密保持の原則は適応されず、相手や関係者、家族、警察に対し、クライアントの状態を伝え、注意をするよう警告する必要がある。とはいえ、これは最終手段で、通常はクライアントを説得したり、医療機関へリファーすることを先に検討する。

※判断の根拠を記録しておくことも、後々の問題が起きた時に備えるために重要である。

守秘義務の例外2:法による定めがある場合

例えば児童虐待の防止等に関する法律には、虐待が疑われる場合に通告義務があるため、この場合、守秘義務より通告義務が優先される。

守秘義務の例外3:スクールカウンセラーはチーム守秘義務が適用される

学校にいるカウンセラーは教員や校長らと情報を共有し、チームでの守秘義務が求められる。ただしこの場合、生徒児童にインフォームドコンセントを得ることが求められる。

想定問題:臨床心理士には倫理規定において守秘義務があるが、それが適用されないケースがある。そのケースを3点あげ、その際に留意すべき点を述べよ。

絶対に知っておくべき倫理規定2 多重関係の禁止

多重関係とは

セラピストとクライエントとの関係以外にも、別の関係を併せ持つ事を二重関係または多重関係という。例えば友達関係、血縁関係、恋人関係、職場関係などである。多重関係を築くことはセラピーの中立性や、何でも話すことができるという信頼関係を侵害する恐れがあるため、職業倫理の観点からは避けるべきである。

つまり、クライアントとカウンセラーは、被援助者-専門家という専門的契約以外の関係をもってはいけないという原則である。

多重関係が禁止される理由

ケースを客観的に見ることを難しくさせるため(セラピスト側の要因)。

専門家の存在を必要以上に意識させ、プライベートな関係性の悪化を避けるために、自己開示の抑制などが生じることで、カウンセリングの場を自身のために有意義に使うことを妨害する恐れがあるため(クライアント側の要因)。

プライベートの関係では知りえなかった必要以上のことを知ってしまうので、関係に支障が出る可能性がある。

やむを得ず多重関係を認めるケース

人口が少ない町などで、カウンセラーの数が限られ、社会的な関係をもつ人が被援助者になってしまう場合などがある。

やむを得ない場合、インフォームドコンセントとクライアントの自己決定権が強調される。つまり、多重関係を築くことによるデメリットを伝え、クライアント自身が選び、同意を得ることが最低限必要である。

絶対に知っておくべき倫理規定3 インフォームド・コンセント

インフォームド・コンセントって何?

クライアントへの援助方針をわかりやすく伝え、同意を得たうえで契約を結ぶが、その時の説明と同意をインフォームドコンセントという。クライアントの自己決定を尊重し、業務の透明性を確保するために行われる。説明の内容としては、治療枠、治療仮説、治療方針といわれるものになる。

つまり目的、技法、リスク、時間場所、人、料金といった機関のシステムや、セラピストの資格、経験と言ったものも伝えることがある。

これを得ることで治療同盟を築き、援助活動にあたっていくことになる。

インフォームドコンセントは単なる約束ではなく、契約と見なされる。

万が1の裁判などのために、説明を行ったこと、その記録は重要である。

自己決定

医療分野においての定義は、患者が診療を受けるにあたり、自分の状態や考えられる治療法について説明を求め、比較検討のうえで方法を自主的に判断する権利のことを言う。

インフォームド・コンセントを行う際の留意点

クライアントがカウンセリングについての説明を求めることは、ためらわれる行動である場合がある。

これは多重関係の時と同様で、力の不平等によるものである。つまり、説明を求めることがカウンセラーを疑っていることと見なされ、カウンセラーの反感を買い、適切な治療がなされないのではないかとクライアントが不安になる可能性がある。

そのため、カウンセラーは自ら治療枠を説明し、クライアントの意思を確認する手続きを十分にとる必要がある。

クライアントの年齢が低い、知的障害、重い精神疾患などの場合は、本人にできるだけ十分な説明を行ったうえで、保護者や後見人の同意を得る必要がある。

倫理規定は他にもありますが、試験に出るのはこの3つが多く、非常に重要なことです。

  • この記事を書いた人

モトセ

臨床心理士です。最近は不登校支援に力を入れています。2022年4月にブログをリニューアルしました。お気に入りやtwitterフォローお待ちしています。

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